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「緊急依頼ニャ!今日、昼過ぎから墓場エリアまでの護衛を頼むニャ!」


 ギルドに入るなり、リオが大声で募集をかけた。僕は依頼書をマギーさんへと渡す。護衛費は墓場エリアということを考えると微妙な金額だ。果たして集まるだろうか。

 依頼書を受け取ったマギーさんは不備がないか確かめると、すいっと立ち上がって話し出した。


「皆さん、これは商工会から黒猫堂への指名依頼です。達成できれば良し、達成できなければ最近話題の黒猫堂を潰す理由ができてまた良し、という意図でしょう。黒猫堂は冒険者のためのお店です。商工会の思惑通りにさせていいのでしょうか?」


 ざわざわと喧騒が大きくなり、やがて何人か前に進み出てきた。


「俺達は【鳳仙花】だ。黒猫堂にはこないだ世話になった。協力するぜ」

「あたしゃジルってもんだ。行きつけの店が潰れるとあっちゃほっとけないねえ」


 3人パーティの方はともかくお婆さんは大丈夫か?と心配したが、聞くと15階までソロで潜るらしい。凄まじい腕前だ。


「ありがとニャ、ありがとニャ……」


 世話になってるとか行きつけとか言われて感無量のリオがそれぞれの手をとりお礼を言って回っている。

 そんな中、1人の少女が僕らの前にやって来た。

 見覚えのある、ローブを着た少女。


「私も参加するよ、ノエル」


 忘れたくても忘れられないその顔。僕の初めての仲間の1人。ミリィだった。



 気が付くと僕はギルドを飛び出していた。後ろから僕を呼ぶ声が聞こえる。それでも足を止める気は起きなかった。どうして?どうしてミリィが。あのパーティは僕がクビになったあとレイロアを出たはず。……いや、冒険者なのだからレイロアに戻っていても不思議はない。なぜ今さら僕の前に現れるんだ?他の連中もいるのか?目標もなく走り続ける僕に心臓と肺が抗議の声を上げる。ついには息が切れ立ち止まると、同じように息を切らせたミリィが追いついてきた。


「ハァハァ、ま…ってノエル」

「……ミリィ」

「ごめんなさい」

「謝ることなんてないよ」

「ううん。ノエルがパーティを離れるのに何も出来なかったこと、約束を果たせなかったこと。最低でも2つは謝る理由がある」

「クビは仕方なかったよ、役立たずだったし」


 自分で言っておきながら胸がズキンと痛む。


「それに約束って?」

「そっか、覚えてないんだね」


 ミリィの少し淋しそうな顔を見つめる。そして疑問を口にした。


「他の皆はどうしたの?」

「あれから……ノエルが抜けてからギクシャクしだしたの。今は一時解散中。アルベルト曰く充電期間らしいけど、もう元には戻らないんじゃないかな」

「ギクシャクの原因だった僕が抜けたのに、抜けてからギクシャクしたの?」


 奇妙な言い回しにミリィがクスッと笑う。


「アルベルトに抜けろって言われたんでしょ?私とエリーゼはそんな話聞いてなかったの。私はノエルをクビにするなんて許せなかったし、エリーゼは大事な話を相談もなく決められた事に不信感を持ったみたい。話を聞いてたはずのマルコとダレンもどこか他人行儀になったの。多分、ノエルがホントに切られた事で自分もいつ切られるかと不安になったんじゃないかな」


 話を聞いて我ながら情けないけれど、正直胸がすく思いだった。


「それでもだましだまし今までやって来たけど、半年前かな?限界がきたの」

「限界?」

「アルベルト以外誰も話さなくなって、連携は最悪。そんなだから依頼も失敗続きで」

「そっか」

「うん」


 そこからはあまり言葉が続かなかった。

 けど、それで良かった。

 ミリィとは昔からこんな感じだったから。

 わだかまりは消えていないけれど、顔を見て逃げ出すほどの恐怖感は無くなっていた。


「で、いつチューするニャ?」


 物陰から顔の上半分だけ出したリオが期待に満ちた目でふざけた事を聞いてきた。


「しないよ!」

「しません!」

「何ニャ、追跡損ニャ」


 いつからいたんだ出歯ネコめ。



 ◇



 集まったメンバーは僕、リオ、ミリィ、【鳳仙花】の3人、ジルさんにジャックを加えて8人の大所帯となった。Dランクの僕と【鳳仙花】、Cランクのミリィ、Bランクのリオ、Eランクだがレベル40代のジルさん。ばらつきはあるが戦力的には問題なさそうだ。アダムへの仕返しにもっと雇いたかったがこんなものだろう。

 お昼時を過ぎた頃、クリスを迎えにリーマス商会へやって来た。


「やあ、待っていたよ」

「6人も雇ったのかッ、しかもババアに小娘だとッ?ふざけてるのかッ」

「いいじゃないかアダム氏。若い女性がいた方が僕の剣も冴えるってものさ」


 そう言って腰の高そうなレイピアをポンと叩いた。


「そうですか?……クリス様の寛大なお心に感謝しろよッ?黒猫堂!」

「はいニャ。大感謝ニャ」


 リオは学習したらしく反論しない。感情のないマネキンのような顔で礼を述べた。

 感謝されたクリスはリオに向かいにっこり微笑むと「感謝なんて不要さ、レディ」なんて言いながらリオの手の甲にキスをした。

 その貴族っぽい行為にリオはビクビクッと震えたかと思うと全身の毛を逆立たせた。



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