やり残し
セリフが多いです。
苦手な人は回れ右で(笑)
「ねえ、そこから落ちたら凄い痛いと思うよ」
「えっ?うわっ!危ねぇ」
橋の手すりから身を乗り出していたオレは、突然掛けられた声に驚き、落ちる寸前で慌てて手すりから離れた。
ビュオーッ
突風が吹き赤い赤い風船が飛んでいく。
「くそっ飛んで行っちまった」
「えっ?お前、あれ取ろうとしてたの?」
クスクスと笑いながらそう言われ、オレは少しイラつきながら、
「そうだよ悪いか?そこのガキが・・・何か居ねぇけど、取ってくれって頼んできたから取ろうとしたんだよ」
と言い、声の主の方を向いた。
「って、あんた成仏したんだよな?何で居るんだよ!」
「また来るって言ったじゃん!」
「言ったじゃん!ってオッサンが言っても可愛くないっての!」
「オッサンじゃないもん!」
「バカくさーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!」
この変なやり取りからオレ(17歳)と先生(享年32歳)のバカバカしい話しはまた始まるのだった。
「青春してるね!」
「何だよそれ」
「良かった元気そうで」
先生はそう言うと満面の笑みでオレの頭をバフバフ叩いた。
「ガキ扱いすんな!」
そう言いその手を振り払うと、先生は少し寂しそうな顔で手を引っ込めた。
「その手足、義肢に見えないね」
タバコを咥えながら先生は言い、オレの両足と利き腕を興味津々な顔で見てきた。
「最先端の義肢だからな」
「お前がドヤ顔してどうするよ」
ケラケラと笑い、先生は咥えたタバコに火をつけた。
「自慢の義肢なんだからドヤ顔位させろ!」
「良いよぉ」
そう言う先生の顔は嬉しそうだった。
「リハビリ大変だっただろう?」
「それは仕方ねぇよ」
「俺なら無理だな」
「あんた、根性無いもんな」
「うん」
「否定しないのかよ」
「うん」
先生はフーッとタバコの煙を吐くと、
「誰も居ないねぇ。車も通らない」
と言い、首を傾げた。
「首傾げても可愛くない・・・って、マジだ」
いつもなら人も車も通っている筈の橋の上、何故か2人しか居ない状況にオレは慌てた。
「慌ててもどうもならないよ」
「そうだけど・・・」
「変な所小心者だよね」
「うるせぇ」
「その内きっと戻るよ」
「その自信、何処から来てるんだよ」
「何処だろね?」
「あんたも、何処から来たんだよ」
「天国!」
「どんな所?」
「うーん・・・・・・・・・教えない!」
「なんだよそれ」
「来たくなったら嫌だから」
「そんなに良い所なのか?」
「だから、教えないって」
「まだ行かねぇよ」
「なら良いけど」
そう言った先生の顔は少し泣きそうに見えた。
「まだやりたい事あるからな」
「そうだね」
「あんたは無かったのか?やり残した事」
「・・・いーっぱいあったよ」
「だからこっち来てるのか?」
「どうかな?」
「まだ間に合うと思うか?」
「何が?」
「やり残した事を叶える事だよ!」
「でも、俺は死人だし」
「そんなのやってみないと分からないだろ!オレが手伝ってやる!」
「えっ?良いの?」
「ま、あれだ、恩返し的なやつだよ」
「ヤッター!」
先生はそう叫ぶと、嬉しそうにピョンピョンと飛び跳ねた。
ガキみたいだな。思ったけど口には出さなかった。
「何をやってもらおうかな?」
嬉しそうな先生の後ろから、夕日が沈みかけているのが見えた。
「次、次来る時までに考えとくから、約束守ってよ!」
「了!(笑)」
「それじゃあまたね」
ビュオーッ
突風に目を閉じて、再び開けるとそこに先生は居なかった。
ブロロロロ
いつの間にか車や人々が姿を現し、いつもの風景が戻っていた。
また来るのか。
オレは何故か先生との再会を少し楽しみに思いながら帰路についたのだった。
はじめましての方もそうでない方も、ここまで読んで下さりありがとうございます┏〇゛
久々の新作で、自分ではお気に入りのスマイルの続編です。
見切り発車ですが、ワクワクしながら書いてます。
前作よりも面白く出来ると嬉しいです。
駄作にならない様に頑張ります(๑•̀ㅂ•́)و✧(笑)
それでは、また次の作品でお会い?しましょう(*´ ³ `)ノ