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0.プロローグ

ここは千葉の九十九里。

僕は妻の小町と2年前にこの街に引っ越してきた。念願のマイホームだ。

昔からアウトドアやガーデニングが好きで、田舎暮らしに憧れていた。

大学を卒業してデザイン会社に勤めていた。そこで新入社員として入った妻と付き合うようになり結婚。

20代後半でフリーランスになり、結婚と同時にこの中古の一軒家を購入した。

持ち主が突然居なくなり、売りに出されていたところを購入したので結構安く購入できた。

ちょっといわく付きの古い家だが気に入っている。庭もあり、野菜作りをしている。なかなか満足のいくものは出来ていないが。


僕は朝は庭の畑をいじり、日中は仕事をし、夕方になるとこの縁側で景色を見ながらのんびりするのが日課になっていた。


「哲ちゃん。ご飯出来たよ」

小町がキッチンから僕を呼んだ。

「今いくよ!」

僕はダイニングに向かった。

テーブルの上には妻の手料理が並んでいた。

「今日も美味しそうだ」

「そう?普通よ」

妻の料理に腕は最高だった。


「ごはんはどれくらい?」

「大盛りで!」

「はーい」

妻の実家が新潟の米農家で、定期的に美味しいお米を大量に送ってきてくれた。

小町は茶碗に盛ったご飯を持ってきて、テーブルに着いた。

「「いただきます!」」

僕たちは食事を始めた。

こんな変わらない日常に僕は物凄い幸せを感じていた。


「哲ちゃん。何ニヤニヤしてるの?」

小町は笑いながら聞いてきた。

「いやー幸せだなーって。愛してる人と昔から憧れていた生活をしているなんて幸せすぎる」

「もーずっと言ってるじゃん。3日に1回は同じこと言ってるよ。もう引っ越して2年だよ?200回は言ってるよ?」

「だって幸せなんだからしょうがないじゃん」

「まあいいけどー」

妻は時々ツンツンしてくる。それがまたかわいい。


「そういえば押入れの中を掃除してたら出てきたんだけど、これ哲ちゃんの?」

小町はそういうとブレスレットのようなものを5つ取り出した。

「え?なんだろこれ。ブレスレット?こんなの僕は付けないしな」

僕は1つ取って腕に付けてみた。

「似合う?」

「全然。哲ちゃんはそういう金属製のアクセは似合わないよ」

「そう?じゃあ似合うって言ってもらえるまで付けておこうかなー」

「絶対明日には外してるよ。ほら!私の方が似合ってるでしょ?」

そういうと小町も腕輪を付けた。

「全然。僕の方が似合ってる」

「そんなこと言うなら、私も似合ってるって言ってもらえるまでつけておこうかなー」

イジワルをしようとしてくる小町も本当にかわいかった。

「じゃあどっちが長く付けていられるか勝負だね」

「負けないよ」

僕達は食事を終え、小町はお風呂に行った。


リビングでテレビを見ていると、何か違和感を感じた。

「ん?なんだろ」

違和感の内容が分からないから、気にせずテレビを見ようとしたが違和感は消えない。

「なんだこれ」

「哲ちゃん!」

声がする方を見るとバスタオル姿の小町が居た。

「小町どうしたの?お風呂は?」

「なんか変なの」

「え?」

「なんかお風呂入ってても違和感があって」

「小町も?」

「哲ちゃんもなの?」

「うん。なんだこれ」

「わかんないよ」

小町は怖くなってしまったのか僕に抱き着いてきた。

小町大好きおじさんの僕にはご褒美だったが、この違和感の原因を探らないといけない。


「ちょっといろいろ見てくるよ」

「私も行く」

バスタオル姿のかわいい妻が手を繋いでくる。幸せだ。


僕達リビングとダイニングと客間を見て回り、庭も確認するが何もない。

2階に上がり、仕事部屋と寝室を見るが何もない。

「やっぱり気のせいなのかな?明日の朝になっても違和感があったらもう一回原因を探ろう」

「うん。わかった。私、服着てくるね」

「わかったよ」

「今日は早く寝ましょ」

「そうしようか、じゃあ1階の電気消してくるね」

僕は1階に降り、テレビと電気を消して寝室に向かった。


2人でベットに入っている寝ている。

僕は違和感でなかなか寝れなかった。



▽ ▽ ▽



翌朝、僕は違和感であまり寝れなかった。

小町はまだ寝ているようだ。

小町の寝顔を長時間見れたことだけは違和感に感謝だ。

「んー」

小町が起きた。

「おはよう」

「おはよ」

今日も小町はかわいい。


「違和感のせいで全然寝れなかったよ」

「え?私は平気だったよ。昨日服着てから違和感を感じてないかも」

「本当?僕は今も違和感を感じてるよ」

「なんでだろうね。こうしても違和感ある?」

小町は僕を抱きしめてきた。

「気分は最高だけど、違和感は消えないな」

「残念」

小町は本当にかわいかった。


ただ、小町にうつつを抜かしているわけにはいかない。

違和感の原因が分からないと今後の生活に影響がある。

「ちょっと家の周りを見てくるよ。なんか原因があるかもだし」

「え?私も行く」

僕達は玄関で靴を履き、外へ出た。


「庭は昨日見たもんね」

「うん。でも倉庫は見てないよ」

「あー一応見てみようか」

庭には倉庫代わりにガーデニング用品を入れている小さな小屋があった。

僕達は倉庫に行き、倉庫の扉を開いた。


「え?」

倉庫の中が広くなっていた。

しかも僕が入れていたガーデニング用品がなくなっていて、謎の機械が2つ置いてあった。

そして奥の壁にはドアがあった。

「え?どういうこと?」

「ん?なにが?」

「何がってこの倉庫だよ!」

「哲ちゃんどうしたの?何か無くなってるの?この前買った肥料もあるし、ガーデニングの道具もあるけど」

「小町!肥料も道具もないじゃん!倉庫が広くなってるし、見たことない機械があるし!」

「なに?わかんないよ。からかってるの?」

「え?」

小町には倉庫の中身が僕が見えている物と違っているようだ。


「いやごめん。なんでもない」

「もーびっくりしたぞー。驚かそうとしたでしょ」

「ははは」

やっぱり小町には見えてない。

「哲ちゃん違和感は?」

「あー無くなってる」

「よかったー。でも何が原因だったのかね?」

「そ、そうだねー」

僕は頭が混乱した。

違和感はこの倉庫を見たら消えた。


昨日は違和感を感じていた小町が朝になると違和感を感じなくなっていた。

むしろ寝る前にはなくなっていたみたいだ。

どうして小町の違和感は消えたんだ?

「哲ちゃん。今日の朝は納豆食べる?」

「あ、ああ。うん。食べるよ」

「わかったー。すぐにできるから待っててね」


僕は原因が何か考えるが何も思いつかなかった。

僕は一旦すべてを夢だったと忘れることにした。

「できたよー食べよ!」

「うん」

僕と小町は席に座り食事を始めた。

「「いただきます!」」

小町は納豆をかき混ぜながら話す。

「そういえばお父さんがまたお米送ってくれるって」

「あーありがたいね。お礼を送らなきゃね」

「いいよ、お礼なんて」

「駄目だよ。千葉の美味しいもの送ってあげよう」

「わかったよー」

小町は不満そうな発言とは違い、表情は笑っていた。


「そういえば哲ちゃん、庭で新しい野菜でも始めるの?」

「うーん。前回は失敗しちゃったからね。なんかご近所の人に聞いてこの土地に向いてる野菜から始めようかなって思ってるよ」

「私はお米がやりたいな」

「お米?」

「お米農家の娘だからね。作りたいけど、海も近いし広さも足りないだろうからたぶん無理だけどね」

「難しいかもしれないけど、バケツで始めるやつからやってみようか」

「うん!やりたい!」

小町の可愛さで昨日からの信じられない現象を忘れることが出来そうだ。


「てか哲ちゃんまだ付けてるの?」

「え?」

「それ!」

小町が指を指した先には昨日付けた腕輪があった。

「あれ?小町は外したの?」

「昨日お風呂から出て、服着るときに外しちゃった。勝負は哲ちゃんの勝ちだね。ご褒美は何がいい?」

ガタッ!

僕は立ち上がった。違和感の原因はこのブレスレットだ。

小町がつけたらあの倉庫を見ることができるはずだ。

「ちょっと哲ちゃん!ご褒美は夜!今は駄目だからね」

「小町!」

「なに?お願いしてもダメだからね」

「昨日のブレスレットをすぐ持ってきてくれ」

「え?」

「すぐに確認したい!」

「わかったよー」

小町は2階に上がりブレスレットを持ってきた。


「それ付けて」

「う、うん」

小町はブレスレットをつけた。

「あ、あれ?昨日と同じ感じ。なんか違和感が」

「やっぱり!小町、倉庫に行くよ」

僕は小町の手を引っ張り、倉庫に向かった。

「ちょっと、哲ちゃん!靴がちゃんと履けてないって」

「ごめん。でもすぐに確認したくて」

「なにを?またふざけてるんだったらさすがに怒るよ」

「小町、倉庫の扉を開けてみて」

「本当に何にもなかったら怒るからね!」

小町は倉庫の扉を開けた。


「え?なにこれ」

「小町にも見える?」

「なんで?中身がなくなってるし、倉庫が広くなってる」

「違和感は?」

「なくなってる。なんなのこれ」

「僕にもわからない。入ってみない?」

「え?大丈夫なの?」

「わからない。でもなんで違和感を感じていたか知りたくない?」

「うん」


僕達は倉庫に繋がった謎の空間に入ることに決めた。




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