格闘
「待ってろ!」警察官は本をそばにあった机に置いたまま懐中電灯を付けて慌てて飛び出した。
(くそ!扉さえ開けば機会を見て黒い本を取り返し、俺一人で逃げるつもりだったのに!)セロは思った。
部屋の中は真っ暗になった。
「もしかして、私達を救出しに来た仲間かな!?」と鈴鹿。
「絶対ないでしょ・・・でも、もしかしたら騒ぎに紛れて脱獄できるかもしれないけどね。」と星羅。
「罪が重くなっちゃうけどね。」と静。
「どうせ釈放されそうにはないから、これ以上悪くなることはないよね。」星羅は笑顔で言った。
警官たちがこちらに来る足音がするとセロは自分の手で自分の首を絞め始めた。
(最初の計画はうまくいかなかったが、本が目の前にある今を逃せばもう機会はないだろう。一か八かだ・・・)
ショットガンで武装した先ほどの警察官と右手にピストルと左手に三人分の手錠を持っている警察官が牢のカギを開け入ってきた。
「ここは危険だ!移動する。尋問はあとだ!」
「手錠をかけるから、床に伏せてろ!」ピストルを右手で構えながら警察官は言った。
「うえ・・・!」
「!?」警察官達は声のする方にライトを向けると真っ青でいまにも倒れそうなセロが見えた。
「大丈夫か!?」ピストルを所持している警察官がセロに駆け付けた瞬間、セロは警察官のピストルを持っている右手首を左手で掴み、銃口を体に逸らすように引いた。
「!?」警察官が前によろめいた瞬間、セロは右手でピストルを掴む同時に親指でハンマー(後ろの出っ張っている部分)を塞いだ同時に、警察官はトリガーを引いたが、ハンマーが塞がれていたため銃弾は出てこなかった。
セロはそのままピストルを警察官の胸部に方に向け、親指を上げた瞬間、鼓膜がいたくなるような銃声が部屋中に響いた。
「グッ!!?」警察官が手を緩めた瞬間、ピストルを取り上げ、ショットガンを構えて顔が引きつっている警察官の方を向いた。
(くそ!!今撃ったら仲間に当たる!しかし、倒れた所を狙えば!)警察官はショットガンの銃口をセロの方に向けていた。
セロは胸部を被弾した警察官に抱き付き、ピストルを所持している右手を前に出した。
「!?」警察官はピストルの存在に気が付き、トリガーを引こうとした
一発の銃声が響いた瞬間に、ショットガンを所持していた警察官は壁にもたれ掛かるように倒れた。
セロはそのままドアの方に銃口を向けた。
(足音も騒ぎ声が聞こえない・・・外の騒ぎのせいか?)セロは抱き付いていた警察官の口の中にピストルを突き入れて、トリガーを引いた。
銃声と共に警察官は力なく倒れた。
「す、凄い!!かっこいい!!」鈴鹿は歓喜の声を上げた。
「・・・脈なし!即死だね!」静は口から出血している警察官の頸動脈に触れて言った。
「あの一瞬で・・・」星羅はショットガンを装備していた警察官に近づいた。
「・・・」(あれ?何でこいつらこんなに冷静なんだ?)セロは思った。
「あ、ああ・・・」ショットガンを装備していた警察官がうめき声を上げた。
「えっ!?ヘッドショットなのに生きてる!?」星羅は驚いた。
「死なないよ!前頭葉は生命維持とは関係ないから!」静は叫んだ。
「へえ・・・そんな事があるんだ!」
「・・・」(何なんだ!?こいつらの反応?普通は怯えたり、泣いたりして震えるはず・・・)セロは思った。
「だったら、止め刺さないとね。」星羅は警察官の顔を靴で勢いおく何度も踏みつけた。
「!!?」セロは星羅の突然の行動に動揺を隠せなかった。
「これが・・・レミントンⅯ870か・・・重っ!?」鈴鹿はショットガンを持ち上げていた。
「流石本物・・・モデルガンとは全然違う!」鈴鹿はグリップ(握るところ)を肩にしっかり当てて穂もしっかり付けてドアの方に銃口を向けた。
星羅は警察官が糸の切れた人形のように動かなくなったのを確認した。
セロは部屋を出て机の上にある本を取り上げ、ビニール袋を捨てて本を開いた。
「・・・」セロはページを急いで開き続けた。
「ふざけるな!何も書いてないぞ!これをどうすればいいんだ!?」セロは本を揺らした。
「え!?何も書いていないの!?」静は驚いた。
「えっ!帰れないの!?」鈴鹿も驚いた。
「くそ!」セロは本を床に叩きつけた。
「何か条件があるんじゃないの?」星羅は本を拾い、開いた。
「条件!?なんだそれは!?」セロは怒鳴った。
「さあ?適当に言っただけだけど?」
「・・・」
「とりあえず、ここから出た方がよくない?元の世界に戻れなかったとしてもここにいるよりはましだし。」と星羅。
「そうだな・・・今から作戦を言う!」
(こいつら腰を抜かして動けなくなると思ったのに、一人で逃げる予定は変更だな。こいつらは銃器にも詳しくやたらとグロに耐性があるようだ。使えそうだ・・・しかし、いったい何者なんだ?)セロは思った。




