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攻めてみないと

それから俺たちは本当に地下でやっていた解体ショーを見に行った。

俺の感想としてはまぁうん……凄いインパクトのある絵面だったとしか言えない。

おまけに切った後のマグロの目が思いっきりこっちに向いてるもんだから……


あの情景は今夜の夢にでも出てきそうだ。無論悪夢として。

「わー……カッコいい」

(すご。動画撮ってSNSに上げたら絶対バズる奴だ……)

「まさに職人芸ね」

(これ、私も出来るようになったら……井口君に少しは注目してもらえるかな?)


如月と梅森は普通にその光景に感心し、文字通り心から楽しんでいた。

ていうか梅森に至っては何かおかしな方向にまで行こうとしてないか?

実際目の前でやられても気の利いたコメントすら出来ないと思う。


美少女二人が解体されていく様を見てはしゃぐ様子は中々にシュールだ。

それでいいのか女子高生。


……まぁ楽しんでるならいいか。



「ごめん!私ちょっとトイレ行ってくるね」

今度は上の階に行こうかと言う流れになったすぐ後、おもむろに如月は女性用トイレへと向かっていった。

さっき主婦らしき集団がまとめて入っていったが……相当混んでるんじゃないか?


そんな不安を抱えながらもどうにもすることが出来ず、トイレの前に備え付けられているベンチに

梅森と並んで座って帰りを待つことに。



数分ほど経ったが俺たちは無言のままだ。

やる事も話すことも見当たらずに黙々と手遊びを繰り返すだけの時間。

ついさっきまで普通に話せていたのに……微妙に気まずい。


仕方ない面はある。

梅森はまぁクールな奴と言うか……好んでお喋りをするタイプじゃないからな。

本人曰くキャラを計算してる部分があるらしいから一概には言えないが……


だとしても内面の方に関してもまた触れにくい部分である。

ちらっと露骨に思われない程度に顔を覗きこんで見た。

(井口君がこっち見てる……ヤバい、顔ニヤけちゃいそう)


聞こえてくるのは嬉しさと恥ずかしさが混じったような声音。

正直今でも信じ難い事実だが……本当に梅森は俺の事が好きなようだ。

真実を知る能力じゃない以上明確な理由は分からない。


何故俺の事が好きなんだ?とでも聞いてみれば思考を誘導できるかもしれないが。

さすがに唐突にそんな質問をするのは不自然すぎるだろう。

もしうっかり俺は心が読める能力者だと言う事実が悟られてしまったら……


少なくとも俺が梅森の立場なら恥ずかしさの末に憤死してしまう自信がある。

別に口汚い本心などは微塵も無いが……だとしても包み隠せない好意を見られていると言う事実は揺るぎない。

それを容赦なく突きつけてもどうしようもないだろう。


でも実際彼女の想いを真っ直ぐ向けられた場合にどういう回答をすれば良いのか分からない。

今はまだ内心に留められている分不干渉を貫けるが、表に出れば話は別だ。


更に言えばいつ来るかも予測不能。あくまで梅森のさじ加減次第である。


何なら次の瞬間になんて事も……それはさすがにないか。


ひたすら思考を重ねていると、梅森が無言の空間の中で口火を切る。



「ねぇ、井口君は私と付き合ってみたいと思う?」





「……すまん。多分聞き間違えた。もっかい言ってくれるか?」

聞き間違えた、と言うよりかは聞き間違いであってほしかった。


しかし俺の希望とは反して梅森は寸分違わず同じ言葉を繰り返す。

心の声が重なる事で聞き間違いなどという疑いの余地は残らない。



「井口君は私と付き合ってみたいと思う?って言ってるのよ」

(ただ好きって気持ちを抱えてるだけじゃ駄目だよね。たまには攻めてみないと……!)



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