あの日の記憶
長い道のりを超えて、僕はある場所にやってきた。
毎年この季節になると必ず行っている場所。
一度も忘れたことなんてない。
そんな場所へ、僕は一人ゆっくりと歩き出す。
一年に一度、僕と彼女が会える場所。
いや……。
実際は僕が一方的に会っていると思い込んでいるだけ。
彼女はもうどこを探してもいないのだから。
そんなことを思いながら、僕は無数に並べられた墓石の中の一つの前に立ち足を止める。
表には大きく斎藤と彫られており、裏には小さく菜乃花と彫ってある。
ここに来るたび、この墓石の前に立つたびに僕はいつも涙ぐむが、目頭を指でぐっと抑えて我慢する。
僕なんかよりも彼女の方がよっぽどつらかったのだから、僕は泣いてはいけない。
そう胸に刻み、僕は涙を我慢する。
今年で22歳。
もうかれこれ4年ほど来ているのに、いまだに慣れることはない。
多分この先一生慣れることはないのだろう……。
僕は早速持ってきた線香に火をつけると、線香立てに線香を入れる。
そしてゆっくりと目をつむって手を合わせる。
目をつむるたびに思い出す。
あの一夏の、儚くて寂しくて、それでいて綺麗なあの夏を……。