14.小町帰宅
目が覚めた。
僕はスマホをすぐに確認した。
小町から[10時に駅に迎えに来て]とメッセージが入っていた。
しかも自撮り付きだった。
お願い事をするときに自撮りを添えればほぼ聞いてもらえることを小町は分かっている。
そういうところも本当にかわいかった。
時計を見ると8時だ。
まだ時間があるので、車を出してみんなの朝食を買いに向かった。
スーパーは空いていないのでコンビニに行くことに。
ドグドくんが身体のサイズ通り結構食べるから、コンビニのおにぎりとパンの棚のものはほとんどカゴに入れた。
家に帰ったらすぐ変換部屋に行き、変換機に食べ物を入れて変換をする。
「あー昨日の分のウィスキーをオクトンに貰うの忘れてたー」
食べ物を変換機から取り出し、ドアをくぐる。
変換部屋を出ると、ポリタンクが8本積んであった。
オクトンが昨日の夜と今日の朝入れて、積んでおいてくれたみたいだ。
「助かるわー」
ウィスキーを変換機のすべて入れ終わると、貯金残高が¥24,410,000になっていた。
ここ数日の大量の食事でだいぶ引かれたみたいだ。
リビングを見てみるとまだ誰も起きていない。
栄養ドリンクで元気は出たみたいだが、やはり疲れが溜まっているようだ。
僕は音をたてないように外に出た。
外に出るとドグドくんが起きていた。
「おはよう。朝早いね」
「おはようテツジ様。目が覚めちゃった」
「先にご飯食べる?」
「うん!」
僕はドグドくんに大量のおにぎりとパンを渡し、開け方を教えてあげた。
ドグドくんは苦戦しながらも食べることが出来ていた。
僕はオクトンの池に日課のビールを渡しに行った。
近づくとわかるのか、オクトンは池から飛び出してきた。
「オクトン、ポリタンクありがとね。本当に助かった」
キューキュー!
「はい。ビール」
キュッキュッ!
オクトンはすぐにビールを開けて飲みだした。
「じゃあ僕はドグドくんのところに戻るね」
キュー!
ドグドくんの元に戻ると、クリフがドグドくんと話していた。
「おはようクリフ」
「おはようございます。テツジ様」
「クリフも早起きだね」
「久々に気を張らないでいられたので、短時間ですっきりすることが出来ました」
「それは良かった。そこにあるご飯みんなの分も入ってるから、起きたら渡してあげて」
「わかりました」
クリフは頷いた。
僕達3人は地面に座りながら話をした。
「そういえば、みんなのステータスとか聞いて良いものなの?」
「普通はあまり他人のステータスを見たり聞いたりしませんが、主人と奴隷の関係の場合は把握するのが普通かと」
「なるほど、奴隷商人は100人近い奴隷のステータスを確認してたの?」
「いえ、売る直前に確認するくらいだと思います。実際に私は確認されませんでした」
「なるほどね。みんなのスキルとか一応把握しておきたいけどな」
「良いと思います。ちなみに『遠距離射手』というエクストラスキルで、『弓術』と『成長促進』などを取得してます。なので弓での狩りなどは任せてください!どんな遠くても当てて見せます」
「おー凄い」
「あとでみんなのスキルを確認してみたらどうです?」
「そうだね」
小町が帰ってきてからやってみるか。
「ちなみにドグドくんはスキル持ってるの?」
僕がそう聞くと、ドグドくんは首をかしげた。
「スキル?」
「え?」
「ドグドくんはスキルを知らないのですか?」
「聞いたことない」
クリフはだいぶ驚いている。
「ドグドくん。ステータスって言ってみてください」
「ステータス?わ!」
「どうです?目の前に何か出てきましたか?」
「うん。でも俺、字が読めない」
「なるほど。そうしたら私とテツジ様にそれを見せたいと思ってください」
「うん」
ドグドくんの目の前にディスプレイが現れた。
「ドグドくん見てもいい?」
「良いよ。テツジ様もクリフさんも」
【名前】 ドグド
【年齢】 10
【職業】 奴隷
【レベル】 10
【生命力】 2860
【魔力】100
【筋力】 1531
【防御力】 1251
【俊敏力】 50
【スキル】
○エクストラスキル
増減の巨人LV1
→五体増減LV1
○通常スキル
剛腕Lv1
状態異常耐性
「これはすごいですね。やはり巨人族って感じのステータスです」
「これすごいんだ。ドグドくん、ここを触っててくれる?」
「うん」
僕はドグドくんにスキルをタップさせた。
○増減の巨人
→五体増減Lv1
自分の身体を2倍のサイズに増加、2分の1に減少させられる。
内蔵・骨・筋力も増減するので、ステータスも同じように変化する。
「これってすごくない?ドグドくん、頭の中で身体の大きさを半分になるように考えてみて」
「え?」
「ドグドくんが持ってるスキルが身体のサイズを変えられるスキルなんだよ!本当は大きくなりたいと思うけど、服が破れたら困るから、一旦小さくなることを考えてみて!」
「わ、わかった」
ドグドくんが目をつぶると、身体がどんどん小さくなって半分のサイズになった。
「増減出来たよドグドくん!3mくらいか。まだまだ大きいけどすごいよこれは」
「本当だ!」
「ドグドくんはさっきの大きさよりも倍くらいに大きくなれるんだよ。全然小さくなんかなかったんだよ」
「そうですね、スキルのレベルが上がれば2倍以上になる可能性もあります」
「本当に?本当に?」
「うん」
「本当ですよ」
「うれしいよーー!」
ドグドくんは泣き出してしまった。
「うれしいよね。良かったよかった!」
「うん、うん」
僕とクリフはドグドくんを慰めた。
ドグドくんの泣いている声が聞こえたのか、別荘から数人出てきた。
▽ ▽ ▽
僕はドグドくんを慰めて、みんなにご飯を渡して談笑していたら、いつの間にか迎えに行く時間になっていた。
急いで家に戻り、車に乗り込んで駅に向かった。
駅に着くと小町とシゲ爺が待っていた。
「ごめん遅くなった」
「もー待ったよ!もう自撮りに効力ないのかなー?」
「あります!あります!」
「ふーん」
「小町、哲治くんをいじめるでない」
焦っている僕をシゲ爺が助けてくれた。
「いや、2人が新潟に行ってる間にいろいろあって」
「そういえば漂流してきた人たちはどうだったの?」
「あーそれが全員奴隷だったんだよ」
「奴隷?そんなのあるの?」
小町は驚いていた。
「それで、なんか船でどこかに運ばれる最中に嵐やら病気やらが起きて、生き残った10人がうちの島に流れ着いたんだよ」
「なんかすごいね」
「ほー。人間じゃないと聞いたが、本当か?」
「はい。エルフ・ドワーフ・小人族・巨人族・ドラゴニュート・悪魔族です。奴隷の主人が居なくなって、なんかいろいろあって僕の奴隷になってしまいました」
「えー哲ちゃんの奴隷?なんで?やめさせられないの?」
「うん。奴隷契約が出来る人がいないと解除もできないんだって」
「そうなの?かわいそうだよ。おうち帰りたいだろうし」
「それが、僕の奴隷になった経緯が、うちの島に住みたいって言うから一緒に暮らして米作りを手伝ってって言ったら奴隷になっちゃったんだよ」
「えーそれだけで?じゃあ10人には出来るだけいい生活させてあげないとね。責任だね」
「うん。いろいろ事後報告になってごめんね」
「大丈夫だよ」
良い妻を持ったと改めて実感した。
「あと気になることが1つあって、漂流中に全員が謎の声が聞こえたらしいんですよ」
「謎の声?」
「ほー」
「この先に大きな山がある島があります。その島には1人の人間の男性が居ます。その男性は妻と8本脚のモンスターと立派な家で暮らしています。その男性があなた達を助ける救世主になるでしょうってみんなが聞いたらしくて、僕の事を救世主だと思っているみたいで…」
「なんか哲ちゃんすごいね」
「哲治くんの説明文みたいな内容だな」
「本当にいろいろあり過ぎて大変でした。たぶん2人も様付けで呼ばれると思いますのでびっくりしない様に」
「はーい」
「ほほほ。驚くわけなかろう」
僕は2人を連れて家に帰った。