表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/24

魔物の正義


人類がすぐそこにいる、すぐに対応せねばならない


決断には早さを要する。人類はいつまでもほかのゴブリンに手こずるとは思えない


例え例の群れにオークがいようとも、ゴブリン狩りをするくらいならおそらく人類が勝つ


逃げか、接触するか


「魔王さま、ゴブリン狩りは危険です。ここは撤退してもよいのでは?」


ゴブリン共は俺の指示を待っている。


本来参謀の役割を果たすべきリーダーゴブリンでも、俺の方が頭いいことを知っているため、俺の指示には口を出さないが。それでもいつも常識的な判断を下し、献言してくる


そうだろうな。商隊くらいなら、襲ってもアタリはあるかもしれない


護衛代をケチるやつとか、ゴブリンの格好の餌食だろう


でもゴブリン狩りともなると、相手側は確実にゴブリンを倒せる強い人類。


本来ならば避ける相手だろう


でも


「接触する。人類のゴブリン狩りならば撃破しておく。いいな」


「はいです。魔王さまには従いますです」


「「「「グギャグギャ!」」」」


俺は逃げるつもりはない。


確かに、俺元は人間だ。人間のままここに来たのなら、ゴブリンを退治する側だろう


でも、今の俺は違う。


オークにしてゴブリンの群れの長。魔王種だ。


俺には、弱小なゴブリン、俺の同胞を守り、外敵を撃破する責任がある。


ならば、人類の敵となることが、魔物の俺たちにとっては正義となる


人類の心の欠片を捨てたわけではない。でも俺は魔物として生まれた以上、魔物の責務を果たす


これから、俺はオークとして生きていくのに、これくらいの覚悟がなければ話にならない。


十分くらい歩くと、グギャグギャという声が段々明晰してくる


見れば六人の人類が散らばって、ゴブリン残党を狩っているようだ。


既に二体のオークは死体と化しており、ゴブリン共は子ゴブリンを守ろうと頑なに抵抗を続いている。


でもそんなゴブリンでは当然人類の敵ではなく、次々と斬り殺されてしまう


死体の数からして、百くらいの群れだろうが、結局壊滅は免れない。


あと二十体足らず、子ゴブリンを含めているので、このままだと数分もかからない。


「いくぞ。お前達、援護と牽制を頼む。命を大事にな」


残りのゴブリン達を見殺しにするわけにもいかず、俺は全身に内力を回し、大きく咆哮した


「??!新手か?!」


大きく跳躍、例のごとく地上には相応なクレーターができる。


これはもう慣れてしまった。後ろのゴブリン達を庇うように、俺は人類達に睨みつけた。


「お、おい!この皮膚の色!」


「魔王種かよ!冗談じゃねぇ!」


「……」


牽制するように俺は小さく吠える、後ろのゴブリン共はどうも状況が理解できないらしく、固まっている。


これでは戦いにくい。


ただでさえ一対六、敵の練度もわからないのに、余計なお荷物を持っていればこっちには不利すぎる。


「グギャ!グギャグギャアアア!!(お前ら、死にたくないなら魔王さまに任せてそこ退くゴブ!)」


俺の部下のゴブリンの一体が吠える。残りのゴブリンはようやく俺が援軍だと理解して、グギャグギャと泣きながら退いていく


「おい、ゴブリン共が逃げていくぞ、どうするよ、隊長キャプ!」


「どうもしない、このオークを仕留める。」


「マジ?魔王種だぜ!いけるのかよ」


どうも隊長っぽい人類の女性が一言喋ると、全員が戦闘態勢に入った。


日本語でも中国語でもないが、俺には大まか聞き取れているのはやはりいつもののご都合仕様か?


全部理解できるわけではないだけ、魔物の方が聞き取りやすいのは魔物仕様かもしれない


敵は六人。四人が剣士で、一人がナイフ、隊長っぽい女性は杖をもっている。


前衛に偏りすぎる気もしなくはないが、杖の方は気になる。


前世と現代ではよく内力で魔法っぽいことはしてきたが、本物の魔法は見たことがない。


ぶっちゃけ、ほかの五人は達人でもなければどうとでもなる。


魔法だけは気をつけなければならない。オーク族の弱点も魔法だと、リーダーゴブリンに聞いている。


どうにか先に魔法使いを潰すか?


いや、縮地法とかで直接後方の魔法使いを叩くかと思ったが、やはりそれはやめた。


どうにか、魔法が使われるとこをちゃんと見ておきたい。


考えている間でも、敵方の剣士四人は手馴れた様子で俺を囲めた


ナイフ使いもナイフにナニかを塗り、攻撃開始の合図を待っているらしい


「いけ。軍神よ、我らが剣となれ、インスパイア!」


魔法使いの女性は杖を構えると、全身から白いオーラが溢れ出し、そのまま他のメンバー全員に降り注いだ。


剣士達はそれを待ってたと言わんばかりに、四つの角度から剣を振りかざす


遅い、現代よりは少しはマシだが、結局古代の一般兵士小隊長程度。


これでは、いくらこようか俺に触れられん。


軽く飛んで剣撃を交わし、まずはナイフ使いに襲いかかった


あいつは後衛な上、多分毒を使う。魔法使いの動きを見るためにも、先にこいつを潰しておく必要がある。


「ひっ!!ポイズンタガー!!!」


ナイフ使いは俺が先に自分を狙うと思っていなかったのか、間抜けな声を出しながらナイフを乱擲してくる


そんな、バカだ。


「おい!阿呆!こっちに当たったらどうするつもりだ!」


俺はあえて避けずに、そのまま突っ込んだ。


あいつの毒ナイフは俺の体に当たってはいるが、軽く内力を流しているため、皮膚を突き破るまではいっていない


これでは毒も効くことはないだろう。もともとオークは頑丈さが売りの魔物、ナイフに毒を塗るくらいでは最初から大してダメージが望めない


「ぐぇ…」


右手であいつの首を掴み、そのまま力を入れた。


ぐちゃりという音を立てて、ナイフ使いの男は崩れる。


「シフレ!!くそ!!くたばれ!!」


剣士の一人が激昂して大上段を振ってくる。避けるのは容易いが、面白くない。


ちょうどいい、自分がどれだけの攻撃を受け切れるか、試してみるのも悪くない。


そう思って、俺は全身の筋肉を収縮し、内力を左肩に寄せた


ガチン!と、金属がぶつかりあうような音を立てて、剣士の剣が弾かれる。


「んな!!インスパイアのバフありでかすり傷もしないだと!!」


「おい、アガットがこれじゃほぼ詰むぞ!」


「サリア!大魔法はまだか!」


「くっ、オークとは言え、やはり魔王種か。やむを得ない、大きいのぶっぱなすから、その隙で退却します!」


「「「おう!」」」


「っくそ、わかったよ!」


さっきから小娘の魔法使いは動かない、全身に白いオーラに覆われて何かぶつぶつと喋っていたが、情勢がまずいと判断したか、口がいくつと早くなった


剣士達は相変わらずダメージ通らないことを承知してるような攻撃で俺の足を止めている


このまま抜けて魔法使いを叩くのは簡単だが、せっかくなので最後に何をするか見ておきたい。


「……我、軍神の意思を継ぐもの、天地の狭間より来たれ、始原の剣よ!」


「よし、今だ!」


「おう!」


なにやら魔法使いの方のオーラが徐々大きくなり、眩い光を放つ。


これ、かなりやばくないか?内力と例えるならばとても受け切れる気がしないが、それよりも


「軍神剣の審判デュランダルジャジメント!」


森が震える、空気が凍てつく


娘の頭上に非常にデカイ白く輝く剣が出現した。


内力とは異なるが、あれは似って非なる一種のエネルギー体の塊と考えてまず間違いない。


魔力マナの塊という線が妥当だろうが、問題はそこではない


彼女は全身夥しい汗がにじみ出ており、全身震えて立つことままならない


「おい、サリア!大丈夫か?」


「くぅっ!」


「いかん、こいつ大魔法を無理やり短縮詠唱でぶっぱなしたせいで制御できず暴走させている!」


「巻き添え食らうのはごめんだ、俺は逃げるぞ!」


「おい!」


巨大な光剣は使い主と一緒に揺れ始め、見ているこっちが冷え汗ものだ


無理もない、あの娘の力の底こそ知らないが、その剣士たちの仲間だ


巨大な光剣はどうみても俺の時代のトップクラスのエネルギーを内包している、彼女がそれだけのエネルギーを制御出来ると思えない


もっと小さなやつにしとけって話だが、このままだと術師もろとも、俺たち全員巻き添えを食らう


避けるのは論外、その光剣を破壊しなければ、俺はともかく、俺の部下達のゴブリン共に明日はない


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ