連鎖
本編最終章開始です。
この章が終了後、エピローグを入れて完結とさせていただきます。
そこは、黒くて狭い場所だった。
前後左右上下、どこもかしこも黒くて暗い。いつか見た夢の場所。
けれど今回は、黒く暗い空間にも関わらず薄っすらと周囲の様子が見回せた。
黒い空間の中で、自身の輪郭だけが白く光っている。
そこは、広くない四角の部屋だった。扉も窓もない、ただの直方体の空間。
そのなにも無い中心に、トオルは立ち尽くしている。
黒く同化しているはずなのに、なぜかそこにあると分かる壁に触れてみようと一歩踏み出す。すると、足元でじゃりっと音がした。
なにも無いはずの空間内で鳴った音に、無意識に視線を落とす。
床は、なにかの破片が足の踏み場もないほどに散らばっていた。
どうして気付かなかったのか不思議に思うほどの量。反射する光が無いはずなのに、破片が輝く。
そして、トオルの足から流れる血だまり。血。血?
これは、本当にトオルの足から流れているものだろうか?
以前の夢と違い、痛みもない。それに足から流れたにしては、明らかに量が多かった。
破片が浸り、浮き上がる程の量。足の小指が液体に埋まるほどの量。
姿を消した、以前の夢で見かけたはずのゴブレット。その代わりのように散らばった破片。
あの中に入っていたのは、果たして何だったのか。
どろりとした、冷たい闇に体が沈む。黒い影。同化して、融解して、混ざって、溶けて。
そうしてなにも無くなれば、少しは変わっていたのだろうか?
もう、どうでもいいことだけれども。
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