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41.逆異世界観光EX

テツジ様がクリフ夫妻をご自身の世界に連れていった。

昨日連れて行ってもらったダルンとドルンから話を聞いたが、テツジ様の世界は魔法などがないが技術力が高い世界のようだ。

建物も見たことのないものばっかりだったという。

別日だが私とデルンも連れて行ってもらえる。

異世界の刃物を見れるなんて、今からワクワクしてしまう。


だが気を緩めては駄目だ。

テツジ様がいない間、私がこの島を守らないと。


先日サハギンが現れた。近くに巣があるのではと私は考えている。

どうにか巣を破壊しないといけないのだが、なかなか難しいだろう。

今私にできることは、この島の警備をすることだ。


▽ ▽ ▽


ドグドくんとアデスちゃんの戦闘指南を終え、空から島に異変がないかを見ていた。

すると田んぼの近くでサハギンの群れがいることに気づいた。


「あそこにはシゲ爺様が!」

私は全速力で田んぼに向かった。


田んぼに到着すると、シゲ爺様がサハギンに囲まれていた。

サハギンの群れには上位種のサハギンエリートもいた。


「シゲ爺様!すぐにそこを離れてください!」

私がそう叫ぶと、シゲ爺様はゆっくりこちらを向いた。

シゲ爺様の表情は、いつもと変わらない穏やかな表情だった。


「おーザンか。今日は小町と哲治くんは元の世界に行っているじゃろ?」

「はい。そんなことよりも!早くこちらに!」

「ははは。ちょっと待ちなさい。久々にわしも身体を動かしたくてな」


サハギンの群れの頭上にウォーターボールやウォーターアローが現れる。

「くっ!」

私はシゲ爺様を避難させようと、動き出そうとした。

するとシゲ爺様は私の目を見ながら口を開いた。

「ザン。大丈夫じゃよ」

優しい言葉だったが、シゲ爺様の視線の圧に私の身体は一瞬硬直をした。


ウォーターボールやウォーターアローがシゲ爺様に当たり、水しぶきを上げた。

「あっ!シゲ爺様!」

シゲ爺様をすぐに助けないと。


水しぶきが止むと、シゲ爺様がいるはずの場所に長髪で白髪の若い人間の男性が立っていた。

「え?」

その男性の手には真っ白で美しい刀が握られていた。

「あ、あなたは?」

そう問いかけると、男性は口を開いた。

「ザン。シゲ爺じゃよ」


▽ ▽ ▽


私は目の前の光景を信じられなかった。

自信をシゲ爺様だという男性が、刀を振り回してサハギンやサハギンエリートを倒していく。


「これは夢ですか?」

「ははは。わしもこんなことになるなんて思っていなかったよ」

男性の戦い方は荒々しくもとても美しく、私は目を離すことができなかった。


男性が最後の1体の首を刎ねた。

すると男性の身体が光りだし、光が止むといつものシゲ爺様の姿に戻った。


「おっと!」

ふらついたシゲ爺様の元へ飛んでいき身体を支える。

「おお。すまんな」

「シゲ爺様。先ほどのお姿は本当にシゲ爺様なのですか?」

「ははは。そうじゃよ。わしの若いころの姿じゃ。エクストラスキルの効果みたいじゃの」

「そうだったんですか。テツジ様達もこのことは知っているのですか?」

「知らないよ。今日のことも内緒にしておいてくれぬかの?」

「え?」

私にはテツジ様に嘘をつくことはできない。


私が悩んでいると、シゲ爺様が口を開いた。

「今度、日本の刃物を見に行くんだろ?内緒にしておいてくれたら、日本刀の使い方を教えてやるぞ」

「ほ、本当ですか?」

「黙っていてくれたらじゃけどな」

「わ、わかりました」

「あと1つ頼んでもいいかい?」

「はい。なんでしょう?」

「このまま家に運んでくれんか?久々に動いて疲れてしまった」

「わかりました」

私はシゲ爺様を抱きかかえ、家へ飛んで行った。


テツジ様。申し訳ありません。

あの美しい戦い方に魅入られてしまいました。

私はこれから2つの秘密を抱えて島で生活をすることになった。




▽ ▽ ▽




無事に逆異世界観光が終わった。

ザンには満足な観光をさせられなかったのが後悔だが、おおむね成功しただろう。

あとは僕がやらなくちゃな。


僕と小町は家へ戻ってきた。

ドグドとアデスはザンに頼んでおいた。


「そういえば哲ちゃん」

「ん?」

「プロールとぺペンがきれいなアクセサリーつけてたけど」

「クリフとプンが長い間奥さんに贈り物をしてないっていうから、お金を貸してあげた」

「だと思ったー。やるじゃん」

小町はにやにやしている。


「そ、それでさ」

「ん?どうしたの?」

「これを小町に」

僕はブレスレットを取り出した。


「え?わたしに?」

「うん。指輪とかネックレスもいいかなって思ったんだけどさ。今の生活を作ってくれたのはこの腕輪だからさ、それと合わせられる奴がいいかなーって」

「ありがと」

小町は腕を僕に突き出した。

「つけて!」

「う、うん」


僕は小町の腕にブレスレットを付ける。

小町はそのブレスレットを嬉しそうに眺めていた。


「なるほどねー。これを渡したいから、ドグドとアデスをザンに預けたのね」

「ははは」

小町は腕に抱きついてきた。

「ありがとね、哲ちゃん」

小町は僕に笑顔を向けた。


僕の妻は本当に天使だった。



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