今後の魔王軍
「いや、魔王種ならもっと早く言ってくださいよ~」
「ホンマっすわ、知っとたらんなアホなことせいへんかったのに……」
「最初から身分を明かしたら部下になってくれたのか?」
「いいえ。証拠を見せろと、我はあなたに決闘を挑んだのであろう。」
「そうだろう。虎の両目は赤色を分別できないと聞く。結局戦いになったんだろうさ。」
「はっ」
「魔王さま、素敵です……」
自分が魔王種であることを教えてやったら、銀戦虎共はすぐに平伏し始めた。
魔王種は言葉通り魔物の王たる者を示す。つまり大部分の魔物は相手が魔王種であることを知れば、自ずと従ってくるのだ。
今回はさらに群れの長まで倒したから、尊敬や畏怖の念がビシビシと伝わってくる。
ちょっと危ない場面もあったが、商売としては気持ち良すぎるくらいの儲けだ。
あと、サリア最近俺にベタベタしてんな……
「主よ。これから我々はどうすればよろしいか?」
ベラは自分にヒールをかけながら聞いてくる。
そうだな。虎の群れを下したのは、本当に予想外の出来事だ。
ちゃんと今後の計画と、やるべきことを教えておかなきゃいけない
「魔王さまよ、午後の時俺は寝付けなくて、散歩してたんだが。あんたとそのメス人間がこの森のゴブリンの群れを収容してんのを見たんだ。もしかして戦力集めってやつか?」
「貴様。主の許可得ずに発言するな。そしてタメ口などどういう了見だ」
「ひぃ!す、すいません姉さん……」
「よい。次には気をつけろ。確かに今日の早朝からやっていたなそれを。」
「む、主よ。つまり我々もオークやゴブリンの群れを探し出し、それを魔王軍に編入させればよろしいか?」
「いや。いい、必要ない。」
「必要ない……であるか?」
「魔王さま。手勢が多い方がいいのではないのですか?」
「ちょっと違うな。」
エヴォリア大森林は後半分以上の区域は俺たちが未踏破であるが、別に俺が大森林を自ら歩き回る必要はない
理由は四つある。
一つはそれをやるのは結構非効率的だからだ。
エヴォリア大森林は広い。その数千数万のゴブリンやオークを、俺一体で降伏勧告しまわるのは、すごく手間がかかる。
俺以外の者が行っても、相手が反抗しない確証がないので論外。
流石に戦虎達に行かせるわけにもいかないしな。戦虎は夜行性だし、根本的に時間がずれている。
二つ目は今戦力は十分だからである。
ゴブリンだけでも六百。オークは十三体。その上戦虎を部下にした今、人間の村一つには正直過剰戦力だ
現状では、それ以上部下を増やしても大して旨みがない
それに時間を割るのは得策とは言えない。
三つ目は一気に拡張させすぎたら、質の低下という大問題が起きるからだ
よくあることだが、小さな勢力が急激に実力を拡大させると、管理が追いつけず、烏合の衆になってしまう
俺はまだ幼児期である。俺の古参兵でもまだまだ一ヶ月くらいしか在籍していない。
六百でも正直キツイ数だと俺は思っている。これ以上拡大させたら確実に俺が管理しきれない。
軍隊の育成には時間をかけてゆっくりだ。
今は十三体のオークに二名の古参ゴブリンを参謀につけている。
十三体のオークそれぞれに30体のゴブリンを任せている。古参ゴブリンを交えて33体の群れとなる
これがオークと古参ゴブリン二体ではの限界。あとに俺が60体を率いて、残りは非戦闘員として手伝うことになっている
しばらくはこれ以上の戦闘員はいらない。邪魔になるだけだ。
四つ目は、そもそももっと効率的な方法があるからだ
これから俺たちは人間の村を襲う。そして無論勝利して、人間に恐怖をもたらす
そして、そのことを森の魔物に伝えれば?
自ずと、人間を憎悪する魔物は、俺の元に集う。
人間を愛する魔物もいるだろうが、多くの魔物は同胞が殺されているため、人間を敵と認識している
奴等が人間を攻撃しないなら、俺が魔物の侵攻の旗印となればいい。
最初から魔物は全員戦闘員である必要はなかったんだ。
四つ目の方法を使って受け入れた魔物は、予備兵にでもすればいいし、生産を教えてやればいい
魔物だから生産してはいけないことはない。
ゴブリンは手先器用だし、オークは力持ち。協力さえすれば人間と同じ以上のことができるはずだ
そのことを説明すると、半数の銀戦虎が呆けており、十数匹が目をキラキラさせて見つめてくる。
後数匹がオークと同じく頭から煙を出して壊れてた。ベラ、てめぇはこっちか……
ちなみにサリアは最初から似ているようなことを考えており、俺に進言もしてきたが、今は「流石魔王さまです」とうっとりしている
「すみません。魔王さま。ベラさまはそういうの苦手なもので……しかしその方針はよろしいかと」
「流石は魔王種ですな。教われてはっとしましたぞ。魔王さまは武勇と知恵両方恵まれておられますな!」
「私としては、このままベラ様を魔王さまの直属部隊として扱って頂きたいものですね。夜行性ではありますが、ご命令頂ければ朝でも動けますよ」
「うむ。そのつもりだ。人間の村の襲撃は折角だから、お前らからも何匹来てもらうつもりだしな。」
十数匹状況を理解できた銀戦虎はすぐにゴブリン達と意見を交わし始めた。
オークには傲慢な態度を取るやつらだが、ゴブリンは森の賢者とも呼ばれる知恵ある魔物、流石にある程度礼儀を持って接触しているようだ。
思うほか早く打ち解けてくれてよかったと思いつつ、俺は酷い眠気を覚え、隣の大樹に寄りかかる
サリアはそういう俺を見て、隣に腰をかけた。
「魔王さま?もうお休みになられるのですか?」
「ああ。なぜか非常に眠くてな……」
「ああ、なるほど。そろそろ進化されるのですね。おめでとうございます」
「?進化?」
「はい。ある程度経験を積むとレベルアップします、レベルがカンストしますと、進化できるようになります。そのためには睡眠が必要とされますので、恐らくそれが原因かと」
「……そうか。後始末はお前に任せる。言うこと聞かぬやつは後俺がしばいてやる。」
「お任せ下さい。」
「任せた。」
そう言って俺は喧騒の中に、瞼を閉じた。
「ごゆっくりお休みください、魔王さま。」




