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たとえ未来のない恋だとしても  作者: ラリックマ
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父親

 まだあの家に帰りたくない。

 少しでも長く、どこかで時間を潰したい。

 あの父親がいる家に帰りたくない……。

 僕はどこかへ寄り道をして、少しでも家に帰る時間をおくらそうと考えたが、それは出来なかった。

 もし帰りが遅くなったら、何か言われるかもしれない。

 それは嫌だ。

 気分が憂鬱(ゆううつ)になりながら、僕は寄り道してしまった分の時間を取り戻すように早足で家に帰る。

 

「ただいま」

 

 玄関をくぐった僕は、小さな声でそう挨拶すると、すぐさま自室に向かう。

 自室に着くと、一番最初に浮かんだのはさっきあった少女のことだった。

 あの名前も知らない、人の話を全く聞かない、よくわからない少女のことで僕の頭はいっぱいだった。

 どうしてこんなにも彼女のことを考えてしまうのか。

 どうしてあの少女にこんなにも惹かれてしまうのか……。

 あの少女のことを考えると、居ても立っても居られなかった。

 早く明日になってほしい。

 そう思わずにはいられないほどに、あの少女には特別なものを僕は感じていた。

 しばらくして外から車のエンジン音が聞こえてきた。

 父親が帰ってきたのだろう。

 僕は小さく聞こえるか聞こえないかぐらいの声で、はぁと短くため息をする……。

 この音が聞こえてくるたびに、ため息をするようになった。

 父親とは昔っから仲良くはない。

 父は昔っから無口で、いつも何を考えているのか分からない。

 そんな父親の存在が、僕はとても苦手だ。

 エンジンの音が止み、ピピっと車が止まる音がし、ガチャっと玄関を開ける音がして、ドンドンと階段を登ってくる。

 その音に合わせて僕は自室から出ると、二階にある居間に行く。

 家族全員が(そろ)ったら食事をする。

 それだけは昔っからずっと変わらない。

 僕が二階に着くと、母親がもう料理をテーブルの上に並べていた。

 僕と父親はその料理が並べられていくテーブルの前に座ると、無言で母親を待っていた。

 全ての料理が並べられると、僕たちは一人一人が別々にいただきますと言って、料理に手をつけ始める。

 テレビもつけずに終始無言のまま、僕は出された料理を静かに食べ進めた。

 そして終始無言の中、父親が突然咳払いをすると、僕はビクッとなりちらりと父親の方を見る。

 どうしてこんなに父親のご機嫌を気にしながら食事をしなくてはいけないんだ。

 そんなことを思いながらも、僕は出された料理を全て食べ終えると、食器を洗いどころに持っていく。

 食器を洗いどころに戻した僕は、そのまま自室に戻ろうとしたが、後ろから父親に呼び止められた。


「翔太、学校のテストは返ってきたのか?」


 急に声をかけられた僕は驚いたが、父親の方を向いて問いに答える。


「うん、学年三位だったよ……」

 

 すると父親は、一口お茶をズズッと飲んだ後に。


「そうか。次は一位を目指せ」


 そういうと父親は、くるりと体をテーブルの方に向けて食事の続きを始めた。

 そのそっけない態度を見た僕は、歯をぎりぎりと言わせながら自室に戻った。

 僕の学校は割と有名な高校で、偏差値もそれなりに高い。

 その学校で学年三位はすごいことだと僕は思っている。

 なのにあの父親は、誉めもしてくれない。

 そんな父親に、僕は心底腹を立てていた。

 だが今に始まったことじゃない。

 きっとこの先一生、僕と父親は分かり合えないのだろう……。

 僕は自室のベッドの上に横たわると、父親のことなど忘れようと思い、今日あった少女のことについて考えていた。

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