27.家族で買い物
シゲ爺にだいぶ多めにお金を渡し、駅まで送った。
「気をつけてくださいね」
「ははは。大丈夫じゃよ」
シゲ爺はそういうと駅に入っていった。
「よし。じゃあ家に帰るか」
「うん。でも一回家に帰ったら、すぐに買い物行きたい!」
「え?じゃあ家に帰らないでそのまま向かう?」
「ううん。忘れ物したから家には帰りたい」
「忘れ物?わかった、とりあえず家に向かうね」
僕は小町の忘れ物を取りに家に向かった。
「今日は何を買いに行くの?」
「みんなのお洋服と、別荘とみんなの家の間に広場を作りたい!」
「広場?」
「うん。みんな別荘入るとまだちょっと恐縮してるでしょ?だから恐縮しないでご飯食べれるように外に椅子とか机とか置きたい」
「あーなるほどね。じゃあ服はいつもみたいにショッピングモールでいいとして、椅子とか机はどうする?」
「稲刈りも終えたらパーティもしたいから、倉庫みたいなお店行きたい」
「あーあそこね。会員カード必要だから、忘れずにもってきてね」
「うん」
家に到着した。
「私がマジックバッグとかも持ってくるから、哲ちゃんはここでまってて」
「わかったよ」
僕は車の中で小町が来るのを待った。
数分待つと車の後部座席の扉が開いた。
「あれ?助手席に乗らないのってえーー!!」
後部座席には小町と見知った子供が2人乗っていた。
ドグドくんとアデスちゃんだった。
「え?どうして2人が?」
腕を見るとしっかり例の腕輪を付けていた。
「家族での初めての買い物だよ!」
小町は笑顔でそう言った。
「え?大丈夫なの?2人共、身体に異変はない?」
「うん。だいじょうぶ。俺もパパとママの世界見てみたかった」
「僕も平気だよー。『変化』で羽根とか角は消した―」
見てみると本当に角や羽根が消えていた。
「うーん。じゃあ気分が悪くなったらすぐ言うこと、あと僕と小町から離れない。約束できる?」
「「はーい!」」
「じゃあ買い物に行こうか」
「しゅっぱーつ!」
「おー!」
僕はドグドくんとアデスちゃんを乗せた車を出発させた。
▽ ▽ ▽
倉庫と一体型になっている店についた。
僕達4人は手を繋ぎながら店を回った。
「まずは広場に置く机と椅子だよね」
「うん。あそこに見本が置いてあるよ」
僕達は見本のガゼボ・ソファ・チェア・テーブルが置いてあるところに行った。
「すごいフカフカ!別荘のと同じだー」
アデスちゃんはソファに座り、飛び跳ねていた。
「アデスちゃん。商品なんだから、雑に扱っちゃダメだからね」
アデスちゃんを注意する小町。
小町が良い母親になる兆候が見れてにやけた。
「はーい。ごめんねー」
アデスちゃんは注意されてすぐ辞められる良い子だった。
「ガゼボってすごい良いけど、13人が入るには狭いね」
「全員が入って使うものじゃないんじゃない?」
「あーなるほどね」
僕達はいろいろ吟味し、数点購入することに決めた。
色々見て回っていると、おもちゃのコーナーについた。
人通りが良い通路には、山積みになった大きいサイズのぬいぐるみが置いてあった。
「パパ。これ欲しいな俺」
ドグドくんは僕の背丈よりも大きいゾウのぬいぐるみを指さした。
「まあ1個あってもいいか」
僕がそういうと小町とアデスちゃんが詰め寄ってきた。
「私も欲しい!」
「僕も欲しい!」
「え?ドグドくんが欲しがってるゾウのやつでいいでしょ?」
「私はこのキリンがいい!」
「僕は白と黒のがほしいな」
アデスちゃんが言っているのはパンダだった。
「さすがに3個は多いよ。別荘狭くなっちゃうよ?」
「「でもー」」
女の子2人はかわいくおねだりをしている。
さすがに父親として今日は来ているんだ。厳しくしないと。
僕がそう決意していると、ドグドくんが口を開いた。
「パパ。ママかアデスちゃんが欲しい奴にしていいよ」
「え?」
「俺も欲しいけど、ママとアデスちゃんの方が大切だから」
「ドグドくん…」
パパは泣きそうになった。
こんな良い子を我慢させちゃダメだ。
「うーん。じゃあサイズ変更の能力が付くことを願って、3つとも買おう」
「え?いいの?」
「「やったー」」
3人は喜んでいた。
「そのかわり、別荘で今まで以上に頑張ること」
「「「はーい」」」
僕の家族は全員すこぶるかわいかった。
日用品や食品を購入し、車に戻った。
「マジックバッグがないと詰んでたな」
僕は買ったものをマジックバッグに入れていった。
小町が前に変換した、肩掛けウエストポーチは僕、ボストンバッグはシゲ爺、ダレスバッグはクリフ、子供用リュックはアデスちゃんが持つことになった。
クリフが持っている巾着型のマジックバッグ2つはダルンとプンが持つことになったようだ。
「よーし。次はショッピングモールに行くよ」
「「「はーい」」」
僕達は車に乗り込んで移動した。
▽ ▽ ▽
僕は疲れ切って、フードーコートで休んでいた。
隣にはおしゃれな服を着てソフトクリームを食べるドグドくんとアデスちゃん。
「んー満足。みんな似合う服もいっぱい買えたし、ドグドとアデスにもいっぱい服買っちゃった」
小町は満足そうにしていた。
「ん?呼び捨て?」
「だって我が子よ?くんとかちゃん付けてたら距離あるじゃん」
「そうかな?」
僕と小町が話していると、アデスちゃんが口を開いた。
「パパも僕の事アデスって呼んでほしいな」
娘のおねだりに一瞬気絶しそうになった。
「俺もドグドって呼んでほしい」
息子のお願いに失神しかけた。
ドグドくんもアデスちゃんも異世界人だからかビジュアルがかなり良いから、表情一つ一つの破壊力がすごかった。
「わかった。アデス、ドグド」
そういうと二人は満足そうに笑い、ソフトクリームに集中し始めた。
「今日はこの後どうするの?本もお酒もいっぱい買ったよ」
僕は小町に問いかけた。
「今日は疲れたから、最後に2人に1個ずつおもちゃを買って帰ろう」
「大きいぬいぐるみ買ったじゃん」
「ぬいぐるみとおもちゃは別腹!」
小町の意味の分からない理論も受け入れて、おもちゃ売り場に向かった。
おもちゃ売り場に付くとドグドとアデスの目がキラキラし始めた。
「パパ、この中から1つ買ってくれるの?」
「うん。だからちゃんと選ぶんだよ」
「はーい」
アデスは嬉しそうに小町と女の子向けのおもちゃコーナーに向かって行った。
「俺もいいの?」
「当たり前だろ。一緒に選ぼうな」
「うん!」
僕はドグドと共におもちゃを見て回った。
戦隊モノのコーナーに付くとそこには色とりどりの大量の腕があった。
「なにこれ」
良く見てみると、今やっている戦隊モノの武器のようだ。
『剛拳戦隊ナックルズ』という戦隊モノらしい。
おもちゃコーナーには肘まである厳ついグローブが吊るされていた。
「ドグド、違うところいく?」
「ううん。ここ見たい」
「まじ?」
「うん」
僕はドグドに渡される色とりどりのグローブの種類を口頭で教えることになった。
「えーっと次はアンバーナックルのグローブだね、ブラウンナックルの親戚みたいだね」
「パパ、これは?」
「これはアンバーローズナックルのグローブだね。アンバーナックルの兄弟みたいだけど仲が悪いみたい」
「パパ、これは?」
「これはアンバーホワイトナックルのグローブだね。アンバーナックルとアンバーローズナックルが力を合わせた時にこの姿になるみたいだよ」
「これとこれは?」
「シトロングリーンのグローブとサイプレスグリーンのグローブ、あとエジプシアングリーンとエンペラーグリーンのグローブ」
地獄だった。
まさかこんなに色がいっぱいいるなんて。
最近の戦隊モノはこんなにヒーローが居るのか。
「どう?気に入ったのあった?」
「うーん。多すぎてわかんない」
「だよねー」
「パパが選んで」
「え?いいの?」
「うん!」
300種類ほどあるグローブの中から、シンプルなブラックナックルのグローブを選んだ。
「これが似合うと思うよ」
「わかった!これにする」
僕はドグドの為に剛拳戦隊ナックルズの映画のDVDも購入することにした。
小町達と合流すると、アデスの手にはキラキラにデコレーションされた魔法のステッキを持っていた。
「それは?」
「なんだっけ?『ウチらはあげ↑あげ↑』っていう魔法少女のアニメのおもちゃかな?」
「ウチらはあげ↑あげ↑?」
「うん。昔ギャルの主人公達が社会人になってから魔法少女に選ばれて戦う話みたい」
「えーそれって少女なの」
「わかんない。一応映画のDVDを持ってきた」
「必要そうだね」
僕達は会計を済ませ、車に戻った。




