~十一章~ 「モンスターさんをテイムします!」
そんな訳で四週目です。
前回ユミリアさんに励まされ、勇気を分けて貰った私でしたが。
やっぱりもう、心が折れそうです。
後ろで見ているだけで、何か出来ない私……。
呪いの分散スキルで、戦え無い私……。
勇者なのに、ステータスが低く弱い私……。
呪いのスキルで、成長が遅い私……。
私に出来る事なんて、ホントにあるのかなぁ?
色々パーティーの皆さんの足を引っ張って、申し訳なく思う毎日です……。
とりあえず前回同様、ユミリアさんに説明後。ニブル平原でシオン君とリカルド君に説明を終え、ワニさんでレベル上げです。
テティスちゃんのレベルは、1ですからね。テティスちゃんは私より、よっぽど重要な戦力です。
そういえば前回はワニさん、何体倒したんだっけ?30体くらいかな??
とりあえずワニさんを、ザシュザシュ倒し中の私です。一応腐ってもレベル35の勇者なので、ワニさんくらいなら何体居ても楽勝ですね。
でもステータスはレベル11のリカルド君と、ほとんど同じくらいしかありません。
その後コルトムーン山でレベル上げをし、ダンジョン王家の墓に挑みます。
「イズミ、この階の情報は?」
「はい、25階はかなり厄介なモンスター、ドッペルゲンガーがいます。皆さん気を付けて下さい。」
ドッペルゲンガー モンスターレベル25 属性無
物理ダメージを反射。魔法に弱い。
「かなり強敵です。皆さん気を付けて下さい。」
前回はユミリアさんの攻撃魔法で一掃したんだっけ?初めてここに来た時、シオン君が攻撃して瀕死なって大変でした……。
真っ黒な物体が沢山やって来て、うにょうにょ動き私やシオン君、リカルド君の姿にゆっくりと変形していきます……。黒いから間違える事はありませんのでそこは、安心ですね。
「待って、イズミ。属性無なのよね?イズミのレベルは今確か、35よね?……テイム可能なんじゃない?」
…………。
──!?
「あっ……。」
私はすっかりテイムの件を忘れていました。
私のレベルは今レベル35ですよね?じゃあ、レベル25のドッペルゲンガーさんを、テイム可能なレベルになってるんです。
私はドッペルゲンガーに近付き、両手かざし叫びました。
「仲間になりなさーい!」
「……。」
「イズミ、何それ?」
「えっ?いやー、テイムってこういう感じなのかなーって。」
するとドッペルゲンガーさんはうにょうにょ動き、リカルド君の姿から私の姿に変形しました。それと同時に、他のドッペルゲンガーさん達は、一斉にうにょうにょ動き、何処かに行ってしまいました。
「仲間に、なったのかな……?」
「……そうみたいだね。」
何だかよく分かりませんが。同じモンスターをテイムしていると、仲間だと思って襲って来ないみたいです。……うーん、一体どういう仕組みなの??
私の姿……(真っ黒)のドッペルゲンガーさんは、何やら私の前で左右に動き回り、手をぱたぱたさせています。
「うーん、何だろ?お腹でも空いてるのかな-?」
つんつん……。
「何、どうしたの?」
テティスちゃんが、私をつんつんしてます。
「なまえ つけてって いってる」
名前かー。
「ここはやはり、ドッペルゲン蔵だな。」
シオン君?……何、そのネ-ミングセンス……。
「ドッペライオス三世にしようよ。」
リカルド君?……何で三世なの……。
「ドッペリーヌにしましょうよ。」
ユミリアさん?……男の子だったらどうするの?
つんつん……。
「ぶらっくいずみ」
テティスちゃん?……それは流石に却下だよー?
「と、言う訳で。名前はペルちゃんに、決定しましたー!!」
ぱちぱちぱちぱち……。
「さらばゲン蔵……達者でな……。」
「あーやっぱり、三世が駄目だったか-。」
「さよなら……ペリ-ヌ……。」
うん、皆さん。何かごめんなさいっ。
「ぶらっく」
ブラックは却下だよー?
名前を付けられたペルちゃんは、ふよふよ動きとても嬉しそうでした。
──26階。
ぽつーん。
部屋の隅っこで膝を抱え、一人寂しく体育座りして時間を過ぎるのを待つイズミ。
「ぼー。」
何もする事がありません……。退屈です。
…………。
「暇です!」
…………。
……どうしよう??
ちなみに私が今、何故この様にぼっち状態なのかと言うとですね……。
──時は遡り。
「イズミ、この階の情報を頼む。」
シオン君の問いかけに、私は皆さんの方に走り寄りこの階の説明を始めました。
「この階はですね。モンスターさんは少ないのですが、一つ厄介な仕掛けがありまして。ボタンを三つ押さないと、下へと続く階段の扉が開かれない仕組みになっています。」
私達は一つ目のボタンの部屋に、辿り着きました。
「この部屋です。この部屋の中央にあるこのボタンを押すと扉が閉まり、ボタンを押した人が閉じ込めらる仕組みです。これを三回繰り返すと27階への階段が出現します。」
「なるほど……。つまり三人押して行って、最後は一人で階段の扉まで、行かないといけないのね……。」
「これは順番を考えないと、いけないようだな……。」
「そうだね……。必然最後に残る人が重要になってくるね。」
そうなんです。最後の人はたった一人でモンスターさんを倒しながら、階段の扉まで辿り着き。そしてゴール地点にある、最後のボタンを押せば全ての扉が開かれ、無事皆さんと合流出来るのです。
人選が大事なクエストになりますよね。
と、言うわけで……。
「押しちゃいますね。」
「……えっ!?」
「ちょっと待ってよ、イズミ。ここは慎重に順番を決めないと、大変な事になるよ?」
「そうだな……。誰が一番最後に残るか……。それが問題だ。」
「……えっ?」
「えっ?」
「え?」
「……。」
…………。
「で、でもぉ……。私、分散ダメージがあるから……。前もその前も、その前も。最初は私だったので……。」
…………。
…………。
「えと……押しますね?」
…………。
「ご、ごめんね?イズミ……。すぐ戻るから!」
…………。
「……行ってらっしゃい。」
──ポチッ。
──ゴゴゴゴゴゴ。
という、感じです。
…………。
……ぐすん。
やはり一人ぼっちだと、寂しくなりますし不安になってしまいます。
特にこれからの事が……。
自分が全く活躍出来ていない事……。
最初は活躍出来ていたけど、やはり下層のモンスターには敵わない。
自分の弱さと未熟さ、そして呪いのスキルに落ち込むイズミ。
そしてこれからの事……。
普段は明るく振る舞うイズミだが。……やはりこれからの事を知っているので、恐怖に押し潰されそうになる。
魔王軍に全く敵わない事。
魔王の元にすら辿り着けず、その幹部に敗北し手も足も出ない事。
ユミリアさんや、シオン君、リカルド君が傷付き倒れていく……。その場面が何度も頭を過り、頭から離れない……。
…………。
「怖い……怖いよぉ。」
…………。
このままダンジョンを攻略し、レベルを上げれば、いつかは魔王を倒せる日が来るのだろうか?
……このままでいいのだろうか?
……本当に倒せるのだろうか?
決して、逃れられない死の呪い……。
この言葉が、呪いのスキルがイズミに重くのしかかってくる。
そもそも魔王を倒す事など、本当に出来るのだろうか?
このまま……本当に……。
──ちょんちょん。
テティスちゃんが、私をちょんちょんしてます。
…………?
「いずみ どうしたの げんきない」
…………。
「げんきだして」
…………。
私はテティスちゃんの言葉に感激し、泣きそうになっちゃいました。
テティスちゃんを手でわしっと掴み、頭を寄せる私。
「テティスちゃん、ありがどおぉー。」
テティスちゃん、ほんといい子。
ペルちゃんも私に近付き、心配そうに私を見てます。
ペルちゃんも、ほんといい子。
…………。
「最初この部屋、私一人だったなぁ……。」
私は一週目、一人でこの部屋で過ごした時の事を思い出しました。
でも今は、テティスちゃんが、ペルちゃんが居ます。
「そっか、一人じゃないよね……。」
──ゴゴゴゴゴゴ。
扉が開き、しばらくすると皆さんが戻って来ました。
「イズミー。ごめんね、遅くなって……。」
大急ぎで、慌てて私の元に走って来てくれる。ユミリアさん。
「待たせて、すまない。」
「お待たせ、イズミ。」
皆も大変だったのに、私を暖かく迎えに来てくれる皆さん。
そうです。私は一人なんかじゃない。
皆がいる。
大切な、かけがえのない仲間がいる。
…………。
私は一人ではなく、皆と頑張ろうと。改めて思う私でした。
「いずみーくるちぃ はなしてー」
ばたばた。
「あわわわ、ごめんなさーい。」