~十章~ 「三周目も頑張ります!」
──!?
夜中に汗だくになり、声にならない叫び声を上げる私……。
…………。
…………。
「戻ってる……よね?」
大丈夫と自分に言い聞かせながらも、一応心配になり確認の為にユミリアの部屋に向かった。
確か前回は起きてたはずだよね……。
コンコン……。
ノックするが返事は無い……。
キョロキョロと周りを見回す。
「どうしたの?こんな時間に……。」
ユミリアの姿を確認し、ほっと息を撫で下ろすイズミ。
「ユミリアさん、大事なお話があります。……部屋に入ってもいいですか?」
「こんな夜中じゃないと駄目なの?それ……。まあ、別に構わないけど……。」
私は今迄の経緯を全て、ユミリアさんに話しました。
…………。
「それを私に信じろと……?」
……あれ?半信半疑所か、ユミリアさんは疑いの眼差しです。
「鑑定!ほら、私レベル27です!」
「そうね、27よねぇ……。」
「妖精!ほら、可愛いテティスちゃんです!」
「そうね、妖精よねぇ……。」
テティスちゃんは私の手の上で、可愛くポーズを決めお辞儀します。
「ぺこり」
「そうね、可愛いわよねぇ……。」
テティスちゃんと二人で、ユミリアさんをじーっと見ます。
「…………うっ。」
「分かったわよ、信じるわよ!」
何とかユミリアさんには信じてもらえたみたいです。明日はシオン君とリカルド君にも説明しなきゃ……。
──翌日。
学園からニブル平原迄の道の途中で、前回同様シオン君とリカルド君に説明をしました。
「…………。」
「うーん。」
うーん、やっぱり二人は半信半疑の様子です。そりゃあ、そうですよねぇ。
しかし流石に私のレベルと妖精さんのテティスちゃんを見て、一応信じてはくれたみたいです。
「しかし、このままではまた同じ道を辿るのではないのか?そうだな……何か対策を講じないとな。」
「イズミ、前回の三年間で何かこう……気が付いた事とか。対策は無いのかい?」
……。
私は、無言で首を振りました。
前回は49階まで攻略し、皆さんのレベルは49に。私は27になりました。
でも魔王に会う所か、それ以前の魔王四天王の一人にすら全く歯が立たず、全滅をしてしまいました。
このままでは……このままではまた、同じ事を繰り返すだけになってしまいます。
皆さんもそれは承知で頑張りましたが……。
それほどダンジョン王家の墓の、下階層の難易度は高く。皆さんは苦戦をしていました。
もちろん私は見ているだけでした。
「何か対策を考えないとなぁ……。」
「そうだな。」
「でも、49階迄の攻略情報はあるんでしょ?」
「あっ、はい。それはきちんと覚えてます!」
そこは絶対にわすれません!……今の私に出来る事なんて、これくらいしかありませんからね。
「まあ、後三年もあるんだし……。ゆっくり考えようか。」
とりあえず今、出来る事を頑張るしかありません。
と、いう訳で。今日はニブル平原のワニさん退治です。
テティスちゃんのレベルが1に戻ってますので。皆さんのレベルアップも兼ねて、私も頑張らないと……。
テティスちゃんは重要な戦力ですからね。
「やあっ!」
私はワニさんに向かって、剣を振り下ろしました。
確か前回の私はレベル17で、えーと。
思い出しました。ワニさんの討伐は二体です。
今はレベル27!少しはやれるはず??
──ザシュ、ザシュザシュ!!
「凄い凄い!」
私は自分の成長にびっくりしてしまいました。
一応腐っても勇者レベル27。
ワニさん退治くらいは余裕の様です……がぶっ。
「……がぶっ?」
──ザシュ!
私は慌てて噛みついて来た、ワニさんを撃退しました。
「痛いなぁ、もう!」
本日の結果は、ワニゲーターさん討伐32体でした。
この後、私はコルトムーン山でもそこそこ活躍出来。
予定をさらに1ヶ月早め、ダンジョン"王家の墓"攻略に挑みました。
23階迄の攻略を終えて、私達はさらに下の階に向かいました。
「イズミ、この階の情報は?」
「あっ、この階はですね……。」
私はこの階の説明を終え、ユミリアさんと二人、入り口付近で待機しています。
「うーん。やっぱり戦えないのは悔しいなぁ……。」
「今回は私もなんだから、一緒じゃない?……気にする事なんて無いわよ?攻略情報で助かってるんだから。」
「そうなんだけど……。」
24階は特に仕掛けも、罠も無いものの。出現モンスターが強く、そのほとんどがアンデッドで。特にスケルトンが強敵でした。
スケルトン種の骸骨剣士。
物理に耐性あり。魔法が弱点。炎、光魔法に弱い。……しかし、水と風の魔法を無効化し、闇魔法を吸収する。
つまり、私とユミリアさんはお留守番です。
テティスちゃんの魔法は、効くのよね……。凄いね。
「…………。」
私はこれからの事を考え、不安になっていました。
本当に魔王軍に勝てるのか?また前回と同じ様な運命を辿ってしまうのではないか?
……確かにイズミも皆も頑張っている。しかし、特に打開策も何も無いまま、前回と同じ様にダンジョンを攻略するしかないこの現状に。
イズミは暗い気持ちになっていた……。
この呪いの能力により、パーティーの足を引っ張っている事を。皆の頑張りを無下にしている事を……。
そしてなりより、大切な仲間が傷つき倒れていく恐ろしさを……。
イズミは痛いほど理解し、何も出来ない自分が悲しかった……。
「…………。」
「ねえ?イズミ。私が貴女をパーティーに誘った日の事を覚えてる?」
「……え?あっ、はい。覚えてます。」
「私ね、あの時……。エミュール王子が私ではなく、光の聖女を選んだ時。……物凄く腹が立ったの。だから当て付けで貴女を選んだの……。でもね?それが半分。もう半分は……。」
「……え?」
私は何の話だろう?と、戸惑ってしまいました。
「貴女のスキルに可能性を感じたからなの……。だって司祭様でも鑑定出来ないスキルなのよ?しかも二千年前に魔王を産み出した伝説の魔女。……きっと何かあるに違いないわ。」
ユミリアさん……。
「私の勘は、やっぱり当たってたって事よね。だってイズミのお陰で、対策が打てるのだから……。ありがとうね、イズミ……。一緒に頑張りましょう。」
「ユ、ユミリアさん……。うえーん。」
私はユミリアさんの、あまりにも優しい言葉に泣き出してしまいました。
「終わったぞ。」
「お待たせー。あー、またイズミが泣いてる。あまりいじめちゃ駄目だよ?ユミリア。」
「だめおー」
スケルトン討伐が終わり、皆さんが帰って来ましたが。私の顔は涙ぐちゃぐちゃです。うえーん。
「なっ……。なんでそこで、私になるのよ?もう。」
ユミリアさんの優しさに、勇気を分けて貰った私でした。