35.メタルフィッシュの活用法
船着き場予定地の近くに船を止めた。
「ドグド、アデス。ザンを呼んできてもらえる?」
「「はーい!」」
2人は返事をして飛んで行った。
少し待つとザンが空からやってきた。
「テツジ様。お呼びだと聞いたのですが」
「そうそう。いっぱい釣れたから、食べれる魚を教えてほしいなって」
「わかりました。確認しますね」
そういうとザンがディスプレイをいじり始めた。
「ポイズンサイーラ以外は全部食べれますよ?」
「そっかじゃあ今日は魚パーティだね」
小町は嬉しそうにしていた。
「テツジ様。あいつは食べてみないんですか?」
「あいつって?」
「私のマジックバッグに入っている三つ首のモンスターです」
「昨日倒したやつ?」
「はい」
ザンはそういうと砂浜に三つ首なのに頭が1つになっているモンスターの死体を出した。
「一応見てみるか」
僕はサングラスを掛け、死体を見た。
○トライデントモレイの死体
皮からヌメヌメしている体液が出ている。
魔石は中央の頭にある。
食用可。
「食べれるみたいだけど、解体とか行ける?」
「クリフとデルンと協力すれば問題ないと思います」
「じゃあお願いしてもいい?」
「はい。食べれるように解体したら、小町様に持って行きますね」
「うん。おねがい!」
「楽しみだ」
「ザン。もしめんどくさくなかったら、魚も数匹絞めて持ってきてくれる?」
小町が申し訳なそうに言った。
「はい。お任せください」
「ありがと!」
さすがの小町も生きている魚は少し苦手なようだ。
僕達はザンにその場を任せて別荘に戻った。
▽ ▽ ▽
「あのウツボはどうやって料理しよー」
「さすがの小町もウツボ料理は初めて?」
「うん。だからおじいちゃんに任せちゃおうかな」
「シゲ爺も初めてなんじゃない?」
「おじいちゃんは何でも出来るから大丈夫!」
小町は完全にシゲ爺に丸投げするつもりのようだ。
「今日はラムネちゃんもキャンディちゃんも使えなかったなー」
小町はちょっと不服そうだった。
「今度下平さんのところに行って、撃たせてもらおう」
「うん。ドグドとアデスも連れてね」
「そうだね」
自然に家族で出かける予定が出来た。
▽ ▽ ▽
今日も広場で宴になった。
シゲ爺が作ったトライデントモレイのたたきと唐揚げは最高だった。
当然他の魚も美味しかったが、あの見た目でこのうまさは感動ものだった。
お酒を呑みながら食事をしていると、ドルンがやってきた。
「テツジ様。ちょっとこれを見てもらえますか?」
「ん?どうしたの?」
ドルンは僕に木の板を2枚差し出した。
「え?なに?」
「右の木の板は何もしていない木の板です。左の木の板は昨日いただいたメタルフィッシュを溶かしたものに、トライデントモレイの粘液を混ぜたものを塗った板です。ちょっと叩いてみてください」
僕はそう言われ、左の木の板を叩いてみた。
「硬い!すごい硬いんだけど」
ドルンはニヤニヤしている。
「そうなんです。木材に今日作った塗料を塗ると金属のように硬くなったんです。それに燃えないですし、水も弾きます」
「えーすごい!こんな使い方があるんだね。昔から知ってたの?」
「いえ。昨日からいろいろ試していて、たまたま見つけられました。これを使えば建物の強度もあげれますし、船着き場もすぐにできると思います」
ドルンは満足げに言った。
「すごいねドルン。これからも頼むよ」
「はい!」
そういうとドルンは兄弟たちの元へ戻って行った。
次は珍しくプロ―ルがやってきた。
「どうしたの?」
「テツジ様。お願いがあるのですが」
プロールは申し訳なさそうに言った。
「出来る事なら聞くよ」
「私達がこの島に来た時に飲ませていただいた飲み物をまたもらえませんか?」
「エナジードリンク?どうしたの?疲れてるの?」
エナジードリンクが欲しいと言われ、労働環境が過酷なのかと心配になった。
「いえいえ。前にもお話ししたように、私は調合が得意なのです。今後何が起きてもいいように、エナジードリンクをベースにポーションを作りたいのです」
「なるほど、わかった。なんか使えそうなものを用意するよ」
「ありがとうございます」
プロールはクリフの元に戻って行った。
2人が並ぶと本当にハリウッドの俳優の夫妻に見える。
ほろ酔い気分になってきた。
宴も盛り上がりを見せていた。
ダルン達とシゲ爺はまたものすごい量の酒を呑んでいた。
プンはドグドとアデスに僕があげた本を読んであげていた。
「楽しいねー」
さっきまで女子会をしていた小町が隣に座ってきた。
「そうだね」
「こんな楽しい日々がずっと続いたらいいね」
「うん」
小町は宴を眺めながらセリフのような言葉を吐いた。
「なんか面白そうなこと起きるかな?」
「え?いまのセリフみたいな言葉がフラグってこと?」
「うん!」
小町はわざとフラグを建てに来たようだ。
「みんなが危険になるようなことは嫌だな」
「私もそれは嫌だけど、冒険者とかが来てくれたらうれしくない?」
「うーん。めんどそう」
「もー異世界あるあるだよ?冒険者!」
「出来るだけ異世界の人とか関わりたくないかなー。常識が違ったりするだろうから」
「もー夢がないなー」
小町はそういうともたれかかってきた。
酔ってるせいかドキドキしてきた。
「プロ―ルとペペンにドグドとアデスの事をお願いしちゃった」
「え?」
小町はもの凄い笑顔を向けてきた。
僕は小町の手を握り、家へ大至急向かった。




