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日々の想い(日記?)  作者: otu
小説って、アニメ化される30ぐらいがちょうどいい?
26/49

顔のない日々

この物語はフィクションです・・・・・・・? 


前書き


2020年以降、私たちの日常は突然、マスクに覆われるようになった。

感染症対策としてのマスク着用は、確かに必要な防護措置だった。

しかし、夏の高温多湿の環境下で長時間マスクを着け続けることは、知られざるリスクを孕んでいる可能性がある。


体内の酸素濃度はわずか数パーセントの低下でも、脳の前頭前野に影響を及ぼし、判断力や集中力の低下を招くと言われる。

酷暑の中、換気もままならない密閉環境でマスクを長時間装着すれば、慢性的な酸素不足や微細な酸素欠乏症に陥る恐れも否定できない。


そうした肉体的な負荷は、単なる個人の健康問題にとどまらず、資本主義社会の根幹を揺るがす可能性すら孕んでいる。


人々が正常な判断力を失い、生産性や創造性が低下すれば、経済活動は停滞し、競争力を失う。

そして、「効率第一」「利益至上」の価値観で成り立つ現代社会は、ゆっくりとした“喪失”の中で崩壊の兆しを見せるかもしれない。


本書は、そんな影響の一端として、マスク社会が特に若年層に与えた心理的・社会的な波紋を描く短編である。

身体と精神の両面からの喪失が、静かに未来を蝕んでいることに、読者が気づくきっかけとなれば幸いだ。



2025年春、都内の就活会場は例年よりも静かだった。

学生たちは黒いスーツに身を包み、マスクを着けていた。しかし、その日、ある面接官ははっきりと口にした。


「マスク、外してもらえますか?」


彼女は固まった。数秒、息が詰まるような沈黙が場を包んだ。

自分がそれを断ることで、この部屋の空気を乱してしまうかもしれない。

それでも、心臓が激しく鼓動し、声は出なかった。


「……すみません、ちょっと……」


言葉がマスクの内側で溶けていく。

その場にいた誰もが、彼女の目の奥の不安を見逃さなかった。


***

それから五年遡る。2020年、彼女がまだ8歳の頃。


あの年、世界から“顔”が消えた。

学校に行けば全員がマスク姿で、みんなの表情は半分隠されていた。

笑っているのか、怒っているのか、悲しいのか、誰にもわからなかった。


担任の先生は繰り返し言った。


「マスクを外したら、おうちの人が死んでしまうかもしれませんよ」


それはただの衛生指導ではなく、まるで恐怖を植え付ける呪文のようだった。

彼女はいつしか、笑うことに罪悪感を抱くようになっていた。


***

2021年。彼女の弟がコロナに感染した。


クラスメイトのささやきが耳に突き刺さる。


「〇〇ちゃんの家って感染者が出たんだって」

「やっぱりあの子、危ないんじゃない?」


ランドセルには“菌”と落書きされ、帰宅すれば母親が涙をこぼしていた。

何の罪もないのに、なぜこんな目に遭うのか。彼女にはわからなかった。


張り紙が貼られ、教室では誰も彼女たちの目を見なくなった。

給食の時間には、一人だけ離れた席で食べることを強いられた。


感染したことが悪いのではない。

「感染しないために十分に気をつけなかった」ことが、悪だったのだ。


***

2023年、中学生になった彼女はマスクを外せなくなっていた。


マスクを外すことは「裸になること」と同義に感じていた。

誰にも見せたくない、自分の顔。


ある日、隣の席の男子が小声で言った。


「ずっと隠してると、結婚できねえぞ」


冗談だったのかもしれない。だが、その言葉は胸の奥に深く刺さった。


***

そして再び2025年。


面接は終わり、彼女は静かに席を立った。

面接官の目は彼女のマスク越しの顔をまともに見ていなかった。

しかし、言葉にならない「躊躇」と「恐れ」を見逃さなかった。


「結果は後日お伝えします」


その言葉は、合格の知らせではないことを彼女も知っていた。


***

帰り道、スマホの画面が目に入った。


【ニュース速報】

「20代女性の自殺率、前年比28%増」

「“顔を見せられない世代”に深刻な精神的不安」


彼女の周りを行き交う人々は皆、マスクで顔を隠している。

だが、誰もがその理由については語ろうとしない。


理由は、いつの間にか“空気”となってしまった。


***

マスクがすべての原因ではない。

しかし、他人の顔も、自分の顔も見えない社会は、

若者たちから大切なものを静かに奪い去った。


笑顔、信頼、そして人生を選ぶ勇気さえも。


「顔を見せること」に怯える彼女たちは、

人間関係や恋愛、仕事、結婚といった機会を少しずつ失っている。


***

これは「静かな喪失」の物語である。

私たちが見落としがちな、あるいは避けてきた、顔のない世代の記録だ。




注意書き


本稿で描かれる内容は、現時点で入手可能な情報や報告、そして筆者の考察をもとに構成されています。

しかし、マスクの長時間着用が酸素欠乏症を引き起こし、精神的・身体的影響を及ぼす可能性については、現在も研究途上にあり、医学的な確証は十分に得られていません。


しかし、その治験結果が得られた頃には、すでに後戻りできない段階に達しているかもしれない──というのが、最も恐ろしい現実かもしれません。


本作品はあくまで社会的・心理的側面の一例としてご理解ください。

読者の皆様には、最新の医学的知見や公的な健康指導を優先し、過度な不安や誤解を招かぬようご留意いただきたいと思います。


本作品はあくまで社会的・心理的側面の一例としてご理解ください。





あとがき


この物語を書いたのは、マスク社会がもたらした影響に疑問を抱いたからだ。

マスクが感染症予防のために必要だったことは間違いない。

しかし、その裏で見えなくなったものは何か。


特に子どもや若者の「自己像」と「社会性」の形成に深刻な影響が出ていることを、社会全体で認識しなければならない。


顔を隠すことが当たり前になる社会では、人と向き合うこと自体が怖くなる。

これは単なる衛生習慣の変化ではなく、文化と心理の深い断絶だ。


未来をつくる若者たちが、「顔を出すこと」を恐れず、

自分らしく生きられる社会を、私たちは取り戻さなければならない。



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