プロローグ
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「ああっ!」
叫びながら起き上がる。
「……あれ?生き……てる?」
(死んだと思ったのに……生きてる。怪我も無いみたい……魔法で治療してもらった……のかな?)
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ハッと我に返る。
いや、今はそんな事はどうでも良かった。
「皆は!?」
急いでベッドから飛び起き、廊下に走り出た。辺りは真っ暗だったが、目が慣れているのと、窓明かりから差す光でなんとか周りは見えた。
「皆……ユミリアさん……。」
周りが暗いせいか、それほど必死だったのか、何度も壁に当たり、よろけながらも走り続けた。
─────────。
記憶が鮮明に蘇る。
学園、王国軍。全てを投入した魔王討伐戦争。私達のパーティーは魔王にたどり着く事もなく。全滅した……。
手も足も出なかった……。
いや、実際には私は戦ってすらいない。全くの戦力外であり、足手まといだったからだ。
私は流れ弾に当たり、死亡したと思った……。
たたたたたっ。……ドンッ!
「あいたっ!」
なおも走り出す。男子棟は離れており、かつ女生徒は基本入れないため、まず同性であるユミリアの部屋に向かった。ユミリアがパーティーで一番仲の良い友人だったのも勿論あるのだが。
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また、記憶が鮮明に蘇る。
「……シオン君。」
ユミリアを庇って倒れた、シオン。
「……リカルド君。」
魔王軍四天王の一人と戦い、敗れ倒れたリカルド。
先ほどの戦いの記憶がまた鮮明に蘇る。
──────────。
しばらく走っているとユミリアの部屋が見えた。激しくノック……。いや、激しく叩いた。
「ユミリアさん!ユミリアさん!!」
………。
返事は無かった。
何も聞こえなかった。
静寂。絶望とも思える静寂。
………。
無いのは解っていた。
あるはずもなかった。
あんな状態で生きてる人間等いないのは、自分でもよく分かっていた……。
脳裏にユミリアの最後の姿が過る。
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……力が抜け、そのままべたんと、床に崩れ落ちる。
……。
「うぐ……ううっ」
イズミは泣いていた。いや、顔はもうすでに涙でぐしゃぐしゃだった。
そのまま座り込み泣い──────────────。
「……何をしてるの?私の部屋の前で。」
……!?
「えっ!?泣いてるの?なんでっ!?」
泣いているイズミの姿に驚く、黒髪の少女。
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………えっ!?
……なん……でっ!?
「生きてる!?」
私は、そう叫んだ瞬間に……ユミリアさんに抱きついていた。いや、飛びかかって抱きついていた……。