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43.冒険者ノヴァ

「この子はエンペラーキャリータートルのタック。この子に乗って海を旅してたんだ」

「そうなんですね…」

冒険者のノヴァという女性はとても気さく人だった。

褐色の肌に長い青髪、たぶん年齢は僕よりも年上だろう。背中に背負っている大きな釣り竿がとても気になった。


「えーっと」

「あっ!僕はテツジです。そして妻の小町と子供のドグドとアデス。一緒に暮らしているクリフとザン。そしてテイムモンスターのオクトンです」

ノヴァは僕らを見渡した。


「エルフと魔人族と龍人族、なかなか面白い組み合わせだね。テツジは人族だよね?」

「はい。そうだと思います」

「ん?」

ノヴァは僕の返答に首を傾げた。


そんな様子を見ていたクリフが口を開いた。

「ノヴァさんは他種族に抵抗はないんですか?」

「え?ないよ?今日は居ないけど、うち以外のパーティメンバーは全員巨人族だもん」

「え!」

ドグド君は驚いて声を出した。


「それに、うちが所属している組織には獣人やドワーフやエルフもたくさんいるからね」

「エルフが?」

「うん!」

クリフは驚いていた。


「ところで、君達はよくこんなところにこの船で来れたね」

「こんなところ?」

僕はノヴァさんが言っていることが理解できなかった。


「ここら辺は海の流れが特殊で、船でここまでくるのは一苦労だったでしょ?」

「え?」

「え?」

ノヴァさんは僕のリアクションに困惑していた。


「テツジ達はいったいどこから来たの?」

「えーっと。近くの島で暮らしています」

「えー!近くに人が暮らしている島があるの?」

「まあ僕達だけしか暮らしていませんが」

「そうなんだ。食料とかはどうしてるの?」

ノヴァさんは良い人そうだが、さすがに異世界と行き来していることは隠さないといけない。


「船で魚を釣ったり、島で作ってる作物を食べてます」

「そうなんだ!じゃあ今からその島に遊びに行ってもいい?」

「え?」

「うちは珍しい食材や作物の種を探しているんだ!その島に目当てのものがあるかもしれない」

僕は頭を悩ました。


ノヴァさんはたぶんものすごく強い。

もし悪さを働こうとしたら、全員でやればどうにかなるか?


「やっぱりずうずうしかったかな?」

ノヴァさんは気まずそうに言った。


その様子を見た小町が口を開いた。

「大丈夫ですよ!ぜひ来てください!」


僕は小町の顔を見ると小町はにこっと笑いながらうなずいた。


▽ ▽ ▽


「へー。こんな島があったんだー」

僕達はノヴァさんを連れて島に戻ってきた。

ノヴァさんはニコニコしながら、集落を見渡していた。


「えーすごいなー!いいところだね」

「気に入ってもらえてよかったです」

「作物は何を作っているの?」

「一応米を作っています」


僕がそう言うとノヴァさんは目を見開いた。

「こめー――――!?」

「は、はい。どうしたんですか?そんなに驚いて」

「こ、米って何?」

「な、何?」

「しゅ、種類!」

「種類?白米?」

ノヴァさんは目を見開いた。


「はーくーまーいー!?」

「だ、大丈夫ですか?」

「ずっとうちらは探してたんだよ!白米を!」

「え?そうなんですか?」

「うん!ごめんね取り乱しちゃって」

「大丈夫ですよ。そんなに探してたのなら、今晩うちで食べていきますか?」

「いいの?」

「はい!それに在庫を少しですけどお譲りできますし」

「え!本当に?でも譲ってもらうんじゃなくて買うよ!商会に所属しているからね。タダではもらえないよ」

「じゃあ、いろいろこの島周辺の話を教えてもらっていいですか?」

「そんなことでいいの?」

「はい!島の外に出ていないので情報に疎いので、教えてもらえると嬉しいです」

「それくらいのことなら任せて!」

僕はノヴァさんを広場に案内し、いろいろ話を聞くことにした。


▽ ▽ ▽


ノヴァさんからいろいろ話を聞くことができた。


まずこの島の周りには人が住んでいる大陸が全くない。

一番近い大陸はこの島の西側にある魔人領と呼ばれているところらしい。人族ではなく魔人族といわれている人種が主に暮らしていて、龍人族や巨人族もひとくくりに魔人族といわれているという。

魔人領の周りは海流が常に荒れていて船で行くことはほぼ不可能に近いらしい。


もし人族が住んでいる国に行きたいのなら東側にあるデレメメ王国というところが近いらしいが、あまりいい噂を聞かないからおすすめはしないとのことだ。

ちょっと距離はあるが、デレメメ王国の北側にあるネプトリア海洋国が良いみたい。


「まあ、この島から船を出すのはなかなか厳しいと思うよ」

「そういえばさっきそんなこと言ってましたね」

「うん。この島の近くの海域は荒れてるからね」

「荒れてる?」


「昔、あるモンスターが暴れたせいで海流がおかしくなってるらしいよ。たまに海流がうまく嚙み合って、船が通れるレベルにはなるらしい。まあうちにはタックがいるから関係ないけどね」

ノヴァさんはどや顔で言った。


「ノヴァさんってなんでそんなに詳しいですか?」

「ついこの間まで魚人国にいたから、いろいろ教えてもらってたんだ」

「魚人国なんてあるんですね」

「うん。ちょっと依頼があってね」

ノヴァさんの話は今までで一番異世界感があってワクワクした。


「それにしてもドワーフや小人族やゴーレムまでいるなんて、すごい島だね」

「実はみんな奴隷なんです」

「え?」

僕はクリフ達との出会いを話した。


「そうなんだね。でもみんな幸せそうだね」

ノヴァさんは働いているみんなを見ながら言った。

「そうなるようには頑張ってるつもりです」

「うん。テツジは良い人間だね」

僕はその言葉に少し照れてしまった。


「そういえば、さっき話していなかったんですけど」

「ん?」

「うちのドグドは巨人族なんです」

「え?気付かなかった!」

「スキルで身体を小さくしていたので、気づかないのも当然だと思います」

「それでドグドくんがどうしたの?」

「実は…」

僕はドグドのこの島に来るまでの話をした。


「なるほど…」

ノヴァさんは首をかしげていた。

「うーん。うちが知っている巨人族は、自分のために仲間を裏切るような人種ではないんだけどなー」

「え?」

「もしかしたらだけどドグドくんの家族は、ドグドくんが死なないようにするために逃がしたのかも」

「逃がすために奴隷商に売るってことがあり得るんですか?」

「真実は分からない。巨人族は差別を受けている人種の一つではあるんだ。もし住んでいるところが襲われる可能性があるって家族が知っていたら、ドグドくんを奴隷商に売って、いい主人に買われる可能性に賭けたのかもって思ったんだ」

ノヴァさんの考えに僕は驚かされた。


「もしよかったら、今度この島にパーティメンバーの人を連れてきてもらいませんか?」

「いいよ。ドグドくんと話させたいんだよね?」

「はい。それで何かが変わるとは思ってませんが、過去に対して少しでもいい感情になってくれたらいいなと」

「わかった!連れてくるよ」

「ありがとうございます」

僕は頭を下げた。


ノヴァさんと話していると、小町がやってきた。

「ご飯の準備ができたんだけど、運んでもいい?」

「うん!ありがと」


▽ ▽ ▽


ノヴァさんの人柄のおかげか、夕飯は大盛り上がりだった。

「テツジ。この白米も魚料理も最高だね」

「よかったです。喜んでもらえて」

「相談なんだが、時々この白米を買いに来てもいいか?」

田んぼも広いし、島とマジックアイテムのおかげでたくさん収穫ができるから問題はなかった。


「いいですけど?確か船で渡るのは困難なほど海が荒れてるんですよね?島に来れるんですか?」

「大丈夫!タックに乗って海底を通ってくるから!それにタックは1回来た場所を忘れないから迷わないよ」

「それなら問題ないです。ただ、島にいるのでお金を使うことがないので、物々交換でもいいですか?」

「わかった。テツジはどんなものが欲しい?」

「うーん」

僕は悩んだ。


「この島で使えそうなマジックアイテムとかがあればうれしいです」

「了解!いいものを見繕ってくるよ!」


予想していなかったが、異世界でてつこまちの流通経路を作ることができた。


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