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半吸血人間  作者: 華穂
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 じゃあね。次に僕と会うまでは生きていてよ。


 そう言い残し、ディロは宏人の家に着いた車から降りてどこかへ行ってしまった。

 ディザストロがどこを拠点としているのか、そもそも拠点があるのか、宏人は知らない。興味が全くと言って良いほど無いのだ。

 ばたんと音を立て、玄関の扉を閉める。肺の空気を全て吐き出すかのような深い溜息を吐いた宏人は、そのまま寝室へ行きベッドへ倒れ込んだ。


 今日は一日で沢山のことがありすぎた。なにより吐血をしたことで貧血を起こしており、軽い眩暈が今更のように宏人を襲う。

 深い、深い息を吐く。喉の奥が熱くて、苦い鉄の味が口内に広がった。

 苦くつんと鼻を突く錆びた臭い。自然と表情が険しくなり、とても何度も味わいたいとは思えない。

 トオルは以前、血液はとても甘いものだと言っていた。しつこく残る甘ったるさではなく、陶酔してしまうような、クセになる甘さ。

 ディザストロも、甘い血の匂いと言っていたのを覚えている。

 同じ吸血人間、吸血鬼だというのに、この差は一体何なのか。


 ……いや、本当は分かっている。血は不味い。これは“人間の味覚”を持っているのだから、美味しいと感じなくて当然だ。

 では何故、同じ“人間の味覚”を持っているはずのトオルには甘く感じるのか? これは宏人の憶測だが、先天的か後天的かの違いだろう。

 覚醒したのは数年後とはいえ、生まれた時から吸血鬼の細胞を有していた宏人。そんな宏人にとって、血液は欲しくなければ摂らなくても良いというものではなかった。

 食事や睡眠と同じく、摂らなければ生きていけないもの。絶対的な欲求。

 一方で、後から半吸血人間として突然変化したトオルの場合、血液は必ずしも摂らなければいけないものではない。先程も言ったが、摂らなければ死の可能性もあるが人間に戻るだけ。

 しかしそうするにはとんでもない苦痛を伴ってしまう。

 故に宏人の見解としては、自己防衛による味覚の改竄か、吸血人間としての上書き能力による麻痺。あるいはその相乗効果ではないか。そう、判断していた。


「……一週間、か」


 ふと、ディザストロに言われた言葉を思い出す。正確には一週間保たないだろう、だったが。

 決めなければならない。何を遺し、何を成すか。時間はもうほとんど無く、下手したら明日には死んでしまっているかもしれないのだ。

 脳裏に過ぎるのはトオルのこと。自分のせいで半吸血人間になってしまった、自分という加害者の被害者。

 何ができるかなど分からないが、残された時間は彼のために使うべきだろう。それが加害者としての責任だ。


 トオルは今、何をしているのだろうか。何を考えているのだろうか。

 きっと今日のことを考え、自惚れでなければ宏人の寿命についても少しは考えてくれていると思う。

 宏人はトオルに、この一週間という寿命を伝える気はなかった。

 ただでさえ修学旅行中に何かがあったようなのに、畳みかけるような今日の出来事。これ以上、あの子供を追い込む必要はない。





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