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《掃き溜め通り》の貸し出し屋  作者: 藤見 正弥
第一章 アリア編
3/72

第二話 世知辛いけどお金の話です

まったり週一ペースでと言っていましたが、第一章が終わるのに二ヶ月以上かかりそうなので当面は月曜日の二十時と木曜日の二十時の週二回投稿にします。


「……あの、私が言うのも何ですが本当に良いんですか?もしかしたら私が自意識過剰なだけかもしれないですし……」


「それならそれで別に構わねーよ。要は嬢ちゃんが安心できればいいだけだしな。まあそれを調べるのがこっちの仕事だ、気にすんな」


リードさんはそう言って、煙草を吸ってふーっと煙を吐き出した。


(……良かった、まだどうなるか分からないけど助けて貰えるんだ)


それを聞いて私が安堵の溜息を吐くと、リードさんは少し言い辛そうに


「あー、嬢ちゃん。安心してるとこ悪いんだがあんたにとって良くないお知らせがある。心して聞いてくれ」


「……良くないお知らせ、ですか?」


「ああ、まあその前に貸し出し屋(うち)の仕事についてあんたに説明しておこう。うちはさっき言ったように貸し出し屋をやってて、客の依頼に合わせて必要な物や人材、能力なんかを貸し出してそれで対価を得ている訳だ、ここまでは良いか?」


「はい。ですが物や人材はともかく能力って何ですか?」


「それに関しては説明するより実際に体験した方が早いな。ルー、そこの机の上の壺を持ってきてくれ」


「はい、ご主人様。こちらですね」


リードさんの指示通りに、ルーさんは机の上の壺をテーブルの上に置いた。

かなり豪華な装飾で良いお値段がしてそうだ。


「……あの、この高そうな壺がどうかしたんですか?」


「高そうって、それ贋作でしかも出来が悪くて売り物にもならなかったやつだぞ。まあいい、嬢ちゃんそれ持ってみな」


……うわーっ、恥ずかしいっ!!だって高そうに見えたんだもん。

恥ずかしさから顔を赤くしつつ、言われたとおりに壺を持ってみる。

うっ、これ意外に重いな。

ルーさん軽々と持ってたけど、結構力持ちなのかな?

壺をテーブルに戻しリードさんの方を見ると


「よし、それじゃお試しで嬢ちゃんに俺の《筋力》を貸し出すぞ。この契約書に手を当ててみな」


目の前に四角い枠に囲まれた黄色の光の文字が書かれたものが浮かび上がる。

ざっと読むと確かに私に三十秒《筋力》を貸し出すと書かれている。

その契約書に手のひらを押し付けると、それが手のひらから私に吸い込まれた。


「えっ、ええっ!!何これっ、どうなってるの???」


「驚くのは分かるが効果が三十秒しかない。もう一度壺を持つんだ」


戸惑いながらも言われるままに壺を持ち上げると


「うわっ、軽っ!えっ、何で??」


「それが能力の貸し出しだ。今、嬢ちゃんには俺の《筋力》を一部貸し出してる。必要なら他にも俺の持つ能力を貸し出す事ができるって訳だ」


「はー、凄いですねー。さっきまであんなに重かった壺が軽々持てますよ」


私が壺を持ち上げてその効果を実感していたら、急に壺が重くなった。

驚いたが、私は何とか壺を落とさずテーブルの上まで戻す事に成功した。


「そして契約が完了すると効果が切れるって寸法だ。今回はお試しだから何もないけど、正式な契約なら対価を請求してるとこだな」


「な、なるほど。ちなみに今のって《魔法》ですよね?はー、《魔法》ってこんな事も出来るんですね」


「いや、確かに今のは《魔法》だけど俺の《固有魔法(オリジナル)》だからな。誰でも今みたいにできるって訳じゃねーぞ」


「……?あの、《固有魔法(オリジナル)》って何ですか?」


「ああ、嬢ちゃんが知らないのも無理はないか。簡単に説明すれば《魔法》ってのは自分が想像(イメージ)した魔法陣に魔力を流せば発動するんだよ。もちろん適当なものじゃなく、意味の通ったもののじゃなきゃ駄目だけどな。そしてその魔法陣には世間に公開されていて金を出せば教えて貰える《汎用魔法(ノーマル)》と、それぞれの国や魔法使いの派閥にしか公開にされてない《専属魔法(スペシャル)》、そしてその魔法使いにしか使えない《固有魔法(オリジナル)》があるんだよ」


「つまりこれはリードさんにしか使えない《魔法》なんですか?」


「ああ、まあ真っ当な魔法使いなら絶対にやらないような《魔法》だけどな」


「???」


「ま、そこは嬢ちゃんが気にするとこじゃねーよ。で、話を元に戻すがこうやって貸し出したものの性能、量なんかで対価が変わってくる訳なんだが、貸し出し屋(うち)の仕事上ただ働きはできない。今回は嬢ちゃんに《問題解決の為の労力》を貸し出すって形だからな」


「……それはそうですね。私だけ無料じゃ他に示しがつかないですし……」


「それでだ、今回の問題解決にかかる費用なんだが、セト、大体いくらだ?」


「う~んそうだね、ざっと計算して一日三金貨、それが十日くらいだから三十金貨が妥当なとこかな。追加があるかもしれないけど」


「っ!!さっ、三十金貨ですかっ!!」


私が驚いたのも無理は無い。

私が村で生活していた頃の一月の稼ぎが大体十五金貨くらいだった。

そこから生活費などを引いて手元に残るのは、三金貨ほど。

つまり私の貯金の十ヶ月分に相当する金額なのだ。


「ちなみに嬢ちゃん、いくらまでなら払えそうだ?」


「……頑張っても十五金貨が精一杯です。それ以上だと流石に……」


「半額か。……まあギリギリ赤字にはならねーからそれで良いぜ」


私が、えって顔でリードさんを見ると


「言っただろ、他にもこういう手紙を持ってきたのがいるって。そしてそういうのは大体裕福じゃねーんだ。だから赤字が出なきゃ受けるって決めてるんだよ」


「……でも、これはノアさんとの約束でリードさんには関係ないのに」


「……あれで爺さんには返しきれないくらいの恩を受けたからな。だから爺さんが生きてたらやったであろう事は俺がやるって決めてんだよ。そういう訳だから礼は心の中で爺さんに言ってくれ。俺に対しては必要ない」


そう言った後、セトさんと今後について色々と話している。

私が戸惑って動けないでいると


「大丈夫ですよ。ご主人様にお任せすれば万事解決です」


「……ルーさんはリードさんの事を信用してるんですね」


「違います。信頼してるんですよ、アリア様」


ルーさんはリードさんの事を欠片も疑っていない顔でそう言ってくれた。

その言葉に笑顔を返すと不意に


「そういえば嬢ちゃん、あんた宿はもう決まってるのか?ていうか、そもそもこの辺りにはろくな宿なんてありゃしねーぞ」


と、リードさんが言ってきた。


「……ここまで来るのに必死で忘れてました。けど、宿無いんですか?」


「誰が好き好んで《掃き溜め通り》に泊まりたいんだよ?金がある連中は表通りの近くに泊まるし、そこそこの連中が使う宿は通りから外れて今の嬢ちゃんが泊まるには安全面が不安だし、この辺りの宿なんて安い連れ込み宿しかねーぞ」


「あの、連れ込み宿って何ですか?私聞いた事が無いんですけど……」


「……要するに男が女連れ込んでやることやる宿だよ。間違っても嬢ちゃんが一人で泊まるような場所じゃねーからな」


確かにそこに泊まる勇気は私には無い。

でも、だったら


「あの、表通りの宿っていくらくらいするものなんでしょうか?」


「最低でも一泊二金貨から三金貨。有名所だと十金貨くらいか?」


「……無理です。お金が持ちません」


「当たり前だ。大体そっちに金使われたらこっちの支払いどーすんだよ?」


リードさんの言う通りだ。

支払い予定の十五金貨でさえ、ギリギリ切り詰めて何とかという額だ。

そんな大金を無駄に使う事は許されない。

けど、それだったらどうすれば良いのだろう。


「……はー、仕方ねーな。ルー、ここのお前の部屋の向かいが空いてただろ?あの部屋掃除して嬢ちゃんをそこに泊めてやれ。流石に野宿はさせられねーからな」


「かしこまりました、ご主人様。それでは後ほど準備しておきます」


「ちょ、ちょっと待って下さい。ここに泊まるんですか?」


「本来は従業員用なんだけどな。諸々考慮したら他に選択肢はねーだろ」


「……あの、宿代の方は……」


「それも依頼料に込みで良い。てゆうか、あんたから宿代取っても肝心の支払いが出来なくなったら意味ねーんだよ、こっちは」


確かに安全面やこの先の事を考えれば、ここに泊めてもらうのが最善だ。

だけど


「やっぱりそこまで甘えられません。宿は探しますし、お金のほうは仕事を探してでもお支払いします」


「……あのな、嬢ちゃん?あんたが外の宿に泊まると、そこで襲われないか見張りをつける必要があるんだよ。そして仕事だが追われてる人間を外で働かせる訳にはいかねーだろ。こっちとしてもここにいてくれた方が楽なんだよ」


リードさんが聞き分けの無い子供を諭すような口調で説明する。

確かにその通りなのだが、そこまで迷惑はかけられない。

ただでさえほとんど儲けにならない依頼を受けてもらっているのだから。


「で、でもっ!やっぱり駄目です。これ以上ご迷惑をおかけする訳には……」


いきませんっ!!と言おうとしたその時だった。

私のお腹が「くーきゅるきゅる」と音をたてた。

その瞬間、場が静寂に包まれる。

私が恐る恐る周囲の様子を確認すると、リードさんは呆れたような顔で私を見て、ルーさんとセトさんは苦笑しつつも優しい視線を送ってくれた。


(わああぁぁ―――――――っ!!!違う、今の無しっ!!神様っ、お願いだからもう一度やり直させて下さ――――――い!!!!)


私が恥ずかしさのあまり無言で悶えていると、リードさんが


「……こりゃ、宿の話の前にメシだな」


そう深く溜息を吐きながら言って、私に止めを刺してくれたのだった。

前作の後遺症なのか週一ペースだとペースが遅すぎて何か違和感があります。

とりあえず第一章が終わるまでは週二ペースで、その先は作者の書き溜めた量とやる気次第で週二を維持するか週一に戻すか検討します。

もし週二なら一話の文字数を三千前後に落とす予定です。

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