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空を仰いで(1/2)

初投稿です。よろしくお願いします。

 ある夜、僕は夢を見た。僕は12歳の子どもではなく40歳くらいの大人になっていて、髪の色もなぜか違う。だけど不思議とその人が僕であることは分かった。隣には知らない女の人が座っている。僕とその人はとても仲が良さそうで、その真ん中には小さな一人の女の子が座っていた。3人は夜空を見上げて煌めく星を眺めている。

夜空は黒に澄んだ青を一滴落としたような色をしていて、とてもきれいだ。どこまでも広がる夜空を彩る、無数の宝石のような星々もまた美しい。

『人は死んだら星になるんだ』

 大人になった僕が言う。

『星?』

 小さな女の子は僕を見上げる。不思議なことにその女の子の顔はぼやけてよく見えなかった。まるで誰かが「まだ見てはいけないよ」と言っているみたいに。

『そうだよ。人は皆この大地に生まれて、精一杯命を燃やす。生きていく中で楽しいことも、嬉しいことも、辛いことも悲しいことも、きっとある。無力でちっぽけな僕たちは小さな手を伸ばして、短い足を必死に動かして、生きるんだ。生きて、生きて、生ききって。そして死んだら星になる。星になって、そんな風に頑張っている人たちを照らすんだ。そうして⋯⋯』

「⋯⋯ーム。カーム!」

『僕たちは⋯⋯』

「カーム!」

「うわっ!」

 寒い。ガバリと布団を引っぺがされた。僕がパチリと目を開けると、目の前には見慣れた黒髪黒目の浅黒い肌をした人がいる。

「ひどいよアウィス⋯⋯」

「ひどいもんかよ。もうお日様は昇っておはようしてんだ。お前もとっとと起きやがれ」

 アウィスはぶつくさ言いながらも口元は笑っている。珍しく寝坊助をした僕をからかうのが楽しいのだろう。僕は起き上がって伸びをする。眠っている時に固くなった筋肉がほぐれて気持ちがいい。これをするだけで背が伸びた気もするし。

「皆お前を待ってんだよ。ところで昨日は夜更かしでもしたのか?戦場行って興奮で眠れない新兵でもあるまいし」

「うん。えっと、あれ?」

 皆が待つ食堂に向かいながら、僕はアウィスにさっきまで見ていた夢の話をしようとした。だけど夢のことを思い出そうとしても、その夢で見た情景が遠くへ行ってしまう。何を見たのか、何を聞いたのか、僕はすっかり忘れてしまった。

「なんだか不思議な夢を見ていた気がするんだけど」

「夢?夢見てたら寝坊したって、そりゃ言い訳にもなんねぇよ」

 言われてみればその通りだ。ククッと笑うアウィスに、僕も笑ってごまかした。


「おはようございます」

「おう。今日はカームが最後か。珍しいな」

 食堂ではすでに皆は食べ始めていた。食堂と言っても木製の古い長机と椅子を置いた所の上に、雨避けの厚手の布をかぶせただけの簡単な造りだ。それでも野ざらしの上で食べるよりはずっといい。

「団長聞いてくださいよ。カームはなんと寝坊の言い訳に⋯⋯」

「ちょ⋯⋯っ!やめてアウィス!?」

 ニヤッと笑うアウィスの腰に抱き着く。12歳の僕は小柄で、いくら大柄ではないといっても中年のアウィスに力で勝てるはずがない。アウィスは僕の言い訳を皆に話してしまった。

「がっはっは!そりゃぁ面白い言い訳だ!寝坊の罰として飯を減らそうと思ったがやめておこう!」

 団長のルースが豪快な笑い声を上げると、他の団員達もにぎやかに笑い始める。

「もうっ!皆も笑わないで!」

「何を言うか!我ら晴天傭兵団の鉄の掟は『楽しいことがあったらとにかく笑え!』だ!辛いこと、悲しいことがあってもこうして笑えば気分は晴天だ!違うか?カーム」

 視線を一瞬別のところにやってルースは表情を和らげる。それで僕はハッとした。ルースが視線を向けた方にいるのはハイラという女の傭兵だ。そして彼女の恋人だったヘンデルは昨日戦場に行って、帰ってくることができなかった。ハイラも笑っているけれど、目じりに涙を浮かべていた。あれはきっと笑い過ぎで出てきた涙じゃない。

「そうですね。掟は、守らないと」

「そういうことだよ」

 そうして僕たちはひとしきり笑い続けた。


 笑い終わってようやく席につく。そこにコトリと固いパンと温かいジャガイモのスープが置かれた。

「ありがと。ルリ」

「どういたしまして」

 うっすら微笑みを返したのは団長の娘で僕と同い年のルリ。栗色の髪に蒲公英色のきれいな瞳。そして柔らかな微笑みが印象的な女の子だ。ルリは傭兵として戦場に行くことはないけれど、こうして僕たちを支えてくれている。

「はっはっは。ルリに感謝するといい。彼女は君が来るまでスープをつがなかったんだ。冷めるといけないからと言ってね」

「そうだったの?」

「もうっ!トオラ?それは恥ずかしいから言わないでって言ったじゃないの」

「何のことかな!」

 僕の隣で大きな笑い声を上げるのはトオラ。僕やルリよりも3歳年上の15歳。燃えるような赤髪と黄金色の瞳が特徴的で、顔の作りは怖いくらいに整っている。服装を変えれば貴族の舞踏会にいてもおかしくない外見だ。

「これだからトオラは⋯⋯」

「そう!それが俺なのさ!」

 だけど性格は見ての通り。終始陽気な態度を崩すことがなく、一度話し始めれば止まらない。貴族の舞踏会に行ったら引かれることは請負だ。

「むー。ほら!カームも食べて!」

「冷めるから?」

「トオラ?」

「ごめんなさい」

 一瞬ルリの背後に燃え盛るドラゴンが見えた。トオラはすぐさま椅子から地面に座り変え、頭を地面にこすりつける。その姿も変に様になっている。

「はぁ。もういいよトオラ。頭を上げて」

「そうか!いやぁすまなかったすまなかった」

 頭を上げたトオラの額には黒い土がついていた。赤い髪、黄金色の瞳に血色のいい白い肌。そして黒い土。そのアンバランスな滑稽さに、僕とルリはクスリと笑う。トオラはそれに気づかず首をかしげるのがまた面白い。こらえきれなくなって僕らは大笑いした。

「おぉ!?なんだなんだぁ!?」

 その声を聞きつけてルースがドシドシと歩み寄ってくる。ルースもトオラの顔を見て思いきり破顔した。

「がはは!これは傑作だ!皆ちょっとこっちに来い!」

「何ですかい団長⋯⋯ひぃははは!トオラお前その顔!」

「えぇ!俺の顔がどうなっていると言うんですか!」

 気づいているのか気づいていないのか、トオラは眉を八の字にして傭兵たちを見渡す。再び傭兵団の食堂に笑いが響いた。僕はふと、目をハイラの方に向ける。

「良かった」

 ハイラの目にはもう涙はなかった。彼女は心底楽しそうにお腹を抱えて笑っている。

「トオラ。顔、顔」

「ん?うわ!なんだこれ!」

 ルリの言葉でようやくトオラは額の汚れに気がつき袖でぬぐう。そしてルリとトオラは顔を見合わせて笑う。

(お似合いだよね)

 トオラはかっこいい。実際に話してみると、僕より年下なんじゃないの?って思うことがあるけれど、別の傭兵団の女傭兵がトオラに話しかけているのを見ることは珍しくない。ルリだって可愛い。華奢な体に抱えるくらいの優しさを詰め込んだようなあの子は、ルースが目を光らせていなければ、声をかける人は何人もいるだろう。まだ12歳と侮るなかれ。5年もすれば17歳。立派な結婚適齢期だ。

 お似合いの二人。そう思ったら心のどこかがチクリとした。晴天傭兵団で10代の子どもは僕とルリとトオラの三人。だけど僕がこの傭兵団に入ったのは2年前。ルリとトオラは傭兵団に育てられたから10年以上も一緒にいる。僕と二人の間にはどうしても埋められない溝がある。それを思って小さな、誰にも気づかれないくらいのため息をついた。


 僕たち晴天傭兵団は今、大陸の南部にある小国に雇われて敵対している隣国との戦争の手伝いをしている。大陸の上に人間は小さな国をいくつも作り、互いに争い合う。北部にある都市国家が火の海に沈んだ、中央で隆盛を誇っていた国が属国からの総攻撃で滅んだ、なんて話も珍しくない。毎年いくつもの小国や都市国家が生まれて、それと同じ数だけ毎年国が滅びる。それが人間という種が生まれてから今日まで続く変わらない現実だ。

 戦争ばっかりして馬鹿だな、とは思うけれどそのおかげで僕たちみたいな傭兵団は食べていける。空腹は辛いから、戦争そのものを否定することはできない。最も、戦争がなければ僕が傭兵になることもなかったのだけれど。

 今日は戦いがないそうだから暇だ。昨日の戦いでお互いの軍に大きな犠牲が出たらしい。大変なことだ。傭兵団だってヘンデルさんが命を落とした。

 傭兵団に割り当てられた土地はあまり広くない。雇い主の中には傭兵を厚遇するところもあれば冷遇するところもある。大切な戦力だからと上等なご飯と寝床を提供するところもあれば、所詮よそ者はぐれ者だと駐屯地の端っこで雑魚寝させられたこともある。アウィスが言うには、そういう国は長くはもたないのだという。傭兵は学がないから魔法が使える者こそ少ないけれど、色んな戦場を経験している。平地での戦い、山岳地帯での戦い、足場の悪い沼地や光の射さない暗闇での戦いまで。実際傭兵になって2年ぽっちの僕でもそうなのだ。ルースやアウィスみたいなベテランの傭兵ならなおさらだ。そしてそういう経験を積んだ傭兵は予想外の事態に強い。危機に陥った時に頼りになるのが戦闘のプロである傭兵だ。たっぷりと金を払って縁を結んでおけば、窮地を救ってくれる。そのことを理解していない国は滅びる、らしい。

 アウィスは元々、とある都市国家の兵士で、しかもその国はもうないというから彼の言葉には重みがあった。

「あれ?カーム暇してるの?」

 狭い駐屯地をフラフラしていると、ルリに声をかけられた。

「うん。ルリは?」

「私は手当てに使う包帯とか薬草を洗ってたの。カームも手伝って?」

 ルリの手元には血のついた包帯や土のついた薬草が山のように積まれていた。首をコテンと傾けてお願いするルリに、僕は苦笑する。

「いいよ。暇だったから」

 ルリと一緒にいられるし、という言葉は飲みこんだ。

 ワシャワシャと包帯の血を落とす。薬草はどこから取ってきたのかと聞くと、「近くの山から取ってきた」という返事をもらった。

「危ないよ。山に敵兵が潜んでいるかもしれない」

 今僕らのいる戦場は二つの山の中央の麓部分に当たるような場所だ。戦争をしている二つの国はその山で領地の大部分を分断されているけれど、僕らのいる一部分だけ平らな土地になっている。

「大丈夫だよ。ロイさんにもついてきてもらったし」

「ならいいけど」

 ロイさんは戦場に出ることを止め、裏方に回ることにした元傭兵だ。引退したと言っても齢はまだ50歳くらいで、戦おうと思えば戦える。傭兵団でも副団長を務めているし、大変な時には剣を取って戦う。魔法も使える頼りになる人だ。

 ワシャワシャ。ワシャワシャ。しばらくだんまりの時間が続く。気まずくなって僕は口を開いた。

「ルリは治癒の異能が使えるよね。なのにどうして包帯とか、薬草も使うの?」

 この世界には二つの超常の力がある。一つは魔法。そしてもう一つは異能と呼ばれるものだ。魔法は精神力を理性と知識で超常の力にする。小難しい勉強と知識が必要になるけど、勉強さえすれば誰にでも使えるようになる。対する異能は感情で精神力を超常の力にする。異能は完璧に才能に寄っていて、先天的に持っている、後天的に授かるという違いはあるけれど、手に入らない人は絶対に手に入れることができないのだという。

 総じて異能は魔法より強力だ。欲しい力が手に入るわけではないし、手に入れたとしてもその力は一つ。でも魔法と違って詠唱や魔法陣、触媒なんてものを一切必要とせず、すぐに使える異能者はどこに行っても重宝される。ちなみに僕は学がないから魔法は使えないし、異能も発現していない。

「異能は確かに便利だけどね」

 僕の質問にルリは少し困ったような笑みを浮かべる。

「無制限に使えるわけじゃないから。私だと重症の人がいたらその人を治すだけでもう限界がきちゃう。軽い怪我でも5,6人見たら疲れて異能が使えなくなる。だから一人でも多くの人を助けるために、軽い傷の人には包帯とか薬草を使うの。それに傷の治し方を知っていると、異能も使うときの負担が減るからね」

「そうなんだ」

 手を休めることのないまま、ポツリポツリと会話をする。何気ない時間だけれど不思議と落ち着く。ルリが近くにいると安心するのだ。

「だからカームも怪我してこないでね。私はカームに治癒の異能を使いたくないから」

 ルリが異能を使うのは異能を使わないといけないくらい緊急の時だけ。心配してくれているのだろうか。

「怪我しないように頑張るよ」

 戦場では何かあるか分からない。だからルリの言葉に手放しでうなずくことはできない。だけど僕の返事を聞いてルリの顔は綻んだ。

(きれいだな)

 心が温かくなるような笑顔を見て、やっぱり僕はそう思った。


「ごめんね。一日中付き合わせっちゃって。遊びたかったんじゃない?」

「いいよ。暇だったし。それにトオラはアウィスたちとカードで賭け事してるから」

 晴天傭兵団の傭兵は戦争がない時は大体訓練をしているか、カードで賭け事をしている。とは言うものの訓練をする変わり者なんてほとんどいない。大抵の人は薄暗いテントの中で酒を飲みながらカード遊びだ。

「トオラも昔は私と外で遊んでたのに⋯⋯。いつの間にかに悪い遊びを覚えちゃって」

「そうなの?」

 僕の知らないルリとトオラの話だ。

「うん。小さい頃の話だけどね。これで後何年か経てば女遊びとか覚えてしまうかも」

「どうだろ」

 トオラにはルリがいる。そんなことにはならないと思うよ。冗談めかして言うルリに、僕はあいまいな表情を浮かべた。

「あれ?ハイラまだやってる」

 ごまかすように話を変える。だけど気になったのも事実だ。駐屯地の隅でハイラは剣を振っていた。戦争の合間の休みは体を休めるべきだ。朝見た時もハイラは剣の訓練をしていた。今は夕方だ。まさか一日中ああして剣を振っていたのだろうか。

「すごい汗。私ハイラさんを止めてくる。カームは洗った包帯と薬草を団の本部テントに置いておいて」

「あ、うん」

 そう言うとルリは矢のようにハイラのところに飛んでいった。それを見届けて僕は本部テントに荷物を置く。

 この日の夕食はロイさん特製のシチューだった。山で採れた兎や山菜がたっぷりと入ったシチューは頬っぺたが落ちそうになるほどおいしくて、トオラが食べてる間ずっと咀嚼しながら叫ぶという器用なことをやっていた。

 皆が笑顔になる食卓。だけどハイラの表情は曇っていた。スプーンを持つ手も鈍い。僕の寝坊やトオラの間抜け面で生まれた楽しい感情はなくなってしまっていた。

 次の日。晴天傭兵団は戦場に行った。僕らは何人もの敵兵を殺し、僕らを雇っている小国の兵士も敵兵を何人も殺したし、反対に敵兵に何人も殺された。殺し、殺されるこの世の摂理。そして傭兵団の中でも一人帰ってくることができなかった人がいた。

 ハイラだった。


さらにその次の日。戦争は続行。僕らは殺し合いに身を投じることになる。アウィスのおさがりの茶色い革鎧を身につけて、腰に一振りの剣とナイフを差す。剣はまだ体が成長しきっていない僕でも使えるようなショートソード。頑丈で刃もこまめに研いでいるけど、それ以外は何の変哲もない量産品の剣。

ナイフは少し特別製だ。柄は変わったところのない木製のものだけど、刃が虹色に輝く水晶でできている。スラム街で育った僕が物心ついた時から持っていたものだから、僕の知らない僕の両親がくれたものなのだと思う。不思議なもので誰かに取られても、なくしてもいつの間にかに手元に帰ってくる。アウィスが言うにはこの水晶自体他に見たことないもので、その上解析できない超常の力が刻まれているらしい。それ以上のことは専門ではないから分からないと言っていたけれど、僕にとっては壊れずに使えればそれでいい。

 日が昇るのと同時に起きて、体のコリをほぐし、食事を終えてから装備をつける。外に出て剣を数度振って調子を確かめる。

「よし!」

 傭兵になってからずっと使っている剣は僕の手によく馴染む。銘もない、鈍い輝きを見せる量産品の一振りだけど僕にとって大事な相棒だ。

「カーム。準備はできたか?」

「問題なし」

 ニッと口角を上げてアウィスに答える。その傍らには同じく準備万端のトオラの姿もある。

「んじゃ、今日も戦争に行きますか」

 アウィスの言葉に僕とトオラはうなずいた。


 一口に戦争と言っても千差万別色々だ。小規模な個人と個人のぶつかり合いみたいな戦争もあれば、魔導兵器の砲弾が飛び交う大規模な戦争もある。とは言ってもそんな戦争はめったにないし、あったとしても傭兵は捨て駒か生餌のように使われるらしいからルースもそういう戦争は引き受けないと言っていた。

 今僕がいる戦場は魔導兵器の砲弾は飛んでこないけど、複数人が揃って詠唱した強めの魔法が出鼻に飛んでくるような、あるいは一騎当千の勇者は出てこないけど、名のある戦士が少し混じっているような、そんなありきたりなところだ。いずれにしても油断すれば死ぬことに変わりない。いつも一緒に行動するアウィスとトオラの二人と開戦の合図を待つ。

「始まったか」

 後ろに控える自軍の小国の魔法使いと遠くに見える敵軍の魔法使いが、同時に弧を描くようにして魔法を放った。雲一つない青空から僕らの軍に降り注いだのは真赤な火の矢。逆に敵軍に降り注いだのは真っ白な光の矢だ。

〈回せ。回せ。風車。くるくる回って曲がって逸れろ〉

 火の矢はもちろん僕のいるところにも降ってくる。だけど矢は僕のところまで届かない。矢は全て僕らの周りに落ちていく。アウィスの魔法だ。詠唱と魔法の触媒である紙で折った風車で発動する矢除けの魔法。アウィスの手にある風車はボロボロになって崩れ落ち、彼はふぅと一息ついた。

「やっぱり魔法を使うと疲れるな。魔法の矢だし」

「魔法は後どれくらい使えそう?」

「そうだな。精々5,6回ってところか」

「了解」

 アウィスは専門の魔法使いではないから、何度も魔法が使えるわけじゃない。魔法はあくまで補助。アウィスの専門は剣だ。

 周りを見れば僕らのように矢除けの手段をもたず、それでいて運の悪い兵士が何人か矢に撃たれて苦しんでいた。そして地面には誰にも当たらなかった火の矢が地面に突き刺さってメラメラと燃えている。パッと見たところでは撃たれた兵士の中に傭兵団の仲間はいない。

「それじゃあ魔法剣士アウィス様とその仲間たち。行くぞ!」

「おう!」

「了解!」

 そうして僕らは敵の方に向かって走り出した。


よかったら次も見てね。

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