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 僕とリオは丘の上の不思議な光景をぼんやりと眺めていた。一定のリズムが眠気を誘う。


「ルーシーちゃん楽しそうニャ」

「うん。ジャックも」


 Bone踊りを目にしたルーシーがソワソワと落ち着きが無くなり、ついには「ルーシーも!ルーシーも!」と騒ぎだしたのだ。ジャックが言うには、アンデッドなら飛び入り参加しても「ただちに問題はない」とのこと。その役人のような表現に少々不安を感じながらも2人に参加の許可を出した。このままルーシーが騒ぎ続ける方が不味いと思ったからだ。

 許可を出すや否やルーシーはすっ飛んでいった。一瞬ゴースト達の円の前で躊躇したが、やがて誘われるように円に加わった。ジャックは列の手前でペコリと頭を下げると1人分スペースが空き、そこに入った。慣れてるな、ジャックの奴。


「ふぁぁ……踊りが終わったらスカウトするニャ?」

「うん……でもいつまで続くのかな」


 あくびを噛み殺しながら月を見上げる。もう、Bone踊りを眺め始めてから3時間は経ってる。同じように月を見上げたリオが言う。


「朝までかニャあ」

「そうだろうね」


 僕達はごろんと横になり目の前の景色を眺めていた。



 ヨーオッ、パン!

 今までと違う音に僕は目を覚ました。東の山がうっすら明るくなっている。リオは丸くなって寝ていた。

 朝か。………朝!ヤバい!

 飛び起きると僕は大声で叫んだ。


「ゴーストの皆さん!レイロアの黒猫堂では店番できるゴーストさんを探しています!希望者は今日の夜、馬車まで来てください!」


 数多のスケルトン、ゴースト達が僕に注目する。伝わっただろうか。するとゴーストの輪から1体がこちらへふよふよとやって来る。ルーシーだ。


「わかったって~」

「ほんと?良かった」

「つかれた~」


 そう言うとルーシーは十字架の中へと消えていった。ゴースト達も1体、また1体とそれぞれの方向へと去っていく。あとはスケルトンか。


「スケルトンの皆さんにもポーターの仕事をお願いしたいと思ってます!希望者はこの後、馬車まで!」




 馬車まで戻る道中、すでに後ろから大量のスケルトンが付いてくる。


「50体はいるニャ……どうやって選別するニャ?」

「タブン大丈夫デス」


 ジャック曰く、単純に前を歩くスケルトンに付いてきてるだけのスケルトンが多いだろうとのこと。

 馬車までやって来ると、すでに30体ほどに減っていた。そこからジャックに付いてきただけのスケルトンを弾いてもらう。残ったのはたった4体だった。



 ◇



「これより集団面接を始めます。席にお着き下さい」


 席は手頃な石をイス代わりに4つ等間隔に置いたものだ。僕達はその対面に同じように3つ石を置き座る。


「まず自己紹介を。僕はオーナーのノエルです」


 軽く頭を下げる。


「続いてこちらがオーナー兼店主のリオ」


 リオも同じように頭を下げる。


「そしてこちらがポーター係係長ジャックです」


 ジャックは横柄に手を上げて答える。

 言い終えて4体を見渡す。1番左はきちんと座ったスケルトン。背筋がピンと伸び好印象だ。2番目は席の周りをグルグル歩き回っている。本当に自我あるのか?3番目は立派な体格、もとい骨格のスケルトン。偉そうに脚を広げ、腕組みしている。4番目はずっとゲラゲラ笑っている。


「えー、左の方から順番に話を聞いていきます。では左の方、お名前と生前のご職業を」

「私ハじぇろーむト申シマス。生前ハ執事ヲヤッテオリマシタ」


 執事!これは期待できそうだ。


「肉体労働になるけど平気かニャ?」

「問題アリマセン。生前ハ護衛モ兼ネテオリマシタ故、鍛エテオリマス」

「なるほどニャ」

「待遇ノ方デ希望ハアリマスカ?」

「私ハ綺麗ナ服ヲ所望致シマス」

「服ですか?」

「執事トシテ、コノぼろぼろノ格好ガ我慢ナラナイノデス。ソレガ志望理由デモアリマス」

「なるほど……」


 ジェロームの服は、元は仕立てのいいスーツだったのだろうが最早見る影もなくズタボロだ。


「では2人目の……あれ?どこ行った?」

「バッタ追っかけて行ったニャ」

「そ、そっか。では3番目の方」

「オウ!」


 3番は大きな返事と共に立ち上がると、それ呪われてるよね!?と突っ込みたくなるような形状の大斧を肩に担いだ。


「俺ッチハどみにくダ!山賊ヲシテイタ!」

「ウワ、山賊デスカ……」

「オット、勘違イスルナヨ?襲ウノハ金持チダケダ!ソレヲ貧民ドモニばらマクノヨ!金持チハ皆殺シダガナ!」


 う~ん、義賊と言えるのか?微妙だな。骨格は良いんだよな、骨格は。


「えーと、4番目の方は……まだ笑ってますね」

「もうここまででいいニャ」

「そうだね……」


 まだゲラゲラ笑っている4番に諦めの視線を向けていると、ドミニクが怒鳴った。


「兄貴ヲ無視スンジャネェ!」

「兄貴?」

「兄貴分って奴かニャ」

「イイヤ、正真正銘血ヲ分ケタ兄弟ダ!」

「そうなんですか?」


 4番に問いかけてみる。


「ヒヒヒヒヒヒ!オ、オ、俺達ハァァァ兄弟ダアッ」

「ふむふむ、会話は通じるのか」

「まさか、こいつも雇う気かニャ!?」

「まあまあ。話だけは聞こうよ」

「ソウダァッ話ヲ聞ケェェェ!聞ケェェヒャヒャ!」

「分かった、分かったニャ。名前は何ていうニャ?」

「オ、オ、オ、俺ハァァァ!誰ダァァァァァ!」

「兄貴ハまりうすダ」

「ソレダァァァ」

「マリウスさんだね。前世の職業は?」

「グオォォォ、ワカラネェェェ」

「兄貴モ山賊ダ」

「ソウダッタァァァッ」

「もう弟さんに聞いた方が早いニャ」

「そうだけど、これは面接だから本人に聞かなきゃ」

「はぁ。じゃあ待遇について希望はあるかニャ?」

「アメダァッ」

「雨?」


 空を見るが雨が降る気配はない。


「ソウジャナクテ飴ダ。兄貴ハ飴ニ目ガナイ」

「ソウッ飴ダァッ!飴飴飴飴…………」


 会話は成立するんだよな。記憶が怪しいだけで。飴だけで働いてくれるならいいかもしれない。


「ノエル、採る気ニャ……」

「飴で働いてくれるんだよ?赤字続きの黒猫堂にはうってつけだよ」

「うう、そうニャんだけど」

「……赤字は?」

「敵ニャ!」

「敵ハドコダァッ!敵ハ皆殺シダァァァ!」


 頭を抱えるリオ。一方僕は段々とマリウスがクセになってきていた。


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― 新着の感想 ―
[良い点] マリウスおもろかわいい気がしてきましたー
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