会話
次の日の夕方。
時間にして午後4時30分。
僕は昨日と同じように、あの橋へ向かっている。
今日は来てくれるだろうか?
もし来ていたら何を話そうか。
そんなことを考えながら、僕は橋へ向かう。
橋が見える距離まで行くと、一人の少女が橋の欄干に肘を乗っけていた。
白いワンピースに小麦色の麦わら帽子。
そしてその麦わら帽子にはおさまりきらないほどの、長くて綺麗な髪の毛。
僕はその後ろ姿だけで、菜乃花なのだとわかった。
心臓の鼓動が早くなるのを感じ、気がつけば僕は走り出していた。
そして菜乃花の元に着くと、僕も菜乃花と同じように橋の欄干に手をつけた。
菜乃花は走ってきた僕の方を見ると、風に揺らされる麦わら帽子を抑えながら。
「待ってたよ」
落ち着いた様子で、そういった。
僕は息を整え大きく深呼吸をすると、菜乃花の方を向いて、ごめんと笑いながら一言謝った。
それから僕たちは色々なことを話した。
お互いの年齢や趣味、他にも色々なことを話し合った。
人と話すのが苦手な僕が、こんなにも他人と話せるなんて自分でも驚いている。
それほど菜乃花との会話は楽しかったし、充実していた。
「菜乃花は将来やりたいことはないの?」
「今は特にないかな。翔太くんは何かないの?」
「僕も特にないかな」
気づけば僕たちは、お互いに名前で呼ぶほど仲良くなっていた。
そして、適当にお互いの将来の夢のことについて話し合っていると、一日の終わりを告げる5時のチャイムが鳴り出した。
そこで僕たちの会話は一旦止められてしまい、少しの間沈黙が続いた。
その沈黙の間、僕は菜乃花の方を見ると、菜乃花は悲しそうな表情で夕焼け空の方を見ていた。
「嫌だなーこの音」
チャイムの音が鳴り響く中、菜乃花は独り言のようにポツリとそう言った。
そして菜乃花がそういった後に、5時のチャイムは聞こえなくなった。
僕はどうしてこの音が嫌なのか菜乃花に聞こうとしたら、菜乃花はくるりと後ろを向いて、首を横に向けた。
「もう行くね」
一言そう言い残して、菜乃花はスタスタと帰っていってしまった。
また昨日と同じ時間に……。
もしかしたら5時になると習い事などがあるのかもしれない。
明日また聞いてみよう。
ポジティブに考えながら、僕も菜乃花の反対側を向くと家に向かった。