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監視役

軽はずみな失言だったが、そんなに重大なミスではない。

「(嘘だが)口に出してた」か「偶然当たった」とでも言えば誤魔化せるからな。


この言い訳だけじゃ不自然に思われるかもしれないが……それだけだ。

さすがに心を読まれてる?なんて思考が第一に出てきたりはしないだろう。

基本的に人は超常現象とは無縁の生活を送っているんだから。


どちらかと言うと後先考えずに発したことを省みるべき部分はそこじゃない。

『折角俺と二人でって……別に休みの日とかにすればいいだろ?』


これは一日サボりを提案された時に如月の説得の為に言った台詞だ。

事実これに従ってあの後俺たちは4限目から授業に戻ったのだが……


「で、今度の休みになったら一緒に遊びに行ってくれるよね?」

(丸々サボれなかったけどこれはこれでありかも……)

学校が終わり、駅前にて如月は俺のネクタイを引っ張りながらにっこりと笑うのだ。

眼福と言えるような美少女の笑顔だが、何故だか物凄い圧を感じる。

逃げ道はどこにもなかった。


こうして半ば無理やり……いや、結局は俺の軽はずみな発言が招いた結果だが。

ともかく俺は如月と週末に二人で遊びに行くことになった。


なったんだが……


週末、待ち合わせしていた駅前に着く。


俺の姿を見るなり如月はぽかーんと状況が理解できないと言ったように大きく口を開ける。

そしておずおずと状況説明を求めてきた。


「えと……私二人で遊びにって言ったよね……?」

如月が不可解に思っている存在は俺じゃない。


俺のすぐ後ろにぴったりくっついている人物についてだった。


「すまん。どうしても説得しきれなくて……」

両の掌を合わせて謝る。

どれだけ言い訳をしても見逃してはもらえなかったんだ。



「気にしなくていいわ。私はただの監視役だから」

(いや、何かの間違いなんだろうけど……けけけ、結婚とか無いよね?無いよね?)


黒いキャップ帽を被った梅森は平然と言う。

内心は凄い焦っているようだが、正直もうそこら辺は慣れてしまった。慣れって怖いな。


勿論梅森が付いてきたのは理由があって……


何でもあの日の放課後、委員会内の会議でも結婚騒動はそこそこ話題になっていたらしい。

と言ってもほとんどの人が冗談やネタで済まそうとしていた。

会議の議題と言うよりかは雑談の話題の一つとして持ち出された感じだな。


本気で取られてはいないようで俺も安心していたが…一年生のある女子がこう言ったらしいのだ。


「私は楽観視すべきではないと思っています。不純異性交遊は断固として取り締まるべきかと」


突然のマジレスにその場の全員が驚く。

そんなことなどお構いなしと言うように彼女は続ける。


「特に如月さんは立場が立場ですから……万が一の事があった場合は拡散の末に学校の大きなイメージダウンに繋がる懸念もありますよ」


いやもう不純異性交遊がどうとか何年前の話だよって感じだが。

結果的に俺たちはこの注意喚起もあって今後の動向を警戒される羽目になった。


そして風紀委員であり、距離が比較的近い梅森が早速休日の監視役にあてがわれたという話だ。


正直言っていい迷惑である。誰なんだその1年生は……!



「いや、マジで私達無実だからね?蜜柑ちゃんってそーんな頭の固い子じゃないでしょ?」


苦笑いを浮かべながら如月は誤解を解こうとする。ここに来るまで俺も何度も行ったことだ。

やましい事など何一つ無いんだからな。疑われたままでは居られない。


だが俺達の反論は次の梅森の一言で封殺される。


「でも貴方達が授業をサボったのは事実よね?」


「……はい」


がっくしと肩を落とす如月。

あまりにも呆気ないが仕方ない話だ。そこだけは言い訳の仕様が無い。

俺も何一つ反論できなかったから家から駅までついて来られてしまったんだからな。


「最も私自身は疑ってないし…むしろ潔白を主張するチャンスと思ってもらって構わないから」

(やっぱ違うよね!良かった……)

潔白を主張……確かにそういう見方も出来るのか。


「私だって貴重な休日を奪われてるんだから。終わらせるんだったら早いうちに済ませましょう」


「……すまん。確かにお前が一番の被害者だったな……」

「ご……ごめんね。蜜柑ちゃん」


揃って謝る俺たちを尻目に梅森は改札口を指差す。

「気にしないで。どうせなら3人で楽しみましょう」

(むしろ井口君と一緒に入れて、その上抜け駆けを防げるから私には利益しかないんだけどね……!)


その声を聴いて、少し安心した。

どうやら梅森は思いの外この状況を楽しみにしているようだ。

微妙におかしい事も言ってるけど気にしないでおこう。

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