4.ボミットオクトパス
小町はマジックバックをしょって僕に見せてくる。
「ねー?似合う?」
「すっごいかわいいよ」
小町はマジックバックが気に入ったようだ。
「えーっと池はどこだ?」
辺りを見渡すが見つからない。
家を背にして左側は海。正面には山。まさか山の方なのか?
「哲ちゃん!あったよ。家の真横」
「え?まじ?」
僕は小町の元へ向かった。
本当に池だ。しかも物凄い綺麗だ。
「ここなのかな?」
「うーん。でもタコさんいないね」
「小町、お酒出してくれる?」
「うん」
小町からお酒を貰い、ふたを開けた。
すると池にちいさな波がたった。
「匂いで呼ぼうと思ったが、行けそうだな」
「タコさん来いー」
波がどんどん激しくなったと思ったら、目の前に1匹のタコが飛び出してきた。
サイズはバランスボールぐらいのサイズだ。
「かわいいー」
小町は臆せず、タコの頭を撫でる。
キュッキュッ
タコは満更ではなさそうだ。
僕も撫でてみると、頬ずりをしてきた。
「小町、この子かわいいぞ。なんか名前を付けてあげよう」
「もう決めてたんだ―。見た目もかわいいしオクトン!」
「君の事をオクトンと呼びたいんだけどいいかな」
キュッキュッ!
オクトンは頷いた。
思ったよりも知能が高いみたいだ。
「じゃあ小町。このお酒をオクトンに渡して、ポリタンクにお酒を吐き出してもらって」
「うん」
小町はお酒を受取りオクトンに差し出す。
「オクトン。美味しいお酒だよー」
キュッキュッ!
オクトンは長い脚で酒瓶を持ち一気に飲んだ。
「あー20万が一瞬だ」
キューキューキュー!
ゆでダコのように赤くなったオクトンは上機嫌で鳴いている。
「オクトン。この中にお酒を入れてほしいんだけどいいかな?」
キューキュー
オクトンは脚を2つのポリタンクに1本ずつ入れた。
するとポリタンクはどんどんウィスキーが入っていった。
オクトンは脚を抜くと別の脚を入れた。
数分待つとポリタンクは満タンになっていた。
「口から吐き出すものだと思ってた」
「私も」
キューキュー
「じゃあまたお酒貰いに来るね」
小町がそういうと、オクトンは池の底に潜って行った。
「よし。そしたら変換機に入れに行こう」
「うん!」
小町がポリタンクを持とうとした。
「え?持つの?」
「哲ちゃん。農家の娘を舐めちゃだめだよ。20kgなんて余裕だよ」
「いやマジックバックがあるから」
「あ!」
ポンコツな小町もかわいかった。
▽ ▽ ▽
僕はずっと小町に肩パンをされ続けている。
さすがにちょっと恥ずかしかったらしい。
「ごめんって。あまりにもかわいかったから」
「あんなに笑わなくてもいいじゃん」
「ごめんごめん。さあ変換機を使うよ、ここにウィスキーを入れて」
「ポリタンクごと?」
「あー1個は直接入れてみようか」
「うん」
小町は自慢の筋力を使い、変換機にウィスキーを入れた。
蓋を閉じて、赤いボタンを押すと貯金残高が¥2,000,000になった。
「うーん。買った値段そのままではないのか」
「そうだね。あの瓶の20倍の量なのにね」
「まあほぼ無限に出せるみたいだし、赤字ではないね」
「そうだね。一か月はこのウィスキーみたいだから。その期間違うお酒を飲ませてあげようよ」
「オクトンに?」
「うん!」
「これからお世話になるし、お酒好きみたいだから良いかもね」
小町はもう1つのポリタンクのお酒も全部入れて赤いボタンを押した。
貯金残高は¥3,000,000になった。
「これで今日買ったものもこっちに持って来れるね」
「そうだね。いろいろしたらお腹すいて来たよ」
「家に帰って夕ご飯にする?」
「うん」
「じゃあ帰ろう!」
小町に手を握られ、僕達は家に戻った。
▽ ▽ ▽
僕は夕飯が出来るまでノートをぱらぱらめくった。
僕達にはまだ早いものが多いので、必要なところだけ探している。
○水について
ボミットオクトパスのいる池の水が使えるぞ。
貯水タンクに入れると水はきれいになるからな。池と家の間にあるから確認しろ。
ちなみにペットボトルとかを買い込んでもいいけど、ごみは集めて変換機に入れろ。少ないけど金になる。
○異世界の人間について
俺はこの島で人に全く会わなかった。
だが先輩のメモだと、3代前の先輩だけがこの島で人と会ったらしい。
その人のおかげで.ボミットオクトパスの能力がわかったと書いてあった。
通常スキルを確認したと思うが、『共通言語』と『自動翻訳』のおかげで、この世界の人と話すことは出来ると思う。
○島のモンスターについて
俺が島で出会ったモンスターは、ゴブリンとスライムとバウンドピッグ。
どれもナイフで倒せた。詳しくは別のところに記載しているから確認してくれ。
先輩達は他の魔物にもあったことがあるみたいだが、詳しい情報はなかった。
○海のモンスター
海の浅瀬には見たことない魚が居たが、モンスターは居なかった。
深いところまで行くと、モンスターがいる可能性は高い。
巨大魚を見たとか、ネッシーを見たとか、事実かどうかわからないメモはいくつかあった。
○島について
この世界のどこにある島かわからないが、1年この島に居て四季は長い夏と冬しかなかった。
日本の蒸し暑い夏と違っていい夏だぞ。雪も降るからいろいろ気をつけろ。
○山について
あの山は火山らしい。火口には近づいちゃダメと書いてあった。3代前の先輩の言葉らしい。
まあ活火山ではないみたいだから噴火はしないと思う。
○島の植物について
食べれる果物をあったが、有毒な物もあった。
俺は『鑑定』のスキルが無ければ、多分死んでいた。
この島は植物の成長に向いているらしい。
1代前の先輩はここで畑をやっていたみたいだが、島を後にするときに全部片付けたらしい。
なかなか興味深いことが書いてあった。
僕は小町が作ってくれた夕飯を食べながら、さっき得た情報を共有した。