~九章~ 「モンスターのおやつはごめんです!」
深刻な事態です!早く皆さんと合流しないと、本当に食べられてしまいます!
こんな所で、モンスターのおやつになる訳にはいきません。
私は急いで周りを見渡し、上への階段を探しました。
「た、確かこの階は……。」
ちょんちょん。
私は必死に前回の記憶を頼りに、思考を巡らせ上への階段を……。
ちょんちょん。
──!?
誰も居ない筈なのに、誰かが私の肩をちょんちょんしてます。
「ひゃっ!?」
私は驚き。叫びながら振り向くとテティスちゃんが、両手を上げて驚いたポーズをしていました。
──!?
「テティスちゃん!?」
私は驚き、一体どうやって追いかけて来てくれたんだろう?と天井を見上げましたが、上への通路はもう塞がっていました。
あの一瞬で、追いかけて来てくれたのかな?……まあ翔べるしね。流石妖精さん。
しかし、私が……。
「すぐに翔んで追いかけて来てくれたの?……ありがとう。」
と言うと、テティスちゃんは思いっきり頭をブンブンと降って、可愛く否定しました。
……え?
「じゃあ、一体どうやって?」
テティスちゃんは可愛くポーズを決めて……。
「ててぃすわーぷ」
ドヤ顔で、そう言いました。
──!?
「そんな魔法が……!?」
いや、スキルなのかな?とりあえず鑑定っと……。
スキルの項目の、浮遊の下に『ててぃすわーぷ』なるものが。
「こんなのあったかなぁ……?」
『ててぃすわーぷ』
どんなにはなれていても ますたーのもとへ しゅんじにいどうするよ
……どうやら私はマスターみたいです。お友達でいいんだけど……。
でもテティスちゃんが居ればなんとか皆さんと合流して、モンスターのおやつになることは避けられるかも知れません。
「テティスちゃん、そーっとそーっと行くよ。」
テティスちゃんは無言で、こくりとうなずく。
そーっと、そーっと……。
「あっ。」
──びたーん。
イズミは何かに躓き、転んでしまった……。
「あいたたたたぁー。」
顔を上げると目の前に、ワニさんの顔がありました……。
「ひゃあああああ!」
私はすっとんきょうな声を上げ、無我夢中で走り出した。……武器を持った人型のワニさん。つまりリザードマンの群れに見つかってしまったみたいです。
「な、何とか階段を見付けないと……。」
しかし角を曲がると……そこは行き止まりでした。
……振り返るとワニさん達がよだれを垂らし、私をおやつにしようと、じりじりと近付いて来ます。
──!?
「こうなったら、やるしか……。テティスちゃん行くよ!」
私一人ならおやつ確定だったかもですが、テティスちゃんと二人なら何とかなるかも知れません。やるしかない!
「いくよー」
テティスちゃんもやる気です。
突如テティスちゃんが翔び上がり、眩い光に包まれ。
「ててぃすしーるどぉ」
──!?
テティスちゃんが、いつの間にか新魔法を覚えたみたいです。……私の体が光に包まれ防御力が上がります。
……これ、凄い便利な魔法じゃないですか!?
「ててぃすかったー!」
テティスちゃんの魔法が炸裂し、次々とリザードマンをなぎ倒していきます。
「凄い凄い!」
……リザードマンは残り後五体。
するとテティスちゃんはヘロヘロと、力無さげにこちらに向かって翔びながら……。
「ててぃす まほーぎれ」
テティスちゃんの魔力が、どうやら切れたみたいです。
「大丈夫、後は私に任せてっ!」
私は一気に距離を詰め、ワニさんに斬りかかります。
「やあっ!」
──カキンッ。
私の剣は、あっさりとワニさんの盾に防がれ、ワニさんはこちらを見ながらよだれを垂らし、私目掛けて剣を振り下ろします。
「あわわわわわ。」
私はパニックに陥り、何も出来ませんでした。
「イズミー!」
──シオン君の声がっ!?助けに来てくれたの?
シオン君の斬撃が、一、二、三、四閃。
──シュババババッ!!
瞬く間にワニさんを撃退していきます。残る一体は……逃げて行ったみたいです。
「た、助かったぁ。」
私は一気に肩の力が抜けて、その場に倒れ込んでしまいました。
「間に合って良かった。」
「心配したよ……イズミ。無事で良かった。」
「もう……心配させないでよね?」
皆さんが私を心配する中、私はそのまま気を失ってしまいました……。
ダンジョンの攻略は進み、現在は23階に居ます。
「イズミ、23階の情報は?」
「はい、23階は宝箱とミミックさんしかいない階層です。……前回はミミックが多過ぎて、宝箱はほとんど開けずに次の階に行きました。ちなみに私は3回食べられちゃいました。」
「…………。」
「た、食べられたの置いといて。……ミミックは厄介ね。」
ユミリアさんが、うーんと少し考え込みます。
「鑑定のスキルは魔物には効くが、ミミックにあまり効果が無いからな……。」
「厄介だよね……。うちのパーティーには盗賊が居ないからね。」
やはりシオン君とリカルド君も、宝箱を見ながら少し悩んでるみたいです。
つんつん……。
テティスちゃんが私をつんつんします。
「どうしたの?テティスちゃん。」
「それだめ」
「どうゆう事?」
私は何の事か、聞き返します。
「ててぃす もんすたぁと はなしできる」
──!?
テティスちゃんにそんなスキルがっ!?……いや妖精さん故の成せる技なのかも知れません。
「それ おなかすいたって いってる……」
「…………。」
「…………。」
どうやら開けない方が、良さそうです……。