月に嘆いて(1/2)
「いってらっしゃい」
私はそう言っていつも戦場に行く傭兵たちを送りだすことにしている。そして帰ってきたら「お帰りなさい」といって出迎えるのだ。「ただいま」という言葉が私の一番好きな言葉。
今日も私は戦場へ行くカームたちを見送る。私は戦えないから、こうやって後ろ姿を眺めることしかできない。そう言う意味ではカームと並んで戦えるトオラがうらやましくもある。
「さて!今日も頑張るぞ!」
見送りが終わって私は小さく拳を突き上げた。
私は晴天傭兵団という傭兵団に所属している15歳の恋する女の子だ。恋する、というと恥ずかしいけれど事実なのだからしょうがない。この恋心を抱いてからかれこれもう4年になる。
だけどそれは後回し。皆が戦場に行っている間にもしなきゃいけないことはたくさんある。
「ああ、ルリさん。今日も精が出ますね」
「ロイさん」
私が皿の洗い場に行くと、そこではすでに副団長のロイさんが皿洗いを始めていた。
「私が全部するのに⋯⋯」
「構いませんよ。もう前に出て戦える齢でもありませんからね。こうして動いている方が気は楽なんです」
ロイさんはいつも笑みを絶やさない白髪の好々爺然とした人だ。10年くらい前までは傭兵として戦場に行っていたけれど、齢をとったことを理由に引退して今は私のような後方支援に回っている。でも後方支援と言ってもロイさんの仕事の多くは団長である父の補助だから、こうしたこまごまとした仕事は私に任せてほしいという思いもある。
「そうですか。きつかったら言ってくださいね」
「ええ。そうさせてもらいますよ」
にっこり笑うロイさんだけど、きつさを訴えることはないだろう。彼の腰には使いこまれた片手剣がある。戦場で長い時間戦うことはできないけれど、短い時間なら戦えるからと言って彼は剣を手放さない。時々訓練を行っているところを見たことがある。皿洗いよりも本当は戦場に行きたいのだろうかと思う。そんな人が皿洗いごときで音を上げるわけがない。
「ところで今回の戦場はどんなものなんですか?」
「そうですね⋯⋯。悪い戦場ではありませんよ」
ロイさんは長年傭兵をやってきた経験と、父と一緒に大陸全体の情勢を見ることが多いから、広い目で戦場を見ることができる。だから私はいつもロイさんからそんな情報を聞くことにしている。
「小国というにはいささか大きな国ですが、国力、兵力ともに互角。しかし向こうの国はどうやら傭兵の価値をあまり理解していないように見える。話を聞いていても敵国が傭兵を出してきたという話は聞いたことがありません」
「そうですか」
戦場に行く戦士は二種類に分けることができる。国の兵士と傭兵だ。国の兵士は国民から、たまに属国の国民から選出される。徴兵か志願かの違いはあれど上等な装備を身にまとい、国を守るために剣を取る。対する傭兵は国を守るためではなく、金のために剣を取る。多くの傭兵は正規兵よりも安い装備を身にまとってはいるけど、戦闘を生業としているから正規兵よりも強い。だから国家間で戦争をする際は正規兵だけではなく、少数でも傭兵を入れておく方がいいと言われている。お父さんの受け売りだ。
私は皿をふきながら与えられた土地の周りを見渡す。広い駐屯地には私達晴天傭兵団以外にもいくつかの傭兵団の姿が見える。私達を雇っている国は多少金がかかっても傭兵を多く雇い入れる方針のようだ。
「それに傭兵は国からしてみれば使い捨てやすい存在ですからね」
「それは⋯⋯」
にこやかなままに毒を吐くロイさんに私は口ごもる。ロイさんの言うことも間違ってはいない。むしろ自国の兵士を減らしたくないあまりに傭兵を雇うような国もたくさんある。父は傭兵をそういう風に使い捨てる国を避けるようにしているけれど、時々当たってしまうこともある。そういう時、私は不安で一日気が気でならない。
「ああ、すみません。口が過ぎました」
私の顔が曇っているのが分かったのだろう。慌てた様子でロイさんが言葉を重ねた。
「いえ、大丈夫です。傭兵がどのように思われているかはよく理解しているつもりですから」
私は最後の皿を洗い終えて桶に積む。そして眉を八の字にしたロイさんに笑いかけた。
傭兵たちが戦場で剣を振っている間に、私たち後方支援の女たちは掃除、洗濯、料理の準備、皿洗いに武器の整理や怪我人の看病と忙しい。言ってしまえば雑用だが20人以上の傭兵たちの家事を女3人でこなすのは中々大変だ。私以外の二人の女もせわしなく働いている。これで夜の仕事も時折こなすのだからすごいと思う。
私の母も後方支援の人員として傭兵団に入って父と恋仲になったらしい。結婚適齢期は大体15歳から20歳の間だけれど、二人が出会った頃はお互い30歳になったくらいだったそうだ。父は戦争に明け暮れて婚期を逃し、母も大層気が強い人だったそうで、嫁の貰い手がいなかったそうだ。それで傭兵団に入ったのだから色々と頭の下がる思いである。
そんな気の強い母だったからなのか、彼女は当時『無双の傭兵王』として名を馳せていた父に惚れたらしい。それから戦うことにしか興味のなかった父を口説きに口説き落として恋仲になったのだという。そんな母のことを父は深く愛したそうだ。
しかしそんな母と私は会ったことがない。母は私を生む時に死んでしまった。大変な難産だったそうで、母か子かどちらかしか助からないと産婆に言われたそうだ。それで母は迷うことなく自分を犠牲にしてでも私を取り上げてほしいと言ったらしい。父は生まれたばかりの私を抱き上げながら大粒の涙を流したそうだ。
「へぇ。随分と可愛い嬢ちゃんじゃねぇか。今夜俺と遊ばない?」
きっとこんな傭兵がいるから傭兵がよく思われないのだ。私が洗濯物を干していると、いかにも粗野な風貌の男が声をかけてきた。多分傭兵。だけど戦争をしている最中に駐屯地にいることからして色々お察しだ。
「お断りします」
「連れねぇなぁ。俺、今まで女を満足させられなかったことなんて一度もないんだぜ?」
無意味な自信が鼻につく。男の目は私の足、胸、顔と舐めるように行き来している。それに酒臭い。こういう風に絡まれることが最近増えた。しかめっ面をしていると男が私の肩を不作法につかもうとした
「恥ずかしがんなよ」
カチンと来た。私は男の手をスッとかわす。男はそれに苛立ったのか声を荒げてきた。
「てめぇ。俺が丁寧に誘ってるからって調子に乗りやがって!」
大きな声を出せばいいなりになると思っているのだろうか。男は腰にある剣に手をかける。まさか抜くつもりだろうか。だとすれば危険だ。
男の方が。
「ほう。調子に乗っているのはどちらだろうな」
「あ?なんだ今俺はこのお⋯⋯んなと話⋯⋯て」
男の声は振り返りながらだんだんと小さくなっていった。がっしりと男の手を丸太のように大きな腕がつかむ。男の真後ろには見上げんばかりの大男が立っていた。父だ。
「貴様は、俺の、大切な、娘と、どんな、話を、していたの、かな?」
父の顔は光の影になってよく見えない。父は男に言い聞かせるようにゆっくりと、言葉を区切りながら話しているが、父から発せられる怒気によって男はすでに気を失っていた。
「大丈夫だったか?触られたりしてないか?」
「大丈夫だよ。お父さん」
男を放り投げて父は私の心配をする。いつものことだ。父は母を失った反動からか、傭兵団以外の男が近づくことを許さない。例え相手が誠実そうな男でも同様だ。何度か傭兵団に入りたての男にも父は殴り飛ばしたことがある。
私の返事を聞いて父はほぅと息を吐いた。その傍らには女衆の一人がいる。どうやら私が変な男に絡まれていると父に教えたのは彼女のようだ。
「洗濯は私がやっておくから、ルリちゃんは奥で休みなよ」
「いやそれは⋯⋯はい。わかりました」
有無を言わさぬ調子の彼女に私はうなずいて答えた。
「しかし最近本当によくルリは馬の骨に絡まれるな」
「本当にね」
栗色の髪にくりくりした蒲公英色の瞳。ちょっと背丈は大きいけど、包容力がありそうな体つき。私はよく可愛らしい、なんて言われることがある。気が弱そうとも。この場合気が弱そうというところが大切なのだろう。ちょっと押せばすぐに言うことを聞きそうな顔というのは、何かと欲の強い傭兵の中で暮らすにはいささか不便だ。
「一応、言っておくが俺はお前を馬の骨と結婚させるつもりはない」
「うん」
それはよく知っている。私だってそんな人と結婚するなんて死んでもごめんだ。
「だが結婚すること自体を反対するつもりはない」
「⋯⋯うん」
もしかしたら父が死ぬまで一生結婚できないのではと思っていた私にとって、この一言は少し意外だった。
「かといって齢の離れた野郎とくっつけるつもりもない」
「うん?」
もしかして父の中では私を誰と結婚させるのか決まっているのか?
「候補としてはトオラかカームだな」
じっと父は私の表情を伺っている。その視線に耐え兼ねて、私はそっと目を逸らした。
「トオラと結婚すると何かと大変そうだよね」
目を逸らしながらもそっと言い添える。トオラは顔がいい。燃えるように赤い髪と黄金色に輝く瞳。それでいて腕も立つから女が放っておかない。さっきの男と違って女の方から声をかけていくのだ。
だけど私が言いたいことはそこじゃない。トオラはとても陽気で明るい性格、であるように自分を偽っている。かといって悪人というわけでもない。本当の彼は打算的で、だけどものすごく仲間思いの人だ。道化として傭兵団の空気を明るくすることに彼は執念を燃やしている。だからこそ、彼のお嫁さんになる人は苦労しそうだ。
ちなみにトオラの擬態に気づいているのは私と父、後はロイさんとアウィスさんくらいだろう。彼と一番仲のいいカームは気づいていないようだ。
「カーム」
私がカームのことを考えていると、父がカームの名前を出した。顔が熱い。きっと私の顔は真赤になっていることだろう。
「やっぱり、か」
「⋯⋯気づいてたの?」
「当然だろう」
伏し目がちに聞くと、父は腕組みしてうなずいた。
「何年ルリのことを見てきたと思っている」
「あはは」
私はカームのことが好きだ。愛していると言ってもいい。だけどそのことを大っぴらに言うのは恥ずかしいから話を変えることにする。このままだと顔から火が出てきそうだ。
「そういえばさ、お父さん。この戦争は勝てそう?」
「ん?そうだな。⋯⋯分からない」
おや。いつもは勝てそうか負けそうかきっぱり教えてくれるのに、今回に限ってはお茶を濁した。
「どうして?ロイさんは⋯⋯」
「ああ、敵国が傭兵を使っていないという話だろう。ロイは敵が単純に傭兵のことを軽視していると見ているが、俺の考えは少し違うんだ」
「違うの?」
「ああ。両国とも国力、つまり持っている金の量は同じで、他と戦争をしているわけでもない。だというのに、だ」
「こっちは傭兵を一杯雇っていて、向こうは全然雇っていないなら、その分のお金はどこにあるのかってこと?」
「そういうことだ」
そう言われると確かにおかしい。
「もちろん、ロイの言うことも一理あるんだ。傭兵のことを軽く見ている。自国の兵士だけの方が統率を取りやすい。金をケチっている。傭兵を使わない理由なんていくらでも言える。だからこれは俺の勘だな」
「そっか」
そんなことを話していると、外がざわついてきた。どうやら戦争が終わって皆が帰ってきたらしい。
「私はそろそろ」
「ああ」
そう言って私は怪我をして帰ってきたであろう傭兵たちのところへ駆ける。「お帰りなさい」を言うために。
幸いなことに傭兵団の皆は誰も大怪我することなく帰って来てくれた。それでも小さな怪我をしている人はいるからその人たちに包帯を巻いて、時には治癒の異能を使う。
私は異能者だ。法則を学び、理性の力で精神力を魔法に変える魔法使いと違って、私は感情の力で精神力を異能に変える異能者。異能者には先天的に授かっている人、後天的に授かる人がいるけれど、私の異能は生まれつきだ。この異能を生まれた瞬間から使いこなすことができていたら、母のことも助けられたのではないかと思わないこともない。昔それを父に言ったら怒られたけれど。
「でも帰り際に転んで怪我するなんて、トオラはおっちょこちょいだね」
「はっはっは!実はそうなのだよ!」
顔面を大きく擦りむいたトオラに治癒の異能を使う。私がトオラの顔に手をかざすと、柔らかな光がトオラの顔を包む。10秒ほどで光が消え、トオラの怪我は傷一つ残らず治っていた。
そういえば、私が治癒の異能を生まれつき持っているように、トオラも発火の異能を生まれつき持っている。先天的に異能を持っている人はその人の本質が現れるというけれど、どうしてトオラは発火の異能なのだろうか。トオラは陽気にふるまってこそいるが、その実冷静で理知的。「発火」の異能にそぐわない。
「ありがとう!では俺はカームと飯を食べてくることにするよ!」
高らかに笑いながらトオラは食堂の方向に向かって行った。そんなトオラに軽く手を振って、私はクルリと怪我人の数を見渡す。自分で手当てをしている人もいるから、私が手当てをしなきゃいけないのは後一人か二人。これならカームと一緒にご飯を食べるこができそうだ。
ぎゅっと拳を握って腕を切られた傭兵のところに向かう。
「お帰りなさい。カーム」
「ただいま。ルリ」
手当を終えて私が食堂に向かうと、カームはまだご飯を食べている最中だった。食事の手を止めてカームは私に微笑みかけてくれる。父との会話を思い出して、かすかに顔が熱くなったけれど、蝋燭の明かりのおかげでそうだとばれないはずだ。⋯⋯ばれないよね。
私も食事をもらってカームの隣に座りご飯を食べ始める。カームの右隣がトオラで、左隣が私。この席順は私がカームに恋心を抱いた時から変わっていない。
実を言えば私は最初、カームのことが怖かった。仕事の代わりに父が連れ返ってきた少年。もしや父の隠し子かと傭兵団の皆が騒ぎ、父の拳骨が何度も炸裂していたことは今でも良く覚えている。
同い年だから仲良くしてくれと父に言われたけれど、私は遠くからカームのことを見るばかりで近づこうとはしなかった。
だって初めてあった時のカームは穴空きの服を着て、全身が薄汚れていた。それにひどくくたびれた様子で、せわしなく傭兵団の皆のことを見ていた。私は父に半ば箱入りのように育てられたから、傭兵のように荒々しい雰囲気の人には慣れていたけれど、スラムにいるようなすさんだ人には慣れていなかった。住み慣れた傭兵団になんだかとんでもない奴が入ってきたぞと思ったのだ。
今になってみればカームが汚れていたのはスラムにいたからで、くたびれた様子だったのは直前に大事な弟分が亡くしていたからということが分かる。せわしなく傭兵団を見回していたのも、スラムでは本当に危険な人を見極めていかないと生きていけなかったからだと分かる。でもそんなこと当時の私が知る由もなかった。そんなこんなで一か月が経ち、カームは随分と身ぎれいになって表情の固さも随分とほぐれていたけど、私は変わらずカームのことを避けていた。
カームは取り立ててかっこいいと言える外見ではないと思う。トオラというとんでもない比較対象が隣にいたからかもしれないけれど、どんなにひいき目に見たとしても中の上くらいだ。夜空みたいな髪の色と灰色の透き通った目はきれいだと思うけど、それだけ。荒んだところが薄れて、戦争に行かない日に私はカームと遊ぶことも増えたけれど、今みたいに好きとか愛とかそういう感情はなかった。
初めてカームが戦争に行った時もカームは平然とした顔で帰ってきた。初めて戦場に行った人は大抵ものすごく興奮しているか、怯えているかの二択なんだけど、カームはそのどちらとも違っていてちょっとだけ驚いた。トオラですら初めての戦争の後は顔に恐怖を浮かべていたから、人を殺すことに何のためらいも覚えないのかなと思ったこともある。
そんなカームに対する想いが変わったのはカームが傭兵団に入ってからちょうど一年が経ったくらいの頃だったと思う。その時は雇ってくれる国を探してあちこちを放浪している最中で、人を殺すこともなく荒れた山道を歩いていた。
『何をしているの?』
休憩時間の時、私は一人ぼぅとしているカームに声をかけた。カームの視線の先には木々が生い茂っているだけで、取り立てて何か面白いものがあるわけではなかったから不思議に思ったのだ。
『考え事』
私の質問に振り向くことなくカームはそう答えた。カームは私と話す時は必ず顔を向けて話すから、そんなカームの態度に少しびっくりした。そしてむっとした。
『何を考えているの?』
だから私はカームの隣に座ってこちらを向けさせてやろうと話を続けた。カームはやっぱり私の方を向かないままに話す。
『今まで僕が守れなかった人のこと、僕が殺した人のことを考えてた』
『えっ?』
『僕が僕の命と同じくらいに大切だったアガラは僕がちょっと目を離した隙に殺された。僕は戦場に行って人を殺すけれど、その人たちを大事に思う人がいたのかもしれない』
私はずっとカームは人を殺すことにためらいのない人だと思っていたから、実はそんなことを考えていたのだと知って驚いた。人の命を何とも思っていないのかと。アガラという人が誰なのかは分からない。だけどカームにとって忘れられない人なのは分かった。
『それはもちろんこいつは弱そうだ、こいつは強そうだからやめておこうとは思いながら戦うよ。死にたくないし、僕は傭兵だから狙い目の兵士を探して殺す。僕は自分のために人を殺し続けているんだ』
『もしかして今まで殺した人のこと皆覚えているの?』
『まさか。そんなことできないよ。数も数えてない。ただ殺したんだなって思い続けて忘れないってだけ。⋯⋯ルースは僕に『命の尽きるその瞬間まで無くした命を抱いて生きていけ』って言ったんだ。だからこうやって僕は奪った命で生きているんだってことを思い出しているんだ。ただの自己満足だよ』
そう言ってカームは私の方を向いて、ちょっとだけ笑った。私の中でカームの立ち位置が変わったのはこの時だ。カームは何て純粋なのだろう、そしてとても心が強くて、弱いのだろうと思った。カームは自分の為してきたことを全て抱いて生きようとしている。捨てる強さもなくて、だけど捨てずに抱いていこうとするだけの強さがある。それがカームらしさで、どこまでも純粋だ。
彼のそんな強くも弱い在り方は私にとってまぶしくもあり、放ってはおけないと思わせるものだった。だからその日の夜、私は父の隣ではなく、カームの左隣に座って食べた。あの日以来私たちはずっと並んでご飯を食べている。
今ではカームも私も15歳。二人とも随分と大きくなったものだ。カームの外見は贔屓目に見ても中の上くらいだけど、黒に青を一滴落とした夜空のような髪とどこまでも透き通った灰色の瞳は変わらない。顔つきが凛々しくなり、体も出来上がって来てしなやかな体つきになったのが一番の変化だろう。背が中々伸びないのを気にしているらしい。そんな子どもっぽいところも好ましい。
「どうしたの?ぼーっとして」
「あ、ううん。何でもないの」
どうやら考え事をしすぎていたらしい。私は急いでご飯を食べ始めた。
明日後半を投稿します。よかったら見てね。