~四章~ 「厄災でも頑張ります!」
『能力鑑定』が終わり、お部屋に帰って即お布団でふて寝してる私。……ふて寝しかする気が起きません。……しくしく。
だってデビルスキルだもん……勇者なのに。
呪われてるもん……勇者なのに。
私はお布団に潜り、もう一度ゆっくりと自分のクラススキルについて観察してみた。……が、やはり呪い以外の何物でもない。
『厄災の魔女の呪い』……二千年前に魔王を産み出したとされる恐ろしい魔女。この世の全ての元凶と言っても過言では無い。
『成長率減少(極大)』……やはりそのままの意味で、ステータスが伸び悩むのだろう。
『経験値減少(極大)』……これもかなり不遇なスキル、レベルが上がりにくくなるのだろう。
『スケープゴート』……自分が本来受けるはずのダメージの半分を、味方に肩代わりさせるスキル。これが一番厄介なスキル。これがある限り、余程の理由が無ければ、パーティーを組みたいと言う奇特な人物はそういないだろう。
『逃れられない死の呪い』……これに関しては、全くの不明である。恐らく何かしらの呪いだとは予想出来るのだが……。決して良いスキルでは無さそうである。
『鑑定』……冒険者の大半が所持しているスキル、約七割の冒険者が獲得している。一応あると便利、無ければ鑑定屋さんに頼るしかない。
……以上。
実質使えるスキルは『鑑定』のみだった私。しかも、レベル1。……うーん、これはもうふて寝するしかありません。
ほんと……どうしよ?
だって明日から一週間以内にパーティーを決めないといけないんですよ?
明日は学校で、新入生歓迎会が開催されるのですが……。この新入生歓迎会で仲良くなった人を誘ってパーティーを決めるそうなんです。
楽しいはずの歓迎会が憂鬱です。
うー、行きたくないよぉ。絶対ぼっち確定だよぉ……。しくしく。
イズミは明日のぼっち状態を想像し、ふて腐れながら眠りについた……。しくしく。
─翌日。
「わぁい、美味しそうなケーキ。あっあれも美味しそう!」
わーい!歓迎会、楽しー。学園長の挨拶が終わり次第、即料理の所に行き……もぐもぐと料理とデザートをほおばる、イズミ。
しばらくすると、次は王子の挨拶が始まりました。……あ、王子様だ……もぐもぐ。
王子は挨拶を手短に終えると、前に出てこう話始めました……。
「皆聞いてくれ、私のパーティーメンバーを紹介する。」
「一人目……火の勇者、グエン。」
王子に呼ばれると、一人の男子生徒が元気よく返事し、出て来ました。続いて……。
「二人目……土の勇者、ハイン。」
同じく、王子に呼ばれて出てくる男子生徒。
「そして……三人目は……。」
「光の聖女、セレナ。」
はいっ、って元気よく返事が聞こえ。セレナちゃんが出てきました。やっぱりセレナちゃんは凄いみたいです。
……しかし、場の雰囲気がおかしく。
なんか……ざわざわしています。……耳を済ませて聞いてみます。
「……えっ?どうしてユミリア様が入ってないの?」
……ざわざわ。
「ユミリアではなく……セレナを?」
「確か、王子の婚約者だよな?」
「婚約者のユミリア様ではなく、セレナ様を……?」
「しっ!聞こえたら不味いことになるぞ!」
「静粛に!」
王子の言葉と、共にその場は静けさを取り戻した。
「以上が私のパーティーメンバーだ、以後よろしく頼む。」
「……そして、次は。そうだな、序列的には侯爵令嬢のユミリア……君の番だ。」
……皆の視線が侯爵令嬢のユミリアに集まる。
「……どうするかね?」
そう、言われるとユミリアは前に出て話始めた。
「そう……ですわね、私も今丁度パーティーメンバーを心に決めた所です。」
「……ほう。」
「メンバーは……。」
「シオン、リカルド。」
そう呼ばれると、スッと二人の生徒が前に出て来ました。
「シオン、リカルド。私のパーティーに入って頂けるかしら?」
「かしこまりました。」
「断る理由はありませんね、了解致しました。」
「そして、もう一人は……。」
「……イズミ。」
……そう呼ばれても、誰も前に出てきませんでした。うーん、どうしたのかな?お腹でも痛いのかな?呼ばれてますよー!イズミさー…………………。
「あれ!?私?」
……はい、全員が私を見てます。と、言うか……めちゃくちゃざわざわしてます。
「何考えてるのかしら?ユミリア様は……。」
「え?あれって例の厄災の勇者?」
「あの二人は、妥当だと思うが……呪いの勇者は嫌だぜ?」
……ざわざわ。
「どうしました?……イズミ。お返事をお聞かせ頂けるかしら?」
……えっ、え!?……私呪われてますよ?
「あ、あの……。私呪われてるらしい……のですが……あの……。」
「私は貴方に、パーティーに入って頂けるか?……としか、聞いていませんよ?」
「それ以外の返事は、やめていただけるかしら?」
「はっ、はい!よろしくお願いします!私、頑張ります!!」
……私は頭で考えるより速く、返事をしていた。