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たとえ未来のない恋だとしても  作者: ラリックマ
19/44

問題の解決

「ただいま」

 

 いつも通りに小さく、聞こえるか聞こえないかぐらいの声で挨拶をする。

 靴を脱いで玄関を上がると、居間の方からいい匂いが漂ってきた。

 きっともう母親が料理を作っているのだろう。

 僕はすぐに居間の方に向かうと、料理の並べられたテーブルの前に、父親と母親が座って僕のことを待っていた。

 家族全員揃って食事をする。

 それだけは昔っから変わらないことだ。

 何か特別な用事がない時以外は、必ず揃って食事をする。

 それを破ったこともないし、破られたこともない。

 どうしてそんな律儀に守っているのか。

 それは、僕たち家族が一緒に過ごす時間なんて、食事のときだけだからだ。

 食事の時以外は基本無干渉な家族。

 きっと食事の時だけでも一緒にいないと、壊れてしまうんだ。

 それを家族全員が分かっている。

 だから、あるのかないのかも分からない絆を、食事を一緒にすると言う行為で保ち続けている。

 僕は自分のいつも座っている場所に座ると、いただきますと言って黙々と食べ始める。

 そして食べながら、菜乃花の言葉を思い出す。


「つまりさ、君は認めてもらいたいんだよ」


 あの言葉について考える。

 認められたい……?

 確かに僕は、少なからず父親を認めさせるために勉強をしてきた。

 でも認めさせたからなんだって言うんだ?

 その先に何がある?

 認めさせたからって僕になんの得がある?

 僕は、今までの自分の行動と考えがわからなくなっていた。

 だいたい認めさせるってなんだ?

 テストで学年一位を取れば、あの父親は認めるのか?

 僕はそれで何がしたいんだ?

 頑張ったなって褒めて欲しいのか?

 いや、そんな単純なことじゃない。

 僕が求めているのはその先にある気がする。

 でもその先のものがわからない。

 その先のものを手に入れる方法がわからない。

 でも多分、このままじゃ僕の欲しいものは手に入らないことだけは分かる。

 僕は出された料理をすぐに食べ終えると、すぐに食器を洗いどころに持っていき自室に行く。

 早く菜乃花に会いたい……。

 きっと菜乃花に会えば、僕が今悩んでいることなんてすぐにどうでもよくなる。

 多分家族のことだって、どうでもいいんだ。

 菜乃花と話すための、話題作りでしかない。

 だからもう、父親のことを考えるはやめよう。

 暗い部屋の中、僕は目の前の問題から逃げるように菜乃花のことを考えていた。









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