47.サハギンの棲み処
僕達は予定通り、サハギンの棲み処を探しに行っていた。
船には僕とクリフとデルン。
海にはザンとドグド、アデスとオクトンが潜水クリームを使って二手に分かれて捜索をしている。
カーレも付いてきたが、船に身体をひっかけて海に浮いていた。
「クリフ、なんか見える?」
クリフはスナイパーライフルを使って、遠距離を見ていた。
「海上には異変はないです」
「4人もまだ戻らないし、棲み処は遠いのかな?」
「深いところにあるのかもしれないですね」
僕達は周辺を警戒しながら、4人が戻るのを待った。
▽ ▽ ▽
4人が帰ってきた。
「どうだった?」
僕が聞くと、ドグドとアデスが嬉しそうに答えた。
「楽しかったー!」
「いっぱいモンスター倒した!」
ザンとオクトンを見ると、少し疲れているように見えた。
子供達に振り回されたのだろう。
「そうか。よかったね!サハギンの棲み処はあった?」
「「なかったー!」」
2人は笑顔で答えた。
その様子を見たザンが口を開いた。
「テツジ様。もう少し遠くを探してみましょう」
「そうだね。潜水クリームもまだあるし、今日はできるだけ探そう」
クリフに船を動かしてもらい、沖の方に向かった。
▽ ▽ ▽
だいぶ沖に進んだ。
「うわ。凄いなこれ」
大量の渦潮が船の航路を塞いでいた。
クリフが口を開く。
「これがノヴァさんが言ってたやつですね」
「そうだね。これは船が渡れないね」
「はい。一旦ここに船を停めて、サハギンの棲み処を探しますか?」
「そうしよう」
3人は潜水クリームを身体に塗って、捜索の準備を始めた。
ドグドとアデスには僕とオクトンが塗ってあげていた。
「パパも入ろうよ」
「え?」
アデスは満面の笑みで言った。
「パパはいいよ。ザンとオクトンが大変になっちゃうからね」
「えー!パパも一緒に泳ごう!」
ドグドも言ってきた。
このまま断り続けたら、拗ねてしまう可能性がある。
僕はザンとオクトンを見た。
すると2人はしぶしぶ顔を縦に振った。
▽ ▽ ▽
「パパ、凄い綺麗でしょ?」
アデスが笑顔で言ってくる。
手を繋いでるので声がはっきり聞こえた。
2人のわがままを聞いた結果、二手に分かれず4人とオクトンとカーレで海に潜ることになった。
海に入った瞬間、カーレが身体に巻き付いてきた。
たぶん守ってくれようとしているのだろう。
「テツジ様。ここは深いので気を付けてください。それに流されて、あの渦潮に飲み込まれるとまずいので離れないでくださいね」
ザンは真剣な表情で言った。
「わかった。できるだけ邪魔をしないようにするね」
当然だが海の中には魚は多くいた。
時折肉食と思われるモンスターがやってくるが、ドグドとアデスが倒していた。
「凄い?」
「かっこよかった?」
倒すたびに二人は僕の元にやってきたので、褒めてあげた。
深海に向かって進んでいると、山のように大きな岩がある場所に着いた。
「うわーすごいな」
僕はその空間に驚いていると、ザンとオクトンが止まった。
「テツジ様。あそこ見えますか?」
ザンが指を差した。
「あっ。サハギン」
ザンが指を差した先は大きな岩に穴が開いて洞窟のようになっていた。
そしてその洞窟に数匹のサハギンが出たり入ったりしていた。
「あそこが棲み処?」
「たぶんそうです。洞窟の中がどれくらい広がっているかわかりませんが。もしかしたら想像以上の数がいるかもしれません」
「どうしようか」
僕達が悩んでいると、オクトンが叫んだ。
キュー!キュー!
「「え?」」
オクトンが焦ったように腕を差す。
その方向を見ると、ドグドとアデスがサハギンの棲み処に向かって泳いでいた。
「おいおい。嘘だろ……」
ザンとオクトンと共にドグドとアデスを引き留めようとしたが遅かった。
アデスがクロデコステッキを振りかぶっていた。
「アデス!ダメ!」
声は届かない。
ドゴン!
アデスが投げたクロデコステッキは巨大化し、数匹のサハギンを倒して洞窟を破壊した。
「あーまじか」
破壊された衝撃で、洞窟の中から大量のサハギンが現れた。
「テツジ様はここに居てください。私とオクトンで向かいます」
そう言ってザンとオクトンはドグド達の元に向かった。
大量に現れたサハギン達は怒っているようだった。
サハギンやサハギンメイジ、それに武器を持っているサハギンもいた。
ドグドとアデスは向かってくるサハギン達を倒していく。
2人共笑顔で戦っているが、さすがに今回はお説教だ。
ザンとオクトンは2人にフォローするように戦っていた。
「これでサハギン問題は解決しそうだけど。ちゃんと叱らないとダメだな」
僕は島に戻ったときのことを考えていた。
4人は大量のサハギンを圧倒していた。
ザンは両手を龍のようにし、薙ぎ払っていく。
ドグドはブラックグローブにトゲトゲを付けて殴っている。
アデスは手のひらから光の球を出して攻撃をしている。
オクトンは脚にサハギンを絡ませて締め上げていた。
「みんな強いな」
僕が感心していると、異変が起きた。
ドグドがブラックグローブを紐のように伸ばして、アデスを掴んでいた。
「なにやってるんだ?」
ドグドは紐を伸ばし、アデスをこちらに運んでいる。
「え?何?」
僕の元に運ばれてきたアデスは目をつぶって動かなかった。
「ん?大丈夫?アデス!アデス!」
応答がない。
だが呼吸音は聞こえている。
アデスを心配していると、ザンとオクトンが動かなくなっている。
それをドグドがブラックグローブを使って、僕の元に運んだ。
ザンもオクトンも目をつぶって動かなかった。
「これはまずいんじゃない?」
テンパっていると、ドグドのグローブが僕の腕に巻き付いた。
グローブのおかげでドグドの声が聞こえた。
「パパ!3人共、急に寝ちゃったみたい。俺も少し眠い」
「え?それってなんか眠らせるスキルとか魔法を使うやつが敵にいるんじゃないか?ドグド、すぐこっちに来れる?船に戻るよ」
「う、うん。わかった」
僕の記憶が正しければ、ドグドは『状態異常耐性』というスキルを持っていた。
だからギリギリ眠ってないようだ。
このまま戦うと、いつかは寝てしまうかもしれない。
ドグドは僕に巻き付けたブラックグローブを縮めながらこっちに向かっていた。
サハギン達はドグドを追いかけるようにこっちを向かって来ていた。
そして洞窟からは今まで見たことのない種類のサハギンが3匹現れていた。
「これはさすがにまずいんじゃないか?」
ドグドが僕の元にやってきたが、目を開けるのが精いっぱいそうだ。
「ドグド!大丈夫か」
「うーん。だいじょうぶ……」
ドグドはこれ以上戦うことはできないだろう。
眠った4人を連れて、海上まで泳いで戻る?
無理だ。サハギンに追いつかれる。
カーレに戦えるか?
いや、たぶん無理だろう。
僕は逃げる方法を考えたが全く思いつかなかった。
「思いつかない!けどやるしかない」
金鍔を召喚し、握った。
「カーレ。全員を巻き付いて!船に戻るよ」
カーレの茎は伸び、寝ている皆に巻き付いた。
僕は4人を引っ張りながら船を目指すが、なかなか進むない。
ギャギャギャ!
サハギン達に追いつかれ、囲まれた。
ギャー!
向かってくるサハギンを金鍔で攻撃するが、サハギンが速すぎて当たらない。
僕はサハギンにひっかかれるが、カーレが巻き付いているところだったため間一髪だった。
「これどうすりゃいいんだよ」
いい案が全く思いつかない。
僕はサハギンの攻撃を金鍔で防ぐことしかできなかった。
ギャアアアアア!
後ろで断末魔が聞こえた。
「え?」
振り返ると、後ろにいたサハギンの身体をカーレの茎が突き刺さっていた。
「うそ?カーレ戦えるの?」
カーレは返答しない。
でも僕はカーレに賭けるしかなかった。
「カーレ頼む!こいつらを倒してくれ」
僕がそういうとカーレの茎がどんどん伸びていき、囲っているサハギン達の身体を貫いていった。
「す、すごい」
カーレは囲んでいるサハギンを全員倒した。
「早く船に戻らないと」
シュッン!
僕はカーレに指示を出そうとしていると何かが顔の横を通り過ぎた。
「え?」
洞窟の入り口にいる、見たことない種類のサハギンが槍のようなものを投げていた。
「遠距離もいけるのかよ。カーレ、船に戻りたいんだ。できる?」
カーレの返答はないが、茎が伸びていく。
どんどん伸びていった茎や葉はまとまっていく。
そして大きなドラゴンのような形になった。
「なんだよこれ」
葉や茎でできたドラゴンに俺は驚いていた。
するとドラゴンの頭が僕を咥えて、背中に運んだ。
「カーレなんだよね?」
ドラゴンは頭を縦に振った。
「カーレ。船に向かってくれ」
僕がそういうとカーレは飛んでいるように翼を動かし、サハギンの棲み処から離れていった。




