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思考進化の連携術士  作者: 楪(物草コウ)
第一章 幼少期 リヒテン編 『信じるものは救われない』
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第六話 初めての魔術

 決意の日からの翌朝、俺はミライに魔法を教えてもらおうとしていた。

安穏としてはダメだと思い、何か子供の身でも役立てそうなこと。

生活の手助けとなる小さな手伝いは勿論のこと、それ以外にも何かできないだろうか。

そうして出た結論が魔法だった。

 吹っ切れた様子の俺に何か感じ入るものがあったのか、しかしミライはすぐには頷かなかった。

それは当然かもしれない。

魔法というものは大きな力だと思う。炎や水など自在に出せるようになるのだから。

それをまだ分別もつかないような子供に使わせてもいいものか、悩むのも当然だろう。

実際は中の人は子供ではないわけだが、それは説明のしようがない。

未だに頭を悩ませ続けているミライを横に、俺はそういえば、と思い出した。

俺は精霊が見える。それを軸に説得してみたらどうだろうか。早速、俺は実行に移した。


 「あのね、ぼく、精霊さんと自分でお話したい」


 あざとい。あざとすぎる口ぶりで攻め立てる。

計算し尽された角度の上目遣いに、涙目をトッピング。更に甘ったるいおねだりボイスを上乗せドーン。

いいか、何度も言うようだがけして第三者の目線で自分を見るんじゃないぞ。死んでもしらんぞ!


 「ううっ」


 明らかに怯みだしたミライ。それでも即頷かないだけまだ耐えている方である。

だかしかし、残念ながらその心の障壁は砂上の楼閣と言わざるおえない。

ミライのウィークポイントなんざ、とっくの昔にお見通しなのだ。

……ミライが単に俺に弱すぎるだけなんだが。

それに輪を掛けてエルフにとって大事なことらしい精霊の話を基点に攻める、攻めるっ。

 罪悪感がないでもないが、あえて今はその痛みを心の奥底にしまっておこう。

これも一種のコミュニケーションなのだ。

ミライは俺の可愛い姿を見て幸せになる。俺はそんなミライの姿を見て楽しむ。

幸せのギブアンドテイクなのである。

 そういうわけで、ミライが陥落するのにものの数分もいらなかった。

ミライ的にはギネスに載る記録だ。よく戦ったよお母さん。後は俺に魔法を教えるだけだぜ。

脱力しきったミライの後ろで子供らしからぬ笑みを浮かべる俺の姿は、まさに黄金色のお菓子が大好きな悪代官であっただろうことは言うまでもない。





 「魔法と魔術?」

 「そう、魔力を使って出来る二つの力のことよ」


 ダイニングテーブルを前に、俺とミライは隣り合うように椅子に座って話をしていた。内容は魔法のことである。

魔力は言わずもがな、魔法を使う為の力だ。

これは天性の才によるらしく、ある人にはある、ない人には全くといってない。

また魔力をもつ者は数百人に一人という確率で、そう珍しいものでもないみたいだ。

そしてもう一つ、魔術。

これは魔法とはどう違うのか、という話を今しているところだ。

ただ……。


 「うーんと、魔法というのは……そうね。精霊さんとお話できたりするわよ!」

 「……うん」

 「歌ったり、踊ったり、とても楽しいのよ!」

 「…………」


 思わず、お、おう。せやな。と言いたくなったが、すんでのところで我慢した。

お母さんがとても楽しそうでなによりです。いや、なによりではない。

さっぱり魔法というものがわからないではないか。


 「魔法ってなに?」

 「とっても素敵なものよ!」


 そうか素敵なものか……なるほど。

つまり要約すると理解を超えた先にあるもの、と考えればいいのだろうか。

うん、意外と的を射てるんじゃないかこれ。

ミライの話は理解できないんだぜ、と思いつつピコーンと思いついた割にはいい線いってそうだ。

とすると、魔術というものは逆に理解の範疇にあるもの、か?

魔法の(すべ)というからには、扱いやすい魔法のようなものか。


 「うん、大体わかった」

 「えっ!?」


 何故そこで驚く、お母さん。

もっと説明したかったのか、自分の話を理解してしまったのに驚いたのかは知らないけどな。

答え合わせのように先程の考えをミライに聞かせると、更に目を見開かせながらもコクコクと頷いていた。

それと「ミコトは頭いいのねぇ。お母さん嬉しいわ~」とほんにゃか笑顔も追加で頂いた。

……こそばゆい、けど嬉しいと思ってしまう俺はやはりマザコンなのだろう。






 「じゃあさっそく魔術を使ってみましょうか」


 はやくね?

なんかまだ前の段階ありそうじゃね? と思ってしまうが、それでいいのか。

例えば魔力を感じることから始める、とか、そもそも俺に魔力があるのかどうか確かめるとか。


 「お母さんの子だから大丈夫よ!」


 ふんす、と自信満々に言うことではない。

全然理由になってないわけだが、なんだか妙に納得してしまっている俺がいる。

 さて、そんな根拠と言えない根拠を理由にぶっつけ本番である。

それと、魔術からなの?魔法は?とも思ったが魔法は誰にでも扱えるようなものではないらしい。

ミライの説明ではその程度のことしかわからなかった。とりあえずは魔術だ。


 「今から教える魔術はね、アナライズって言う自分はどうなっているかなーって見る魔術なの」


 子供の俺にもなるべくわかりやすいように解説しようとするのはわかるが、うん、まぁ。

だが、身振り手振りで一生懸命に教えてくれるミライに水を差すようなことは言えない。

その仕草から家庭教師というよりどちらかと言うと保母さんみたいだな、と頭の片隅で思ってしまった。




 ミライの教え方は、なるたけわかりやすく噛み砕いて説明しているから冗長になりがちだった。

だが、すんなりとその内容が頭に入ってきたあたりやはり先生として優秀なのだろう。

なにより楽しそうに笑顔で教えてくれている分、俺もなんだか楽しい気分になってくる。

ミライにはそういう雰囲気というのだろうか、周りの人を笑顔にしてくれる才能がきっとあるのだろう。

 それはさておき、ミライが教えてくれた魔術について頭の中でまとめてみる。

まず、魔術を使う前には精神を落ち着ける状態にしておかないければならない。

これは魔力というものがとても繊細なものであるかららしい。

精神が高ぶったヒャッハー状態で使おうとすると魔力が暴走し、逆に死にそうなどんより気分な時に使うと魔力に呑まれてしまう。

それも極端な例みたいだが、本人の精神状態によってはいかようにもなる、ということだろう。

 次に詠唱。

魔術には決まったワードを使わないと、そもそも発動すらしない。

今から使おうとするアナライズにもその詠唱が必要であり、正確に言葉を辿らないといけないみたいだ。

魔術を使うってことは記憶力と口が達者じゃなきゃつらそうだな。

また魔術にはランクがあり、下級・中級・上級・最上級・特級と五段階に分かれていて、上にいくほど詠唱する時間も長くなる。

下級に至っては全てが数秒で収まるレベルだが、特級等は数分かかることもあるみたいだな。

まぁこれから使う魔術は下級らしいが。


 「アナライズの詠唱はね……」





 ミライが少し距離を離し椅子に座って俺を見つめている。

俺は気概をつけてなんとなく立ちながら魔術を使うことにした。

いよいよ初めての魔術を使うことになる。未知の力に興奮して俺の鼓動が足早になりつつある。

果たして使えるのだろうか、という不安はあるがなんとなく出来るような気がする。よくわからない。

 教えてもらった呪文を口にすれば魔術は発動する。

下級魔術だから魔力の暴走などの危険は特にない。だが、それとは別に緊張が生まれるのは仕方ないだろう。

深呼吸を一つ。

それは精神の安定、というよりも一つの区切りとして。

深く鼻から息を吸い込み、吐き出す。そうして肺の中からほどよく空気が抜けてきたのを見計らい、唱える。


 「心技体の理を今ここに、アナライズ」


 唱え終わった瞬間、突然目の前に半透明の様々な数値と文字が浮かび上がった。

これがアナライズの効果か?

アナライズという単語からまるでゲームのようだな、と連想していたのだが……。

慣れない視界に戸惑いながらも俺はそのステータスみたいな文字列を見やった。



 名前 … ミコト

 性別 … 男

 種族 … ハーフエルフ

 状態 … 健康

 L V … 1

 H P … 17 / 17

 M P … 2359 / 2359

  STR … F-

  VIT … F 

  AGI … E+

  INT … B+

  DEX … E


 S L … 高速思考Δ

     トゥルースサイト



 色々と突っ込みたいところがあるが……とりあえず一言。

これ、MP多すぎね?

お気に入りに入れてくれている方、ありがとうございます!

ニヤニヤしながら眺めさせていただいてます。ありがたや。

その分、頑張って書こうと思いますのでよろしくお願いします。

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