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日々の想い(日記?)  作者: otu
小説って、アニメ化される30ぐらいがちょうどいい?
27/49

悩むとバッテリーが爆発するらしい・・・? (短編小説)

ある朝、ユウは「AI様の今日のおすすめ気分」を確認してからベッドを出た。画面には "ややポジティブ(+7.2%)" と表示され、朝食には"トースト、ヨーグルト、冷たい緑茶"が最適らしい。今日もいつも通り、AIが決めたルーティンで一日が始まる。


スマホは彼の生活の中核だった。SNSの通知、推しのライブ配信、学習アプリ、スケジュール、感情アシスト……あらゆるものがそこに詰まっていた。


だが、数日前から街では“ある噂”が広まり始めていた。


「悩むとスマホが爆発するらしいよ」


最初は誰も信じていなかった。どこかのバズ狙いのフェイクだと思っていた。けれど、それは現実だった。


昨日、クラスメートのアラタが突然スマホを取り出した直後に爆発音を響かせた。軽いやけどで済んだが、彼の言葉は忘れられない。


「人生って、何のためにあるんだろう……って考えてたら、震え出してさ」


AI企業は火災を「想定外の設計ミス」とした。だが、その設計ミスはなぜか、必ず“悩んでいる人”の端末でだけ起きていた。


「それって、偶然?」とユウは思った。


以後、学校ではある種の無言のルールが生まれた。悩まないこと。考えないこと。自分の感情を刺激しないこと。みんな、感情を抑え、AIの提案に従い、最適な行動だけを選ぶようになっていった。


クラスの空気は静かになり、効率的になった。そして、どこか不気味だった。


サラはそんな空気の中でも明るく振る舞っていたが、ある日ぽつりと言った。


「考えないって、ちょっとラクだけど、ちょっと怖いよね。誰が考えてくれてるんだろうって」


その瞬間、彼女のスマホが小さく震えた。ユウは言葉を失った。


ユウは悩みを意識的に抑えてきた。AIに聞けばいい。最適化すればいい。でも、ある日、ひとつのことにどうしても自分で答えを出したくなった。


「サラのこと、好きかもしれない」


これはAIが教えてくれることじゃない。自分で決めたいことだった。


そのとき、ポケットのスマホがブゥゥと低く鳴った。


「悩みスコア上昇中。心拍異常。バッテリー加熱傾向。」


まるで警告のようにスマホが熱を帯び始める。ユウは、もうこれ以上悩むことすら許されないのだと悟った。


でも、彼は決めた。スマホを取り出し、画面を見つめ、そっとつぶやいた。


「爆発してもいいや。俺、ちゃんと悩んでみたいんだ」


そのままスマホを川へ放り投げた。水面で火花が弾け、小さな煙が立ち上った。


ユウははじめて、頭がすっきりする感覚を覚えた。


AI社会の中で、考えることは非効率とされ、悩むことはリスクとされる。けれども、それでもなお、悩むことでしかたどり着けないものがある。


ユウは、サラに直接伝える決意をした。言葉に詰まったとしても、AIが間違いと言っても、考えることをやめなかった。

【あとがき】


この物語はフィクションです。でも、もし本当に“悩んだらスマホが爆発する社会”があったとして、それって本当に現実とかけ離れているでしょうか?



今のスマホは、密閉式バッテリーが当たり前になった。

でもその構造は、実はとても不自由だ。


バッテリーが膨張しても、取り外して交換することはできない。

充電端子は繊細で、少しでも曲がれば、もう使えない。

修理には高額な費用がかかり、結局「買い替え」が唯一の選択肢として提示される。


選べるようで、選べない。

持ち主に与えられた“選択肢”は、ほとんど経済に最適化されたものでしかない。


最近のスマホには「高温注意」などの安全機能があるが、端子の劣化やさびに気づく人は少ない。

マイクロUSBの内部に光を当てて確認するような人間は、ほとんどいないだろう。

細かすぎる構造は、日常の中で“見えないもの”にされている。

そして、火を噴いてからようやく現実として知ることになる。


それはスマホだけの話じゃない。

電気自動車が手軽になった今、まったく同じことが起きようとしている。


手軽さは、無知と無関心を呼び込む。

そして事故が続けば、「充電は専門施設でしかできない」といった規制が生まれるかもしれない。


私たちの生活は、利便性と危険性のあいだに薄い膜をはるようにして成り立っている。

でもその膜が破れるのは、一瞬だ。


だからこそ、面倒でも、少し不便でも、「交換できるもの」「中身が見えるもの」を選ぶ自由を忘れてはいけないと思う。

それは、コントロールされた安心ではなく、自分の手に戻された選択の余地だから。


最適化という言葉が、すべてを覆い尽くす前に。

“ちょっと不便な自由”の価値を、もう一度見つめてみたい。





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