1.先人のメモ
僕達は倉庫の中にある謎の空間に入った。
「…哲ちゃん」
小町が手を繋いでくる。かわいい。
「大丈夫。中には普通に入れたな」
「うん」
謎の空間の中には、2つの見たことない機械と机があった。
机の引き出しを開けると、中に1冊のノートがあった。
「こんなのがあった」
「見てみよう」
僕はノートを開いた。
ノートの中はメモのようなものがびっしり書かれていた。
「なんだろこれ」
「哲ちゃん。背表紙にマジックでなんか書いてあるよ」
「え?」
ノートの背表紙を見てみるとびっしり文字が書いてあった。
[このノートを見つけたものへ。
このノートを見つけたってことは、ブレスレットをつけてるということだな?この家の新しい主ってことかな?俺は四宮仁。日本人だ。俺も君と同じようにこの家を買い、ブレスレットを見つけ、この空間を見つけた。まあこの空間の先輩ってことだ。
まずどこから説明するかな。この空間はどこの世界にも属さない空間だ。ブレスレットを付けていないと入れない。そしてこの空間の奥にあるドア、あのドアは異世界の無人島にある家に繋がっている。たぶん言っていることが理解できないと思うが、簡単に言うとゲームのような世界に繋がっているんだ。
ドアもブレスレットをつけていないと通ることはできない。だがすぐに通るなよ!俺達の世界の物を異世界に持って行くことが出来ないんだ。だから今ドアを通ると裸で異世界に行くことになるぞ。
服や道具を持って行く方法はこのノートに書いてあるから、あとで見といてくれ。
その他にも気になることはたくさんあるだろうが、知ってることはすべてノートに書いておいた。
俺も先輩達のメモのおかげで楽しく無人島生活が出来た。
俺はこれから異世界で生活をする。ここにはもう戻らないだろう。このノートを見つけた君!もし家を売ろうと考えているのなら、このメモは元あった場所に置き、ブレスレットも家のどこかに隠しておいてくれ。もし異世界に興味があるなら、このノートを有効活用して楽しい無人島生活を送ってくれ!じゃあな]
僕と小町は混乱した。
「異世界?」
「無人島?」
「どうする?」
僕は小町に問いかけた。
「裸はいやだ」
「ノートを見てみるか」
ノートを開いて、該当する部分を探した。
○こっちの世界の物を異世界に持って行く方法
ドアの右にある機械の電源を入れる。
するとドアの上に数字が出てくる。それは金額だ。
異世界に荷物を持って行くにはお金がかかる。
一応少しだが俺がお金を入れておいたから遠慮なく使ってくれ。
そして電源を付けたら左の機械の上の蓋を開けて、その中に異世界に持って行きたいものを入れるんだ。
蓋を閉じて緑色のボタンを押すと、ドアの上の数字が減るはずだ。
これで異世界に運べるようになる。
もしこの作業を忘れてドアをくぐってしまうと、一生その物は戻ってこないから気をつけろ。
ちなみにブレスレットは入れなくていいからな。
この空間でブレスレットは外れないから大丈夫だと思うが。
「やってみる?」
「うん」
小町は右の機械の電源を入れた。
ドアの上に数字が表れた。¥1,500,000と表示された。
「え?」
「150万?」
「少しって書いてあったはずなんだけど」
「じゃあ服を持ってくるか」
「そうだね。ここで脱ぐのは恥ずかしいし」
僕達は一旦空間から出て服と靴を一式持ってきた。
僕達は左の機械の蓋を開けて服を入れた。
「このボタンでいいんだっけ?」
「違う!緑のボタン」
「危ない危ない!」
僕が緑のボタンを押すと、ドアの上の数字が¥1,100,000になった。
「うわ。40万もかかったみたい」
「今後、もしこのドアを使うなら、この服だけにしよう」
「そうだね。まあ安全じゃなかったらこの空間は封印しよう」
「うん。そうだね」
僕達は部屋に戻り、服を着替えた。
僕はドアノブに手を掛けた。
「じゃあ行くよ」
「うん」
僕はドアを開くと、ドアの先にはもう一つ部屋があり、またドアがあった。
「あれ?だまされた?」
「だましてないでしょ。この部屋があることすらおかしいんだから」
「そっか」
部屋を見渡すと、ドアの横に同じ機械が置いてあった。
ドアの上にも同じように¥1,100,000と表示してあった。
「この部屋から出てみよう」
「うん」
僕達はドアから開けるとその先には大きなリビングがあった。
「え?なに?素敵なんだけど」
リビングは吹き抜けになっていて、2階があるようだ。
大きなソファーにテーブルにアイランドキッチン。
テレビもあるし冷蔵庫もあるし。
「え?ほんとに異世界?」
僕はノートを開いた。
○家について
家は俺が建てた最高の家だ。
まあリフォーム依頼をしただけだけどな。
異世界で稼いだ金をだいぶ使った。わけありの仕事と言って、リフォーム業者を目隠しして異世界に連れて行き作業してもらった。
因みにソーラー発電だが電気も通ってる。いつの時代のやつがこのノートを見ているかわからんけど、俺の時代ではなかなかいい感じの家だぞ。
1階はリビングとダイニングとキッチン。あと俺が持ち込んだ道具が何個か入っている部屋。
2階には寝室と空き部屋2つある。好きに使え!
キッチンを使う場合は貯水タンクに水を入れて使ってくれ。下水は勝手にきれいになって海に流れるからを気にしなくていいからな。
トイレはあるけど、毎回水を入れて使ってくれ。風呂は残念ながらない。
「ということみたいだ」
「すごいね。うちより広い」
「掃除はしないとダメそうだね」
「掃除機あるかな?」
「どうかな?とりあえず外見てみる?」
「うん」
僕達は外に出た。
「「おーーーー」」
家は少し高い位置にあり、島を見渡せる場所だった。
家の周辺は平らな草むらが広がっていて、海辺までは道はなだらかな斜面になっていた。
海もどちらかというと砂浜があり、ビーチのようになっていた。
少し離れたところには高めの山があり、ものすごく自然豊かな島だった。
「すごいね、哲ちゃん」
「本当に島だ。なかなか広そうだね」
「うん!」
「あれ?なんか元気になってる?」
「なんかワクワクしてきたよ」
小町はニコニコして子供みたいだった。
「そうだね。さっきまではいろいろ怖かったけど、こんな景色見たらワクワクしてくるね」
「探検する?」
「うーん。今日は軽く見るだけにしよ。ノートも読みたいし」
「そうだね。じゃあ一旦帰ろうか」
「そうしよ」
僕はこの奇妙な体験に正直ビビッていたが、小町のこんなにかわいい姿が見れてうれしかった。
僕のスローライフはこの島のおかげでもっと有意義なものにできるかもしれない。