幸せの青い鳥
幸せの青い鳥というお話がある。貧しい兄妹が妖精に頼まれて、幸せの青い鳥を探す物語。
兄妹は思い出の国、夜の御殿、幸福の花園、墓地、未来の王国を旅して、色々な青い鳥を見つけ出した。ただどれも、世界を渡ると青い鳥は別のものへと変貌する。
最終的に兄妹は自宅の鳥かごに青い鳥を見つける。幸せとはすぐそこにあるものだという童話。
私は思った。兄妹は本当の幸せを見つけた。でもそれは、本当の幸せを、青い鳥を見つけるために、多くの青い鳥を犠牲にしたからだ。
この童話が本当に伝えたいことは、本当の幸せを掴むためには、多くの不幸を積み重ねること。幸せとは、向こうからやってくるのではない。
私にも青い鳥はいた。ずっとずっと、私のそばで、私の幸せを見守ってくれていた。
見つけたきっかけなんてのは些細なこと。きっと話をしたら、どうしてそんなことで、なんてみんな言うだろう。
当たり前すぎて気が付かなかった。ずっとこのままなのだろうと、生活の一部のように、当然のことだと思っていた。
だから意識してしまうと、その一挙一動が愛おしくて、思い返せば、ずっと私は彼に支えられていたんだって思った。
「どうして?」
いつか私は彼に尋ねた。すると彼は下手くそな嘘で誤魔化した。真相はもう全部、聞いているのに。バレていないと思って。
これは私が、青い鳥に振り向いてもらうための物語。今はまだ、そばにいるだけで、つかまえようとすると逃げられてしまうから。