冒険者剣士アガットが語る
ゴブリン狩りの剣士の第一人称です。未だ第三人称は書けません!素敵な日本人先生いないかしらんチラ
まったくもってついていねぇ。
俺はアガット。名字はない、庶民だ。
今は冒険者ランクDをやっている。
冒険者と言えば夢あふれる職業だと、俺も昔はそう思っていた
今ならはっきりと言える。
んなのクソだ。
冒険者も所詮は才能もっている選ばれし人間じゃなきゃ夢もクソもねぇ
現に俺は幼い頃から血の滲むような努力してきたが、二十五になってもDランク。ちっとも上がりゃしねぇ
「?私の顔に何か?」
「いや別に」
今俺たちはランクDの依頼で、いつものエヴォリア大森林に行く途中だ
依頼は簡単、ゴブリンの討伐、オークはボーナス。
常時依頼だ。ゴブリンはしぶとく、繁殖力が高いから、毎日狩っても全然減りゃしない
まあ、今時ゴブリンに襲われるなどの被害は圧倒的に少ないから別に放置でもよくねと思うが
流石にあんまり数が多いと森から溢れてきて、小さな村が襲われる可能性がグッと高くなるからギルドは常時依頼でゴブリン狩りを推してくる
特にここらへんゴブリンとオーク以外ほどんど魔物がいない、ヌシのワータイガー集団でもないとほぼゴブリンしかターゲットに上がらない。
そういう特徴もあり、このガリアは冒険者にとって始まりの都市とまで呼ばれている。
話はずれたが、ゴブリン狩りは簡単そうでそうでもない。
一つはゴブリンは群れる。しかも最低でも10体以上に群れる。
その理由だけで、パーティは必要となる。
さすがに一人だと囲まれて大怪我する可能性があるからな。
もう一つはオークの存在。
オークはCランクの魔物。魔物の中でも弱い部類には入るが、とにかく硬い。
しかもその多くはゴブリン達と一緒に出てくる。
専門学者の中ではオークはゴブリンとは助け合いの関係であるとされている
硬いオークはとにかく剣士殺しだ。例え皮膚をブチ破っても、厚い皮下脂肪でダメージを殺してくる
その上一撃一撃くそ重い。
そのためパーティには一人くらいオークを殺すための魔法使いが必要だ。
うちのパーティの魔法使いは、俺の後ろにいるそのサリアだ。
ぶっちゃけ俺はそいつが嫌いだ。
お人形のような綺麗な顔立ち、陶器のようなツルツルで真っ白な肌。十五歳の分際で、出るとこは出すぎるくらい出てるし、締まるとこはぎゅって締まってる。
子爵の四女で一応貴族となり、その上魔法使いとしては天才的と来た
現にあいつはその年でランクCの魔法使いであり、単純に攻撃魔法の威力だけならB+ランクは軽くいってしまう。
それこそが選ばれし人間、俺のようなやつは一生届かない高みに、あいつなら軽々と触れてしまう
俺ではどう足掻いても届かない高嶺の花。だからこそ嫌いだ。嫉妬してしまう。
「なんでCランクのあんたが、始まりの都市でゴブリン狩りなんかしてんだよ…」
「冒険者同士、互い色々深く聞くのは御法度と聞いているけど?」
「そりゃそうだが……」
「まあ、いい。私はレベリングに来たの。」
「レベリング?あんたが今更ゴブリン倒してレベル上がるとは思えないが」
レベル、この世界では強さの基準の一つとされる。
ランクDの俺は17レベル、最弱のEランクのシフレは10と低め。
ランクCはDより遥かに強いので、少なくとも30レベルはあるはずだ。
ゴブリンを倒しても、15レベル以上に上がることはほぼない。
俺はゴツゴツオークの経験値を集めてようやく16だ。
「私自身のレベルではないの。私は自分のスキルのレベル上げをしにここに来た。」
「それでも低レベルのスキルしか上げられないが……いや、すまん、これ以上はタブーだったな。」
考えてみてようやく理解できた。
こいつは新しく身につけたスキルを上げようとここに来たのだ。
確かにその場合はゴブリン狩りしてた方が安全だろうが、なんせ大した金にならないから俺ならまずやらない
もしかしたら結構大事なスキルかもしれないと思うと、これ以上聞くのはマナー違反だろう。
「……詠唱短縮と詠唱破棄よ。必要ないかもしれないけど、一応知っておいた方がいい。」
答えてくれるとは思ってなかったが、これは結構大事なスキルだ
魔法使いが魔法を使うにあたって、必ず詠唱をする。
その詠唱は魔法が強いほど長くなり、溜めが長いと戦局にも影響する。
だからどのスキルも魔法使い必須なスキルで、それがないと大きな欠陥となりうる。
両方ともゴブリン狩りで上げられるスキルなら、レベルは3にも満たないだろう。
魔法使いとしては結構きつい。普通Cランクのパーティだとこいつの詠唱時間の長さを戦術に練りこむ必要がある
だからこそ教えてくれたのだろうが、それは冒険者として自分の弱点を晒すのと同義。
やはり貴族はあんま警戒心ないのかもな。この分だと俺でも不意打ちであいつを倒せそうだ。やらないが。
「隊長、いたぜ、百体ほどでオーク二体つきだが、いけそうか?」
「詠唱する。魔法の準備出来次第仕掛けろ。」
「了解」「おう」「うむ」「ああ」
サリアが短く作戦を説明すると、魔法の呪文を唱え始めた。
なるほど、構成からすれば大きそうな魔法だ。道理で短縮破棄いらずでCランクに行けるわけだ。
「貫け、軍神の槍よ!ランスシャワー!」
詠唱が終わると、空から十数本の光槍が雲の中から出てきて、そのままオークがいる方向へと走った
「軍神よ、我らが剣となれ。インスパイア!」
「お?攻撃力バフもあるのか、ありがてぇ!行くぜ!」
「ああ」
光槍の雨が炸裂、オークの辺のゴブリン達があっという間に消し炭にされ、オーク二体も光槍に貫かれて絶命する。
あとはゴブリンだけの楽の仕事、俺はいやな感情を抑えて飛び出した。
そして大半を屠ったあと、急に寒気がした
「?!!」
サリアも同様に何かに気付き、びくっとして他のメンバーに告げた
「何かいる、気をつけて!」
「あ?」
シフレはボケっとしている間に、アレが現れた。
「ック!」
爆風と共にアレが森から飛び出し、さっきシフレのいるところに着地した。
俺が咄嗟にシフレを抱いて飛び出したのが間に合ったが、地面には大きなクレーターが出来上がってしまっている。
「新手か!!!」
「おい、この皮膚の色…」
「魔王種かよ!冗談じゃねぇ!」
赤い皮膚、魔王種と呼ばれる人類種の天災を証明している
こんな化物が、なぜエヴォリア大森林などに!!!
「おい、ゴブリン共が逃げていくぞ。どうするよ、隊長!」
シフレがサリアに問う。サリアが小さく頷いて、こう言い放った
「どうもしない、このオークを仕留める。」
「マジ?魔王種だぜ!行けるのかよ!」
シフレの懸念はもっともだ。
だが、それでも俺と他の三人は素早くオークを包囲した。
理由は簡単。その魔王種はオークという結構弱めな種族だからだ。
その大きさだと生まれて1ヶ月も経っていない。もし成長させられたら一大事だ
むしろ幼い今出会ったことは幸運と言える。もしハイオークにでも進化させられたりしたらガイアの街では対処しきれない。
(これで、魔王種討伐できたらっ!)
そして、腐っても魔王種、討伐できたら莫大な名誉と富が手に入る。
俺もこのくそったれな状況からおさらばできる。
と、思っている時期は俺にもあった。
ついていねぇ。
結局魔王種は魔王種だった、身体能力はおかしい上に、魔力も使いこなしている。
シフレはあっという間に喉が潰され、殺された
攻撃力最高の俺の一撃は、皮膚すら突き破れない。
サリアという俺たち最後の希望も、大魔法を暴走させた
このまま魔王種と心中されると思ったら、魔王種はさらに規格外のことを仕出かした。
やつは恐らくA級もある大魔法を、素手で掴みとり、遠くに投げ出しやがった。
ここに来てようやく理解できる。
それは俺たちのような凡人ではどれだけいようとも太刀打ちできない相手。
逃げよう
サリアや他の連中には悪いが、俺は生き延びる。
大体サリアのような天才でもあの様だ、あいつを倒せるのは勇者しかいない。
湖方向へいったやつらは、絶対助からない。
オークはどうやらもう片方の仲間を追いに行ったらしい
不幸中の幸いだ。俺だけでも生き延びて、魔王種がいる情報をガリアに……
そして、体力使い切って、装備全て脱ぎ捨てて、俺は森を出た。
出れた……俺は生き延びたんだ!
三時間全力疾走したおかげか、それともあんまり濃い時間を過ごしたからか、俺の全身が脱力しかけた
でも、踏ん張った
まだダメだ、街まで、行かなきゃ……
あ、街だ、街が見える。
プス
「え?……」
右足に痛みが。
「あ……れ……」
体中に走る痺れで、俺は自分の体を支えきれず倒れた。
ふっと見て、俺の足になぜかタガーが刺さってる。
「グギャグギャ」
なんか音がするが、よく、わからないな……
まったく、ついて……いねぇ……
投げ技は四両破千斤と書きましたが、文字通り小さな力で大きな力を勝ち破るという意味です。日本にもあるんじゃないでしょうか。最後のアガットさんはゴブリンにだましうちされて、色々と不憫ですけど、こっちでは人類そういうもんです。