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魔王さまの全力

 さて。一撃をかましてやったとは言え、相手の防御力と体力は予想より高い。

 元より俺は幼児期と言ってもいいオーク種。一撃では大きな打撃を与えられないだろう。

 

 そして俺の読み通り、金戦神虎ワータイガーは吐血したものの、体を纏う気の流れはほどんど乱れず、すぐ態勢を立て直した。

 なんらかの魔法で自分に掛けているようだが、俺が阻止してこないのを見ると逆ギレして魔法を止めた。

 何をしたかったんだか。


 前世こだいの俺は青少年辺から持ち前の怪力で、特に内力での打撃力増強以外の技を使わずに無双してたが、本来幼年の俺は格上の相手に対する戦闘方針は「カウンター」一言尽きる。

 力では及ばぬなら技で流す、内力が届かぬなら振られぬように立ち回る。それが俺が弱者である時いつも取っている対応策。

 あの時は俺よりも技を極めたやつはわんさいた(多分)ので、最後は技巧より王道の力押しでいったわけだが。

 ぶっちゃけ、魔物達に技巧の欠片もない、まるで自分の身体能力に振り回されているような戦い方をしている。

 こっちにはダメージを与えられるほどの技術があれば、ほぼ負ける要素がないと言える。


 元はというと、俺が防戦一方なのは、相手の行動パターンや動きの癖などを探り、整体の実力を測るためであり

 攻めようと思えばいつでも攻められる。それだけ、やつの動きが単純。 

 相手も自分が翻弄されているのがわかったからか、苛立って滅茶苦茶な動きをしてくる。

 

 考えそのものは悪くないとも言える。

 ド素人ほど、動きが読めないものであり、やつは地の身体能力はこっちよりは上だ。

 相手を予想外かつ高速の動きで混乱させ、仕留めるチャンスを伺う。

 技でもなんでもないが、策としては上々だろう。


 軽く手刀を振り、その都度金戦神虎ワータイガーは大きく跳ねて避ける。

 こっちの透勁が自分の防御を簡単に破れるのを知って、慎重になったのだ

 普通の相手ならば、このまま弄んで、体力切れを狙ってもいいが


 「相当スタミナに自信があると見た。」


 「当然よ。我は金戦神虎ワータイガーの無傷のベラ。エヴォリア大森林のヌシぞ。スタミナポイントはまだまだ余裕じゃ!」


 そう言って金戦神虎ワータイガー……いや、ベラと名乗った彼女は急に姿を消した

 その瞬間、背後には凄まじい殺気を感じ、俺は咄嗟に横に飛んで避けようとするが

 

 「むっ!!」


 まるで竜巻のように、ベラは全身を回転させながら突っ込んで来たのである。

 直撃を免れたが、爆風の余波の威力もバカにならず、俺を含めて周囲の大樹は全部吹っ飛んでた


 「魔王さま!」


 サイアが叫ぶ。

 俺は両腕に内力を回し、クロスにして顔面を守ったが、その両腕の皮と肉が旋風に抉られ、一番前に出た右手は骨まで見えてしまっている。

 血がドクドクと流れて、少々めまいがしてくる。

 舐めすぎたか。あんまりのスピードや威力で防ぎきれなかった。


 流血を止めるため、すぐに全身の血脈に内力を回し、体の自己修復速度を上げる。

 そうするとなぜか、本来傷のせいで周りが淀んでいるはずが、それが想像を絶する早さで周り始めた

 傷口も目に見える速度でみるみると塞がっていき、その光景にさすがのベラも驚き、動きが止まっていた。


 「なっ……ヒール?それともハイヒール?!いや、その効力はハイヒールレベルではないぞ!オークは魔法がまったく使えない種族なはず、なぜ貴様がそんな高位な回復魔法を!!」


 魔法?いや、使ってないが?

 ……いや、もしかして、内力のことか?

 内力をうまく使いこなせば、本来魔法紛いのことができたりする。

 

 サリアに聞いたことがある。

 金戦神虎ワータイガーは物理耐性が非常に高く、魔法耐性も高いものの、物理ほどではないので、討伐では魔法使いの活躍が肝要だと

 もしかして、内力でもいけるのではないか?


 意を決して、俺は両手に自分の内力の精華、「無相混元気」を乗せた。

 ベラはこのような雰囲気を初めて見たようで、明らかに警戒し始めた

 

 さすがにさっきは油断しすぎた。

 技巧がないのは俺の決めつけに過ぎない。例え戦闘技術がなくとも、一芸がなくてヌシ足り得ぬことくらい考えればわかったはずだろうに

 俺もまだまだあおいということだな。


 「感謝するぜ……」


 だから感謝している。

 俺がまだまだ弱者という現実を教えてくれて。

 その礼というわけでもないが、お前が見たことのないであろう力の使い方を見せてやる

 正真正銘俺の最大技。年を取ってから一度も使ったことのない、混元気の応用。


 「見せてやろう。俺の本気を」


 全身の筋肉がガシガシと軋む。

 骨関節が悲鳴を上げ、俺にやめろと叫ぶ。

 人の力は本来上限が高い。しかし、酷使すると筋肉や骨や神経がそれの重圧に耐え切れぬ可能性があるので、体が無意識でブレーキをかけるのだ。

 そのリミッターは、火事場などでよく外れて、自分の体の主を助ける切り札となるが

 俺はそのリミッターを、自分の意思で簡単に外す。

 前世こだいと現代では、リミッターを程よく外して筋トレをしているおかげで、人間離れた怪力を手に入れている。

 その代わりに最初の頃はひどく痛いのだがな!


 「な、なんなのだ?こいつの威圧感……まるで……」


 「いくぞ。受けきって見せろ。」


 全身のリミッターを全解放して、俺は両手に集めた混元気を限界まで膨張させ、地面を蹴った

 ほどんど音速に近い速度で、一瞬で距離を詰め、膨大な混元気エネルギーをベラの腹ど真ん中に押し付けた


 「無相混元気第三式、混元一気!」


 混元気の爆発は全部広がってベラの毛皮に吸収され、そのままベラは横向けに倒れてしまった。

 

 

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