第4話
初めて訪れた西川先輩の部屋は、良い匂いがして、心臓がふわふわしてて、あまりの緊張から、ベッドから動けなくなってしまった。
西川先輩はお菓子とジュースを持ってきてくれて、その後に、膝の上に置いてる手しか見れないあたしの顔を覗き込んでくるの。
「ツゥ」
「っ」
隣に座った西川先輩の体温を感じて、また心臓が動き出す。緊張をほぐすために、ゆっくり深呼吸をするのだけど、それも駄目。西川先輩の手があたしの背中に触れて、優しく撫でられたら、そのまま溶けてしまいそうになる。
西川先輩の唇が、頬に触れた。あたしはびっくりして、肩をすくませた。西川先輩はあたしを抱きしめた。とても大切に、優しく抱きしめられたから、あたしも西川先輩の背中に触れてみたの。
西川先輩は温かくて、優しくて、背中の後は頭を撫でてくれて、あたし、ずっとこのままでいたいなって思ってた。何分間やってたのかわからない。何時間かもしれない。先輩と抱きしめ合うのが好きだった。恥ずかしかったけれど、こんなの、絶対に人には言えなかったけど、でも、西川先輩とこうして触れ合うことが、大好きだった。
だから、西川先輩にゆっくりベッドに押し倒された時も、あたしは緊張してたけど、怖くはなかった。西川先輩が、こんなふうに、硬い声で聞いてきたの。
「ツゥ、……触ってもいい?」
「……はい……!」
緊張しすぎて、声が上擦った。かなり恥ずかしかった。でもちゃんと返事はした。気持ちは伝えた。先輩もあたしをバカにはしなかった。優しく、本当に優しくあたしに触れてくれたの。
西川先輩ってね、足が好きなの。太ももを触る手が、すごくエッチなの。あまりにもエッチだから、あたしの体が震えてきて、勝手に感じやすくなってしまって、そうなるといつの間にかパンツが濡れてきて、それを見られるのも恥ずかしいし、知られるのも恥ずかしいから、ちゃんとドアの鍵を閉めてもらってから、二人で脱ぎ合って、ちゃんと裸になって、触れ合ったの。キスは苦手だけど、西川先輩が沢山キスしてくれたから、不慣れでも頑張ろうと思って、あたしも沢山西川先輩にキスしたの。
西川先輩は触れ合ってる間、ずっと耳元であたしの名前を呼んで、好きって言ってくれた。だからあたしも、小さな声だったけど、恥ずかしかったけど、でもちゃんと西川先輩の耳元で伝えてたの。
先輩、好きです。恥ずかしいけど、先輩と、こうしてるの、気持ちいいです。キス、好きです。いっぱい、したいです。触られるの、気持ちいいです。あの、あっ、そこ、気持ちいい、です。あたしも、先輩に触りたいです。あ、胸、すごい。柔らかい。先輩、あ、好きです。先輩の手、気持ちいい……。ん、キス、ですか? はい。してください。キス、したいです。ん……、……先輩……。西川、先輩、あ、や、駄目です。名前、呼べません。恥ずかしいです。……い、1回だけ、なら、あの……うんと……、……り……リン……ちゃん……。……あ、せ、せんぱ……ん……ふぅ……あ……先輩……。
沢山キスされて、沢山触られて、あたしの処女は、多分、というか、確実に、あそこで卒業した。指、入れたら、血が出たけど、でも、それもちゃんと西川先輩が綺麗にしてくれて、それからも、何度か、西川先輩のご両親がいない時に、部屋で、秘密で、ベッドの中で、先輩が、耳で、囁いてきて、裸で、触り合って、声を堪えて、キスして、触って、脱いで、愛し合って――。
「BLとかさ、本当に何がいいのか全然わかんない」
「同性愛とか、人の道から外れてるじゃん。気持ち悪い」