31.稲刈りと白米パーティー
今日は稲刈りの日だ。
みんなは田んぼの前に集まっていた。
前回同様、麦わら帽子・チェックのシャツ・オーバーオール・長靴をみんな着ていた。
僕も小町に言われ、ちゃんと着てきた。
「シゲ爺。コンバインを使うんですよね?」
「そうじゃよ」
「僕達は何をすれば?」
「正直何もない。雰囲気作りじゃ」
シゲ爺はニヤニヤしていた。
小町が口を開く。
「じゃあ鎌が数本あるし、稲刈り体験をやろうよ。おじいちゃん、少し残しておいて」
「いいぞ」
シゲ爺がコンバインで稲刈りをしている間、僕達は鎌で稲刈りすることになった。
▽ ▽ ▽
稲刈りは順調に進んだ。
シゲ爺の方は当然だが、交代制でやっていた稲刈り体験チームもそれなりにできていた。
「なんかすぐに終わっちゃいそうだね」
「そうだね」
「哲ちゃん。ご飯のお供買おう」
「え?」
「すぐ食べたいじゃん」
「そうだけどさ。うちの炊飯器で足りるかな?」
「業務用買ったよ。台所にある段ボールに入ってるよ」
「え?買ったの?」
「うん!みんなで食べるためだよ!じゃあお供を哲ちゃんのセンスでお願い!ここは任せて」
小町の決め台詞のように言われ、僕はスーパーに向かった。
ノリノリの小町はかわいかった。
▽ ▽ ▽
僕は思いつくご飯のお供をもってきた。
生卵・のり・納豆・梅干し・サケフレーク・海苔の佃煮・明太子・しらす・食べるラー油などを大量に買った。
田んぼに向かうとみんなが集まっていた。
「哲ちゃん!今から精米するよ」
「え?ほんと?」
みんなの中心にはごつい精米機があった。
「じゃあ入れるぞ」
シゲ爺は麻袋に入った米を精米機に入れていった。
すると精米機から綺麗な真っ白な米が出てきた。
「「「「「「おおー!」」」」」」
みんなも島に来てから白米を食べているから美味しさはだいぶ伝わっていたようだ。
興奮した小町が声を荒げた。
「哲ちゃん!すぐに炊こう!」
「わかった!」
家電小屋に向かい、炊飯器を準備した。
「テツジ様!」
クリフが白米が入った麻袋を持ってきた。
「水は私が出しますんで」
「ありがとう」
僕とクリフは米を炊く準備をした。
▽ ▽ ▽
米を炊き始めた。
「クリフ、広場の準備をお願い。僕は一番ご飯に合うおかずを作るから」
「わかりました」
クリフと別れ、別荘のキッチンに向かった。
買ったものを皿に盛っていると、小町がやってきた。
「哲ちゃんのセンスはさすがだなー」
「そう?ありがとう」
「うん。大好きだよ」
「え?」
急な小町からの告白に戸惑った。
「おかずのセンスでもっと好きになったの?」
「ううん。もうすでにMAXだから溢れちゃってるかな」
小町の発言の可愛さに死にそうになった。
「あと餃子を焼くつもり」
「哲ちゃん。結婚して!」
「結婚してるんだけどね」
小町は謎にテンションが上がっているようだった。
「でもいつも料理は私なのに、餃子は哲ちゃんが作るよね」
「学生時代に良く作ってたからね。こだわりとかはないんだけどね。今回も冷凍だし」
「あー楽しみだ」
「そうだね」
小町はなぜか僕に寄り添っている。
正直邪魔だが、うれしくてそのまま調理を続けた。
▽ ▽ ▽
準備ができ、広場についた。
広場にはみんなが揃っていた。
当然、オクトンもピュアスライム達もエレ達も居た。
シゲ爺が家電小屋から異様に長い延長コードをつけて炊飯器をもってきた。
「哲治くん。延長コードを借りたぞ。無限に伸びるようになってたよ。ははは」
延長コードは当たりのマジックアイテムになってたようだ。
「ご飯は行き届いた?」
「「「「「「はーい」」」」」」
「じゃあこの島で初めて収穫した米を食べよう。いただきまーす」
「「「「「「いただきます!」」」」」」
僕は白米を箸でつかみ、口に持って行った。
「え?うまい。え?」
おまりの美味しさに理解が追い付かなかった。
小町とシゲ爺を見てみると驚きすぎて声が出ていないようだった。
「「おいしー!」」
沈黙を破ったのはドグドとアデスだった。
「パパ、ママ!美味しいね!」
「そ、そうだね」
ドグドに喋りかけられ、小町は我に返ったようだ。
「シゲ爺も美味しい?」
「ああ。美味しいぞ」
シゲ爺も我に返った。
「小町、どうじゃ?」
「お、美味しい…」
「うちの米とどっちがうまい?」
「こっち…」
「わしもそう思う、ちょっと複雑じゃの」
「そうだね。でもおいしいには勝てないかも」
小町はそういうとどんどんお米を口に入れていった。
「おじいちゃん。もっと食べな。美味し過ぎるから」
「ははは。そうじゃな」
シゲ爺も食べ進めた。
▽ ▽ ▽
白米パーティは大盛況だった。
餃子は大人気で2回も追加で焼いた。
「テツジ様」
ダルン達がやってきた。
「どうしたの?」
「今日の稲刈りで思ったのですが、田んぼの方にトラクターを入れる建物や精米機を入れる小屋を作ろうと思うんですが」
「いいね。船着き場はどんな感じなの?」
ダルン達は少し申し訳なさそうな顔をした。
「もう少しかかりそうです」
「全然いいよ。じゃあ田んぼ周りの小屋が終わったら、船着き場作りで」
「あ、あの。広場にも簡単な小屋を作りたくて」
「いいよ。でもなんで?」
「今日のような食事会の時に調理場になるようなものが近くにあればと思いまして」
「なるほどね」
「それに延長コードというもので電気も伸ばせるみたいなので、いろいろやれるかと思いまして」
「わかった。そこはダルン達を信用しているから任せるよ」
「ありがとうございます」
ダルン達は自分達の席に戻って行った。
ダルン達のためにいろいろ買ってあげたいが、残高の余裕がない。
とりあえず明日の金策からだな。




