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第6話 近衛騎士団団長、王国騎士団の内情

第二王子、第一王女が王座の間から出て行ったあと。

「よかったのですか?…慣習とはいえ陛下の前での凶行ですよ?」

主の指示により成り行きを陰から、静観していた近衛騎士たちが出てくる。

「よいのだ、クルト」

クルト、王にそう呼ばれた人物

近衛騎士用の純白の鎧を纏った茶髪の一見、軽薄そうな若い男

クルト・ブラウン、近衛騎士団団長にしてこの国最強と呼び名の高い人物。

「それにしても、グレゴール?君、油断していたとはいえ、あれだけ馬鹿にしていた王女殿下のナイフを躱せないなんて…近衛騎士団副団長が聞いて呆れるね」

早々にグレゴールを煽りだすクルト、この団長どうやら見かけ通りの性格のようだ。

「っ!?…陛下、傷の治療をしてまいりますので…少し」

「ああ、行くがいい」

「…ありがとうございます」

そのまま、王座の間を出ていくグレゴール。

「ふむ、わしとしては近衛騎士の団長と副団長が不仲なのは、少々問題だと思うのじゃがな」

「問題ないでしょう…だってグレゴール、決闘で死ぬでしょうし」

「…ほう、クルト、お前は決闘にリリーが勝ち、そのままグレゴールを殺害すると?」

「十中八九そうなるでしょうね」

「リリーは能力を開花させて、修羅になったとでも言うか?」

「その表現が適格でしょうねー…第一王女殿下、このままでは殿下を馬鹿にしていた連中を皆殺しにしかねないですよ?…それこそ殿下を無視していた陛下を含めてね」

「…それほどまでか」

「早速に首輪をつけた方がいいですねぇ」

「首輪、というのは」

「彼女を、近衛騎士にしてしまいましょう」

「…王族を近衛騎士に…前例は…確かあったな」

王族の近衛騎士、この国にはつい数十年前に存在した。

「俺としても今の殿下と正面から殺しあうとなると正直、あまり相手をしたくないですね」

「それほどまでか」

「そうですね、ですが何故だか王女殿下は騎士という物に強いこだわりがあるようです」

「それで、近衛騎士に、か」

「ええ、今の王女殿下とはぜひ手合わせしたいですからね、殿下が近衛騎士になればいつでもできるようになる」

「…相手にしたくなかったのではないか?」

「模擬戦は別物でしょう」

「…そうか」

(…リリーには、あまり刺激しないよう、努めて相手にしてこなかったが…失敗じゃったか)

リリーをあまり追い詰めぬようにするがゆえに、相手をしてこなかった王。その選択が逆に彼女追い詰めてしまったようだ。

(…これからどう行動するかが重要、じゃな)









「先生は一体どこへ…」

「さあな…クソっ、あの団長め、まさか先生を追い出すなんて」

「…全くだ、ありえない」

私はイリーナ、王国騎士団「獅子隊」の隊員の一人です。

そして騎士舎のこの部屋に集まる私以外の2人は同じ「獅子隊」の面々で、さらに私と同じ元落ちこぼれです。

先生の、レント先生の指導によって、「獅子隊」の隊員にまでなれた面々。

私たちは先生の退団の後の足取りを追っていたが全くつかめません。

「….はぁ」

私がため息をついたとき、部屋の扉が開く。

入ってきたのは私たちと同じ先生に救われた獅子隊の一員。

「…た、大変だ」

彼はなぜか絶望感を漂わせている。

「…ど、どうしたのですか?」

「…先生が…死んでいた」

「….えっ?」

「なっ」

「は?」

待って、どういう。

「王都外れの安宿で、遺体を見てきた…先生で間違いない」

「…そんな」

私は崩れ落ちてへたり込みます。

「…く、クソ、こんな結果」

「あの団長、ゆるさねぇ…」

先生が…死んだ?こんなにあっさり?

「先生…」

最後の、会話があれなんて…。

なんて…なんて…残酷なのでしょうか…この世界は。









「どういうことだ!副団長!」

王国騎士団で怒鳴り声を上げる、部屋の主である騎士団長。

「…と、言われましても、このまま事務が回っていない状況では、そのうち演習すらできなくなると」

「なぜだ!」

無能を首にし、予算が増え、ここまで順風満帆だった王国騎士団。

しかしここで、事務が機能不全に陥るという事態に遭遇していた。

「…それは…彼が、レントがいなくなったからでしょう」

「…なぜ!そこであの無能の名が」

「…どうやら彼が事務作業の大部分をになっていたらしく…現状では事務作業員を大幅に増やすしかないでしょう」

「…それでは予算が増えた意味がないではないか!」

頭脳労働の労働力というのは、人件費が高い。

「…しかし、それしか手は…」

「…クソ、グレゴール様に相談するしかない、か」

騎士団長の後ろ盾は近衛騎士団副団長グレゴールなのでである。グレゴールのおかげで彼は王国騎士団長になることができた。

「早速、グレゴール様と話してくる、副団長、留守はまかせるぞ?」

「…ええ、了解しました」

そのまま団長室を出ていく、騎士団長

「…はぁ、上位者に媚びを売ることしかできない、無能団長様は…素直にレント君に謝罪して戻ってきてもらえばいい物を」

副団長は嘆く。

「…情勢が不安定で、さらに「魔王軍」にまで動きのある今、王国騎士団がこれでは…この国は本当に大丈夫なのだろうか」


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