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「そんなもの、優しさなんかじゃない! ただの独り善がりじゃないか! 勝手に決めつけて、納得して、背負って、バカじゃねぇの!」
トオルと宏人は、半吸血人間と異端性吸血人間という違いはあるものの同じ吸血人間だった。彼らの言葉を使うなら、同胞だったのだ。
勿論同胞だからといって、言えないことはあるだろう。家族や親友でも何でもかんでも話せるわけではない。それは当たり前だ。
だけどこの件に関して、宏人には隠してほしくなかった。少なくともトオルにとっては唯一の吸血人間仲間で、唯一同じ世界を見られる相手だったのに。
吸血人間としての情報を隠すということは、それは宏人から見てトオルは同等の存在ではないと言っているようなものではないか。
「確かに俺に言ってもどうにもならなかっただろうけど! 何も出来ず結局同じことになってたかもしれないけど! それでも俺は言ってほしかったし教えてほしかった!」
無知は罪だと人は言う。けれど、こんな罪があっていいのだろうか?
宏人はトオルに罪の意識を持っていた。だから宏人にとってトオルは同等ではなく、自分より尊重しなくてはならない相手だった。
そしてトオルは宏人を慕っていて、宏人しか頼れない状態だった。トオルにとって宏人は唯一の仲間で、頼れる大人。
どちらも無意識下で同等ではなく、相手を大事に思っていたからこそ、相手の気持ちを考えられなかった。察せられなかった。
お互いに知りようがなかったが、知る方法がなかったわけではない。一つ視点を変えれば気付けたはずのもの。
無知が罪と言うのなら。ならばこれは、知ろうとしなかった互いへの罰だとでも言うのだろうか。
「言っ、て……そうだ、してほし、かっ……なんで、宏人さん!」
ボロボロと熱いものが目尻から流れる。息が詰まって、訴えたい言葉があるのに、声に出せない。
膝が震えて、立っていられずにその場に座り込む。掴まれたままだった手に縋りながら、ぐちゃぐちゃな頭を抱えて蹲った。
悲しい。寂しい。苦しい。辛い。悔しい。あとは、なんだろう。
濁流のように押し寄せる感情の、治め方が分からなかった。
「トオル君。君はヒロのこと、大切に思ってくれてたんだね」
「う、うぅ……」
「じゃあ質問を変えよう。その独り善がりで自分勝手な行動を受けて、トオル君はどうしたい?」
「おれ、は……」
どうしたいか?
どうしたいとは、どういうことだ?
だって宏人はもう亡くなっていて、何をどうしても生き返りなどしなくて。
そもそも宏人に怒ってはいても、トオルは宏人を憎んでも恨んでもいないのに。
トオルが憎んでいるのは……
「……ああ、そっか」
「決められた?」
「はい。俺は……」
掴んだままだったディザストロの手を借りて立ち上がり、真っ直ぐに宏人の遺体へ視線を向ける。
それを見ているだけで、心に恐怖のような苦しさが圧となって圧し掛かる。けれどもう、目線を逸らすことはしなかった。
愉快そうに嗤うディザストロが、歌うような調子で続きを促す。
「俺は、復讐します」
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