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たとえ未来のない恋だとしても  作者: ラリックマ
24/44

話題転換

 翌日の午後4時40分。

 そろそろ菜乃花の家に行く時間だ。

 結局のところ、看病するとかいっておきながら、ただただ菜乃花と話しているだけだ。

 あんなこと言った手前、なにか看病っぽいことをしてあげたいが、そもそも看病というものが何をすればいいのかよく分からない。

 病人につきっきりで一緒にいるとか?

 でも高校生の僕にはそんなことできないし、そもそもそれなら菜乃花のお父さんで十分じゃないか?

 僕の存在意義ってあるのか……。

 またそんな暗いことを考えながら、僕は一歩ずつ地面を踏みしめながら、菜乃花の家へと向かった。

 それから20分した時。

 午後5時を知らせる鐘の音が響き渡ると同時に、僕は菜乃花の家に到着した。

 ピンポーンとインターホンを鳴らして、誰かが出てくるのを待つ。

 少しすると、インターホンからガチャッと音がして、いつも通りの声のトーンの菜乃花が出てきた。


「あ、翔太くん? 玄関開いてるから勝手に入っていいよ」


 そんな不用心なことを言われるが、僕は言われたまま玄関に入り、お邪魔しますと一声かけてから階段を上っていった。

 階段を登りきり、すぐ右にあるドアをトントンとノックすると、入ってどうぞとドア越しに菜乃花の声が聞こえてきた。

 僕はドアノブをガチャリとひねり、ドアを開けてから菜乃花の方を見て。


「お邪魔します」


 もう一度、次は菜乃花に向かって挨拶をする。

 すると菜乃花は、ふふっと小さく笑いながら。


「お邪魔されました」


 と嬉しそうに言った。

 僕は早速部屋の中に入ると、持ってきた鞄の中から一冊の本を取り出す。

 

「見てよこれ。菜乃花の家で読んだ小説なんだけど、もう一回読みたかったから僕も買ったよ」


 菜乃花の家に行くまでの時間、僕は昨日読んだ小説を近くの本屋で探していた。

 僕は出した小説の表紙が菜乃花に見えるようにしながら話した。

 菜乃花はそんな僕のことを、ニヤニヤした表情をしながら。


「昨日あんなに泣いてたもんね」


 と言ってきた。

 正直あまり思い出したくない。

 一人だったらまだ良かったのだが、菜乃花の前であんなに泣いてしまうなんて少し(なさ)けなかった。

 僕はこれ以上このことについて触れられたくなかったので、自分から出した話題だがそれを逸らすように。


「それよりさ、菜乃花って将来の夢とかないの?」


 突拍子もなくそんなことを聞いてみた。



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