28.DVD鑑賞会
帰宅途中に100円寿司に寄って、お寿司を買って帰った。
今日はドグドとアデスはこっちに泊まることになった。
僕は小町が食事の準備が終わるまでベランダでくつろいでいたら、アデスが目をつぶりながらドグドに触れていた。
「何してるの?」
問いかけるとアデスは目を開き答えた。
「ドグドは魔力が少ないから分けてるの」
「ん?どういうこと?」
「こっちの世界は魔力が無いから、身体の魔力が無くなっちゃうみたい」
「無くなっちゃうと危険なの?」
「わかんない!でもあげた方がいいかなーって思ったの」
「危なそうならすぐ教えて」
「「うん!」」
もしかしたら長時間こっちにいるのは危険なのかもしれない。
しっかり様子を見てあげないとな。
「準備できたよ!」
僕達は小町に呼ばれ、席に着いた。
▽ ▽ ▽
食事が終わり、今日購入したDVDを見ることになった。
「どっちから見る?」
「僕の!」
「アデスちゃんので良いよ」
ドグドは心優しい子だった。
「じゃあ『劇場版ウチらはアゲ↑アゲ↑とりまパギャルはムカTK』でいいのかな?」
「「うん」」
どんなタイトルなんだ。確実に制作チームおっさんだらけだよ。
4人でソファーに座り、僕はDVDをプレイヤーに入れて再生した。
ここで問題が起きた。
内容は元ギャルのしろぽよとくろぽよが悪のギャル軍団と戦う話なのだが、ドグドとアデスは日本語を聞き取れなかった。
約1時間半、古くて使い方があってるかわからないギャル語を僕と小町で吹き替えをする羽目になった。
「あーまじテンさげ!」
「あーね。あーねとりまあいつレベチじゃね?」
「それなー」
地獄の吹き替えタイムの救いは楽しそうな2人の笑顔と小町の可愛いギャル語だった。
ギャルになりきりながら言うセリフはまじ地獄だった。
▽ ▽ ▽
1本目のDVDが終わった。
アデスが買った魔法のステッキはくろぽよの武器だった。
魔法少女というが投げたステッキを大きくしたり、ステッキが鎌のようになったりと結構肉弾系の魔法少女だった。
「「ど、どうだった?」」
僕と小町は恐る恐る聞いた。
「「面白かった!」」
「「え?」」
「早く次見よう!」
「見たい!見たい!」
ドグドとアデスの勢いはすごかった。
「じゃあ次のやつ見る?」
小町がそういったが、小町は知らなかった。
次のDVDの登場人物が300を超えていることを。
▽ ▽ ▽
「大丈夫か?ベビーピンクナックル!ベイリーフナックル!サフランナックル!スカーレットナックル!」
「まさかお前達が裏切り者なのか?答えろよ!シーブルーナックル!ウォーターメロントルマリンナックル!オールドライラックナックル!ダリアナックル!ディープオーキッドピンクナックル!ジキタリスナックル!」
「違うよ!操られてるんだ。あいつらはこんなことをするやつじゃない。俺はドッタゲルフナックルとドラゴンパールナックルとネフライトナックルとネフライトキャッツアイナックルとヴァ―ミリオンナックルを信じてる」
1時間半でこんなに色の名前を言うことになるとは思わなかった。
小町は見たことのないほどの疲労顔をしている。
話の内容は300人以上いるナックルズのレッド・ブルー・グリーン・イエロー・ピンク・ブラウン・シルバー・ゴールド・ホワイト・ブラック以外が全員敵に操られるという話だった。
大半は自己紹介と名前で時間を使っている印象だった。
戦闘シーンはメインの10人がその他を倒す無双展開と、巨大化したボスに全員で必殺技を使うシーンだけだった。
ドグドに買ってあげたブラックはグローブを影のように形を変えて戦っていた。
影が羽根のようになって飛んだりもしていた。
魔法少女より魔法感が強い作品だった。
「どうだった?」
「「おもしろかった!」」
ドグドとアデスは満足していた。
「ママとパパはちょっと疲れちゃったから、そろそろ寝ようか」
「「はーい!」」
ドグドとアデスに歯磨きを教え、疲れ切ってる小町をお姫様抱っこして寝室に運んだ。
▽ ▽ ▽
目が覚めると、目の前には小町ではなくドグドとアデスがいた。
3人を起こさない様にリビングに行き、コーヒーを飲んで過ごした。
数時間後、3人が起きてきた。
「ごめーん。全然起きれなかった」
「平気だよ。昨日はお疲れだったもんね」
「すぐご飯作るね。ドグドとアデスはパパと遊んでて」
「「はーい」」
2人は元気よく返事をすると、寝室に戻って行った。
戻ってきた2人の手には昨日買ったおもちゃがあった。
「鬼ヤバスピアー!」
そう言いながらアデスがステッキを僕の身体に突き刺してきた。
「うわー」
付き合ってみたが恥ずかしいものだな。
ただ、アデスの喋り方がギャルに変わる前に違うアニメを見させると心に誓った。
ドグドは無言でパンチをしてきた。
ブラックナックルが無口なキャラだったからそれを守っているのだろう。
「うわー。やられたー」
そのあと朝食が出来るまでの30分ほど全力でヒーローごっこをした。
朝食が終わり、2人には絵本を渡した。
「哲ちゃんおつかれー」
「うん。つかれたー」
小町が僕の肩を揉んでくれていた。
「子供が出来るとこんな感じになるんだね」
「そうだね」
「でも安心した」
「安心?」
「私達の子供が出来たら哲ちゃんは今みたいに全力で遊んでくれるだろうし、立派なお姉ちゃんとお兄ちゃんもいるし」
「そうだね。シゲ爺にもはやくひ孫を見せてあげないとね」
「寿命が延びたから、長期間甘やかしまくると思うよ」
「甘やかしそー」
「いまでもドグドとアデスに甘々なんだから」
「そうなの?」
「うん」
僕と小町は昼過ぎまでのんびり過ごした。