52.サハギン討伐大作戦④
僕とペペンの目の前には4つ腕のサハギンがいた。
ザンの情報だと、これがサハギンジェネラルだろう。
「ペペン。行ける?」
「うん。大丈夫」
ペペンは小さく唱える。
「土の精霊さん。お願い!」
ペペンは銃口を向け、引き金を引いた。
パシュ!
弾丸はサハギンジェネラルに向かい、急に地面に向かって方向転換した。
すると土が盛り上がっていき、サハギンジェネラルを包んで土の球になった。
「動けない間に倒さないと」
僕はハンドガン型のグレネードランチャーを構え、土の球を撃った。
ボシュッ!
大きな弾丸は弧を描きながら土の球に向かって行く。
弾丸が土の球に当たる瞬間、穴が開いて土の球の中に入った。
「ペペン!成功だ」
「うん!上手くいったわ」
昨日の夜、上位種対策を2人で考えてた成果が出た。
ボン!ドドドド!
土の球の中で爆発音が鳴り響いた。
「これで倒せなかったら、正直厳しいかも」
「うん。念のため、精霊に手伝ってもらう準備するね」
「お願い」
僕とペペンが動き出そうとした瞬間。
ドン!ドン!ドン!ドン!
音が鳴り響き、土の球が揺れ始めた。
ドン!ドン!ドン!ドゴン!
土の球が破壊され、中からサハギンジェネラルが出てきた。
無傷ではなさそうだが、削れていても1割程度だろう。
ギャギャーオ!
ギャー!ギャー!ギャー!
サハギンジェネラルが叫ぶと、周りのサハギン達の士気上がった。
「これはまずそうだ」
僕はグレネードランチャーを構え、撃ちこむ。
撃ちこんだ瞬間、サハギンジェネラルが僕に向かって飛び出してきた。
一瞬で目の前に現れたサハギンジェネラルは僕の腹を殴った。
「ぐっ!」
僕はものすごい勢いで吹き飛んだ。
この勢いで何かにぶつかったら、この後動けなくなる。
まずい。
ポフッ!
「え?」
僕は何か柔らかいものにぶつかった。
▽ ▽ ▽
オイラ達の目の前にいるのはサハギンナイト。
こいつの皮は水中で使う装備品を作るのに向いてるって昔聞いたことがある。
「ダルン。オイラがサハギンナイトをやる!サハギン達を頼む」
「おう!」
オイラは絶斬を握り、サハギンナイトに向かった。
ギャラララ!
サハギンナイトは二又の槍を振り回しながら、オイラに向かってくる。
サハギンナイトの攻撃を絶斬で弾く。
「くっ!重っ」
サハギンナイトの攻撃は想像以上に重く、刀を離しそうになった。
「デルン!眠気は?」
「今のところ大丈夫。こいつじゃないかも」
オイラは二又の槍を弾いて、サハギンナイトの身体を斬りつける。
「浅すぎる。くそっ!」
皮が厚いのか、刃がなかなか通らない。
ギャラララ!
サハギンナイトは槍を構え、オイラに向かってくる。
「くっ!」
絶斬で防ぐが、勢いを殺せずそのまま吹き飛ばされた。
サハギンナイトは手をかざした。
ギャー!
水の刃がオイラに向かってくる。
「ぐっ」
絶斬は弾かれ、サハギンナイトに首を掴まれた。
オイラはハンドガンをサハギンナイトの身体に当て、引き金を引いた。
バシュン!バシュン!バシュン!
ギャアアア!
少しはダメージが入ったのか、サハギンナイトはオイラを掴んだ手を離した。
「絶斬!」
弾かれた絶斬を手元に召喚し、サハギンナイトを斬りつけた。
ギャアアア!
サハギンナイトは怒り狂い始めた。
槍を振り回し、攻撃をしてくる。
それを弾き、脚を斬りつける。
サハギンナイトの勢いは止まらない。
オイラを蹴り飛ばし、叫んだ。
ギャラララアアアア!
「え?」
サハギンナイトはオイラを見ていない。
サハギン達と戦っているダルンを見ていた。
サハギンナイトは槍を振りかぶった。
「ダルン!」
槍はダルン目掛けて飛んで行った。
カキン
槍はダルンに当たる直前に鞭のようなものに弾かれて地面に落ちた。
▽ ▽ ▽
「コマチ様!アデスちゃん!このサハギンウィザードです……」
プロールはふらつきながら言った。
『状態異常耐性』があるプロールがきつそうにしている。
このサハギンウィザードがみんなの言っていた眠らせるやつだ。
「アデス!プロールを安全な場所に!」
「うん!」
アデスは飛んで、プロールを掴んで運んだ。
サハギンウィザードは額に宝石なようなものを付け、杖のようなものを持っていた。
周りにはサハギンメイジが数匹いた。
私はサハギンウィザードにしゅわしゅわラムネで撃ち続けた。
だけど水の壁で、私の攻撃は届いていない。
「哲ちゃんの増援を待つしかないかも」
私の周りにはサハギンが集まってきた。
攻撃をしているようだが、『過保護な防壁』のおかげで全然平気だ。
私に攻撃が向いている間は、時間を稼げる。
サハギンウィザードが近づいてきた。
「うっ……」
眠気が襲ってきた。
『過保護な防壁』は寝ても発動するはず。
だって哲ちゃんが守ってくれてるんだもん。
眠気に襲われながらもしゅわしゅわラムネで攻撃し続ける。
サハギンとサハギンメイジは倒せるが、サハギンウィザードは水の壁で防がれる。
あっ。ダメだ。
眠気のピークに達した瞬間、目の前に大きな何かが現れた。
その姿は大きなパンダのぬいぐるみ。
マオだった。
「ちゃんと時間を稼いだよ、哲ちゃん」
私は眠気に耐え切れず、膝をついた。
「ママー!」
アデスが私の元に飛んできた。
「大丈夫?」
「うん。ちょっと眠くなっちゃった」
「僕が安全なところに運ぶから」
そういうとアデスは私を掴んで飛びあがった。
付いた場所にはクリフとドルンとプロールがいた。
プロールは眠ったままだった。
「こちらクリフです。眠らせる能力を持っている上位種を南の海岸で確認しました」
「了解」
「いまはマオが対応しています」
「小町は?」
「大丈夫です。いま救出しました」
「よかった。ありがとう。危なくなったら僕も向かうから」
「はい。わかりました」
クリフはトランシーバーをしまった。
「コマチ様はここで休んでいてください。私達であいつを倒します」
「う、うん」
私の眠気は限界に達した。