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最高のリーダー

駅で梅森と別れ、自宅の前まで辿り着くとそこにはミケが居た。

何時ものようにしゃがみ込んで頭に触れる。

ミケは不動で撫でられながらも不思議そうに鼻をふんふんと動かし続けていた。

「にゃ……」

(……この匂い、さては他の猫に浮気して来ましたね!)

「はは、浮気は違うだろ」

低く喉を鳴らされるが、どうしようもない。

そもそも結婚すらしてないだろって話だが。


柔らかい毛の感触を感じながら振り絞るような息を吐く。

何と言うか、幸せな一日だ。

今日の思い出は俺の人生の中でも五本の指に入るくらい楽しいものだった。

更に何より嬉しいのが……帰りの電車での梅森の言葉。


『そう。機会があったらまた一緒に行く?』


また一緒に、単なる常套句に聞こえる人も居るかもしれないが俺にとっては救われるような一言だ。

邪な悪意や欲も無く、ただ純粋に互いの楽しみを追求できる。

そんな理想的な関係が今日で終わらないなんて、どれだけありがたい事なんだろうか。


……特に、俺は一度関係を閉ざしてしまった苦い経験がある。

だからこそ、次とかまたって単語が心に響いてくるんだ。



風呂上がり、白いTシャツを着ながら俺はソファにどかっと座り込む。

何気なくテレビを眺めていると、そこには目を引く光景があった。


ステージの照明を浴びて煌びやかに輝く11人の少女達。

それぞれがキレのあるパフォーマンスを見せていく。

結果的に生まれる一体感は会場の熱気を大きく湧かせていた。


画面の前で見る俺ですら興奮を隠せない程の完成度。

これが、今のアイドル業界を担うグループの実力だ。


映像が終わるとゲストたちが歓声と拍手を上げる。

「……という訳で今流れました映像はクロックの武道館ライブでの特別公演の様子です!」

司会の男性芸能人が声を大きく張り上げて言い放つ。


それに合わせてカメラは並んで座るクロックのメンバーをアップで映す。

「凄いですね~圧巻のパフォーマンスでしたよ」

「ありがとうございます。凄い緊張したんですけど……無事成功して本当に良かったです!」


照れ臭そうに微笑む彼女達を見据えて司会は更に場の空気を盛り上げようとする。

「いやぁ突然の時目零さんの活動休止もありながらよくここまでねぇ!」

「そうですね……やっぱり日々どれだけリーダーが私達を支えてくれてたか最近特に痛感します」

一人の少女が感慨深そうに告げる。


その言葉に他のメンバーも揃ってうんうんと頷く。

その動作一つだけでも時目零……つまりは如月が物凄く信頼されていたことが分かった。

更に心の中を覗いてみる。


(リーダーには散々助けられたからな)

(真帆ちゃん見てる……?私達も頑張ってるよ……!)

(目いっぱい高校生活楽しんでるといいな)


彼女達の言葉はカメラの前でのリップサービスなんかじゃない。

しっかりと心の底から如月を尊敬しているのだ。

立派に2年間、リーダーとして皆を引っ張ってきたのだろう。



最も当の本人の高校に行く動機は中々にアレだが……

休止しても尚信頼されている最高のリーダー、時目零とただ俺と話したいだけの如月真帆。


この二人が同一人物だと言う事実が俺の頭を悩ませるのだった。

次回からは如月回です

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