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森のヌシ

どんどん行きますよ!少なくとも一日一回は更新しますので、よろしくお願いします!

 サリアが堕ちた日から、俺は一般常識が欠けているため、大体彼女と一緒にいて話を聞いている。

 そしてもちろん、このエヴォリア大森林に棲むもっとも危険な魔物についても

 

 金戦神虎ワータイガー、通称虎王。FからSまでランク付けされる魔物の中ではBとそれなりに高め。

 オークと違い、虎王であるワータイガーはメスしか存在しない。

 彼女達は部下である銀戦虎ノータイガーと群れで生活し、繁殖する。

 銀戦虎ノータイガーはランクとしてC-であり、D+のオークなら一対三までなら対等に戦えるほどの実力を持つ。


 銀戦虎ノータイガーも、長の金戦神虎ワータイガーも同じく夜行性のため、普通夜にでもならないと活動しない。

 しかし発情期となると、部下の銀戦虎ノータイガーが最強のオス銀戦虎ノータイガーを決めようとイライラし始めるため、その時期の夜は非常に危ないとされている。

 更にそういう時は朝でも稀に寝付けない個体が出没するので、エヴォリア大森林ではたまにゴブリン狩りが遭難する

 ついでに言うと最強のオス銀戦虎ノータイガー金戦神虎ワータイガーの番になる名誉を与えられて、側近として抜擢される。


 銀戦虎ノータイガーは進化回数が極端少ない種としても知られている。

 最初からC-ランクと高い戦力を持つものの、銀戦虎ノータイガーはメスしか進化できないので、オスだとそもそも一生進化できないのである。不憫な

 金戦神虎ワータイガーから更なる一段階の進化、天神虎ソニタイガーがあると伝われているが、発見例が少ないので本当に進化型なのかはまだ確証できていない。

 

 このエヴォリア大森林では金戦神虎ワータイガーは一匹しかいない。そいつに付きそう銀戦虎ノータイガーは五十匹ほどで、ゴブリンやオークの集落に比べば大した規模ではない。戦力比はともかく

 だから、正直ばったり合う可能性は結構小さいはずだが、今回は一発でアタリを引いてしまった。


 「オークの集まりとな。また珍しいこともあるものだ。」

 

 「しかし夜に騒ぐのは、些か無礼ではないか?オーク風情が」


 銀戦虎ノータイガー共が先に出て、威嚇してくる。

 その光景にオーク共とゴブリン達は明らかに怯えてしまい、後ずさって俺の後ろに隠れた。

 

 「ふん。一体だけ奇抜なオークがいるようだが、貴様が長か?」

 

 「ボク達とて無益な同胞殺しはしたくない。ちゃんと非礼を詫びてくれれば、見逃してあげなくはないよ」


 銀戦虎ノータイガーは全然臆しない俺に気づき、高い目線でお詫びをたかりにきた。

 本来ならば魔物は俺の赤い皮膚を見て驚くか、平伏するだろうが、銀戦虎ノータイガー達は違う。

 ネコ科動物は、実は赤色を分別できないからである。

 それに加えて、俺は翌日の襲撃で目立たないために、わざとサリアに協力してもらって、冒険者共の衣服を改造して、俺用のコートに仕上げた。

 今の俺はもはや前のように真っ裸でうろつくオークではない。顔は隠してないのと、朝では上半身を裸にしているからオークやゴブリンには一発でバレたが、今の虎連中は気づいていないようだ。


 「うむ。確かに夜に騒いだのは悪かった。すまない。」


 「そうだそうだ。分かってんなら出すもん出しな。」


 「しかし。金戦神虎ワータイガーの群れの噂は色々と聞いているが、これはないな。どうやら高く見すぎたようだ。」

 

 「へい…てめぇには高位魔物に対する敬意を持ってないようだな。オラ!」


 俺はわざとらしく、失望したような肩を窄めると、若い銀戦虎ノータイガーの一匹が喚きながら靭やかな尻尾を鞭のように打ってきた

 あんまりにも遅く、避けようと思えばあくびしながらでも避けたんだが、ここは舐められないように真正面から打ち返す。

 軽く手をかざし、内力の込めた掌は簡単に相手の攻勢を拒む。腕を更に回し、いくつの回転の後、その銀戦虎ノータイガーの尻尾の中間部分を掴み、内力を回してブン投げた


 その若い銀戦虎ノータイガーはいとも簡単に空に飛ばされ、何度か地面とキスしてから大樹にぶつかって停まった。

 

 「んな!馬鹿な!」

 

 「おい、貴様、無事か!」


 「オーク如きにこんなこと・・・ハイオークか?それでもありえないような強さだ…」


 若い銀戦虎ノータイガーは飛ばされて数十メートル、数秒間何があったかわからないように呆けていたが、すぐに立ち上がった。

 手加減したのもあるが、やはり銀戦虎ノータイガーともあればあれくらい大したダメージじゃないらしい。


 「てめぇ…!!!ぶっ殺す!!」


 「待ちたまえ。」


 「え?……」


 若いやつがリベンジしようと再び飛びかかって来るつもりだろうが、それを、一匹の虎が止めた。

 黄金の輝きに、背中にある立派なたてがみ、そして他の個体を一回りの大きい体型。

 王者の風貌をしている森のヌシ、金戦神虎ワータイガーそのものである。


 「し、しかし姉さん、こいつは…」


 「二度とは申さん。」

 

 「…っは。」


 「すまなかったな。金戦神虎ワータイガー殿。いきなり襲いかかってきたので、思わずぶん投げっちまったよ」


 「こっちこそすまんな。若い連中はどいつもこいつも血気盛んで、抑えが効かなくていかん」


 金戦神虎ワータイガーはそう言って、部下の銀戦虎ノータイガー達を睨んだ。そいつらはさっきの勢いが嘘のようでシーンとして、尻尾を両足の中に引っ込めた。

 さすがヌシというだけはある。凄まじい威厳とカリスマである。

 この情勢は狙ってやったわけじゃないが、まったくもって俺も運のいい男のようだ。


 「しかし。我が群れを貶すような物言いをした貴様にも非はある。そうであろう。」


 「いや。俺は事実を言ったまでよ。相手と自分の戦力差を測ることもできず、自分の方が上だと勘違いしていてはそれこそ終わりだろうが。」


 「ほう……貴様は自分の方が上だと、そう申すのか?」


 金戦神虎ワータイガーは目をひそめて、静かに呟く。

 その声には静かな怒りと殺気が含まれていて、後ろにいるオークやゴブリン連中は全員震えだしてしまった。情けない。


 「左様。俺にかかればそいつらのようなガキはひよっ子同然。それはさっきも証明しただろう。」


 「……なるほど。殺気を当てても動じぬとは。確かにただのオークと思えないやつだ。だが。」


 その瞬間。金戦神虎ワータイガーの全身がオーラに包み込まれ、大地が震え上がった。

 高位の魔物がマナを使いこなす。虎種は攻撃魔法こそ使わないものの、身体強化魔法の使用が確認されている。

 そのオーラが、やつが戦闘状態に入り、自分に強化魔法をかけた証。


 「貴様に魔物の決闘を申し込む。己の矮小さを思い知るがいい。」

 

 決闘。魔物の間ではその決闘に禁じ手なし。判定方法は死亡、気絶もしくは降参だけ。

 そして、勝利した方は敗北するやつの全てを奪う。実に魔物らしく、残酷かつシンプルなルールだ。

 

 「願ってもない。」


 自分の目標が思っているより早く達成しそうと思った俺は、同じく体中の内力を回し、ニヤリと笑ったのであった。


あ、もしよろしければ評価とか感想とか頂ければ嬉しいです

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