51.サハギン討伐大作戦③
みんなにばっかり大変な思いはさせない。
私はしゅわしゅわラムネを召喚した。
「アデス、プロール。よろしくね」
「うん。ママ!僕がんばるよ」
「はい。頑張りましょう」
上陸したサハギンに向かって引き金を引いた。
パシュシュシュシュシュシュ!
しゅわしゅわラムネがサハギンをハチの巣にしていく。
プロールも風魔法とハンドガンを使って、敵を倒していた。
「2人共、がんばれー!」
アデスは上位種というものが出てきたときように温存しておくのが哲ちゃんの指示だ。
応援された効果なのかいつもより身体が軽い気がした。
「ありがと。ママ頑張るよ!」
娘にいい所を見せるために、引き金を引き続けた。
▽ ▽ ▽
「プン。やってもいい?」
「うん。その間、僕が時間を稼ぐよ」
僕はペペンの前に立ち、サハギン達をハンドガンで倒していく。
パシュパシュパシュ!
この島に来てから、いろんなことを知った。
奴隷になる前から考えてもこの島は得れるものが多い。
それに得たものに挑戦させてくれる環境。
絶対に守らないといけない場所だ。
「ストーンボール!」
ギャ!
サハギンの脳天にストーンボールを命中させる。
数は中々減らせないが、上位種が来ないだけましだった。
「プン。終わったよ」
「わかった」
僕はサハギン達から離れた。
ペペンはハンドガンを構え、銃口をサハギン達に向けた。
「風の精霊さん。力を貸して」
パシュッ!パシュッ!
放った弾丸はサハギン達の中心で止まった。
ギャ?
サハギン達は不思議そうに弾丸を見ている。
弾丸は小刻みに震えだし、弾丸を中心に風の刃が四方に飛び散る。
風の刃はサハギン達の身体をバラバラにしていった。
「ペペン。大丈夫?」
「うん。でももう1回精霊の力を借りるには、ちょっと時間がかかるよ」
「大丈夫。さっきの攻撃でだいぶ数は減ったから」
「じゃあまた準備するから、守ってねプン」
「必ず守るよ」
テツジ様のおかげでペペンとより心から通じ合えるようになった。
ペペンが精霊と話している間は僕がここを守る。
▽ ▽ ▽
「ダルン!大丈夫か?」
「おう。余裕だ!ドルンの作ったこのハンマーは優秀だ」
ダルンはドルンが作ったメタルフィッシュのハンマーを使ってサハギン達を殴り飛ばしている。
ハンマーと言っても、メタルフィッシュの死骸を握り固めてハンマーの形にしただけのものだ。
だが、ドルンが握ったおかげで密度が凄いことになっているので、簡単には壊れないだろう。
「デルン。お前の刀はどうなんだ?」
「ああ。まだまともな稽古はできていないが、絶斬は手になじんでる」
オイラは刀の名を[絶斬]と名付けた。
理由はいろいろあるが、この刀を仲間のために使って、すべとの脅威から断ち切るという思いから付けた。
[断切]でもよかったのだが、[絶斬]のほうが漢字がかっこよかった。
オイラは絶斬を振り、サハギンの身体を裂いていく。
「武器を持ってるサハギンエリートはオイラがやるから、ダルンはそのほかを」
「え?」
ダルンは既に武器ごとサハギンエリートを潰していた。
「あー大丈夫。好きにやってくれ」
「おう!兄としていい所見せないとな!」
ダルンはこの島に来て本当に楽しそうだ。
ドワーフは鍛冶が得意な種族と言われている。
なので建築のスキルを取得したダルンは肩身の狭い思いをしたのだろう。
弟のオイラ達にスキルで得た知識などを話して、どうにか保っていた。
建築をするためにドワーフの里から出ると言われたとき、オイラとドルンは即決で付いて行くと決めた。
奴隷になってしまったりいろいろあったが、この島に来れてオイラは幸せだ。
ダルンもやりたいことを思う存分できるこの島が好きなのだろう。
この島は絶対に守らないといけない。
何があっても。
「おい、デルン。テツジ様が言ってたやつじゃねーか?」
ダルンが指差す方向には、サハギンエリートよりも身体のサイズが大きいサハギンの上位種がいた。
「二又の槍で身体が大きくて鎧を着ている。テツジ様が言っていた特徴と一致したな」
「ああ」
「オイラはテツジ様に連絡する。ダルン、時間を稼いでくれ。眠らせる力を持ってるかもしれないから気を付けて」
「任せろ」
オイラはすぐにトランシーバーを取り出した。
「こちらデルンです。南西の海岸に例の上位種が1体きました」
すぐにテツジ様の声がトランシーバーから聞こえてきた。
「わかった。クリフ、南西に増援を」
「はい!」
「こちら小町。南の海岸にも上位種がきたよ。額に装飾品を付けてるやつ」
「こちらペペンです。北西の海岸にも4つ腕のサハギンが現れました」
各地でサハギンの上位種が現れたようだ。
「クリフ。対応を頼む」
「わかりました」
オイラはトランシーバーをしまい、絶斬を構えた。
「ダルン!増援が来るまで耐えるぞ」
「やってやるよ」
▽ ▽ ▽
各海岸に上位種が現れた。
僕達の予想では主力はビーチに来るだろうと思っていた。
ビーチはサハギンエリートの数が多いだけ。
速めに終わらせて、みんなの所に向かわないと。
「オクトン!ドグド!あれやるぞ!」
「うん!」
キュー!
「ザン!あれを出してくれ」
「わかりました」
ザンはマジックバッグからミニガンを3丁取り出した。
「頼む。ビーチのサハギン達を殲滅してくれ」
ドグドはミニガンを構えた。
「いくよー!」
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!
キューキュー!
オクトンはミニガンを2丁構えた。
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!
弾丸は次々とサハギンをハチの巣にしていく。
ザンは銃弾が飛び交う中を駆け回り、ミニガンで撃ち漏らした敵を刀で斬っていった。
『同志討たず』があると分かっていても、僕にはすぐにはできない。
昨晩スキルを確認していたら、『敬愛のお返し』の対象者が増えていた。
10人と1体になっていた。
オクトンにスキルを取得したか聞いたら頷いたので、ミニガンの使用を解禁した。
ビーチは3人のおかげで、完全に殲滅することができた。
「ザンは南西。ドグドは北西に向かってくれ」
「はい!」
「うん!」
「ドグド、危なかったら身体を大きくしてもいいから」
「わかったー」
ザンとドグドは飛び上がり、目的地に向かって行った。
「オクトンとカーレは周辺の状況を見てきてくれ。問題なさそうならここに戻ってきてくれ」
キュー!
オクトンはカーレを掴み、海に戻っていった。
僕はトランシーバーを取り出した。
「こちら哲治。ビーチの殲滅は終わった。ザンが南西、ドグドが北西に向かった」
「こちらクリフ。わかりました。既に増員は送っているので、私とドルンは南に向かいます」
「よろしく」
僕は戦況を見つつ、東の崖が問題ないか確認するために集落に向かった。