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【完結】月下の虎は甘く冷たい指先を食む  作者: 文野さと
3章 王都にて

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61 昏い想い

「う……」

 レイフェリアが目を覚ましたのは、なんとも異国風な豪華な部屋の一室だ。

 壁の高いところからとばりが下された二柱式の寝台、いくつも並べられた繻子の枕に複雑な彫刻が施された足置き。北方から南方にきた時も様式の違いに戸惑ったものだが、この部屋は様式の違いというよりも、さらに大きな違和感がある。

 まず、部屋の形が丸い。床にも複雑な弧をを描く色違いの石が張られ、目を上げれば大きな丸い柱がいくつも立っている。そして部屋中に濃密に漂うのは、嗅いだことのない香りだった。

「そうだ! ティー、ティーはっ……あ、つぅっ……!」

 半身を起こすと強い目眩(めまい)がする。

 とても体を起こしていられずにレイフェリアは再び寝台に沈んだ。軽く吐き気と頭痛もするので、何か強い薬のようなものを嗅がされたに違いないとレイフェリアは思った。

 ──私、無理やり眠らされたんだ。

 覚えているのは、いきなり上から落ちてきた籠のようなものにティガールが閉じ込められた事、ひどい金属音がして駆け出そうと思ったら、いきなり後ろから伸びてきた手に口元を覆われてしまった事だ。意識を失う前に強烈な刺激臭を感じた覚えがある。

 ──強い薬は、効き目はすごいけど覚めるのも早いから、速やかに回復するためにもしばらくは動かないほうがいいわ。水があればいいんだけど……。

 幸い転がっている寝台の寝心地はすこぶる良い。仕方がないので仰向けになって今いる状況を探ってみる。

 空気がほとんど動かないから、部屋には窓がないのだろう。それでも香の匂いが重く垂れこめているから、もししたら外では雨が降っているのかもしれない。明かりはいくつか灯っていて、さして暗くはないが、窓がないということは脱出するにしても手段が限られる。

 ──どのくらい眠っていたのかしら? 時刻がわからない……そんなに長い間眠ってはいないと思うんだけど……。

 しばらくして人が入ってくる気配があった。うっすらと目を開けて観察すると、どうやら召使いの女のようである。同じお仕着せをこの館で見た記憶があった。

「あのぅ……」

 レイフェリアは思い切って声をかけると、召使いはすぐに側に来てくれた。

「お目覚めのようですね。ご気分は?」

「ちょっとふらふらしますが大丈夫です。すみませんが……お水をいただけませんか?」

「はい。ただいまお持ちします」

 最初に少し口をつけて見たが、妙な味はしなかったので一気に飲み干す。水は冷たくて美味しかった。これで気分が少し良くなる。

「外は雨なのですか? あと、今は何時ごろでしょうか?」

「ええ、ついさっきから降り出しましたよ。まだそんなに激しくはありません。時刻は青の四刻(午後9時)前でしょうか」

「青の四刻……」

 ──この屋敷に着いたのが青の三刻(午後8時)前だから、そんなに経っていない。

 レイフェリアはほっとした。しかし、ティガールは、それにヒューマとオセロットの二人はどうしているだろうか?

「私気分が悪くなってしまって……連れが心配していると思うんですけど、どこにいるか、あなたご存知?」

 この召使いがどこまで事情を知っているのかわからなかったので、当たり障りのないことを聞いてみた。

「はい。お嬢様は夜会の途中で倒れられたと伺っています。お連れ様のことは存じませんが、もうすぐご主人様がお見えになるという事ですよ」

「ご主人様?」

 やはりこの召使いは、詳しい事情を知らされていないようだった。

「東方領主のファハル様ですわ」

「ああ……それなら今夜ご挨拶したわ。私ったらすっかりご迷惑をかけてしまって……」

「お腹は空いておられませんか?」

「ほんの少し……かな? でも、先にお水をもう一杯と、冷たいお絞りをもらえるかしら? すっかり汗をかいたみたいで」

「ただいますぐにお持ちします」

「それと……ごめんなさい。御不浄はどちらかしら?」

 飲んで出して、薬の作用を少しでも軽減しなくてはならない。

「ああ、こちらでございます。お湯を張ったお風呂もございますよ」

 そう言って召使いは出て行ったが、微かに鍵のかける音がした。やはり自由にはさせてもらえないのだ。

 とりあえず体を確かめると傷などはなく、服もそのままだったが靴は履いていなかった。腕に巻かれた紫の花はまだ手首に残っている。

「もう少しだけふらつきが治まったら、ここがどこか確かめられるんだけど……」

 その時、部屋の空気が動いてレイフェリアは入り口に目を走らせた。先ほどの召使いの気配ではない。レイフェリアはぞっと身を震わせた。あまり考えたくないが、入ってくる人物の見当はついていた。

「……ど、どなた……ですか?」

 反応を見るためにわざと弱々しく叫んで見る。

「ああ、すみません。驚かしてしまいましたか。目覚められたと聞きまして」

 現れたのはやはり東方領主ファハルだった。

「ファハル……さ……ま?」

 レイフェリアはまだよく事情がわかっていない振りをした。

「あなたがどうして?」

「わかりませんか? レイフェリア姫」

「わかりません。お祝いの品に気を取られていたら、急に目眩がしてそれきり……」

「ああ、申し訳ございません。即効性のある眠り薬を嗅いでいただいたのです」

 ファハルは少しも悪びれない様子で言った。

「眠り薬? どうしてそんな……」

「あなたの婚約者殿の正体を暴くのに、あまり騒がれては……と思いまして。でも心配には及びません。まだ少しぼんやりするでしょうがすぐに良くなります」

 ──この男、ティーの言った通りやっぱり何か邪なことを企んでいたのね! 優しそうなふりをして、私を黙らせて……でも、絶対に思い通りにはならないわ。

 レイフェリアの中に怒りがこみ上げる。しかし、今ここで感情を露わにしてもいいことは何もないだろう。そう思って必死に踏みとどまった。今は弱みを見せて、もう少し何かを聞き出す方が懸命だ。

「……他のお客様も周りにいたあの暗い中で、私のいた場所がわかったのですか?」

 ともかく相手に喋らせようとレイフェリアは質問を続ける。

「ああ、それは簡単です。あなたにお渡ししたその花に夜光塗料を塗っておいたのですよ。特殊な青い光を当てればすぐにわかるように。ほらこの石です」

 ファハルは側の小卓に置かれた箱から、拳ほどの大きさの丸い石を取り出した。その石はぼんやりと青く光っている。

「今はこの程度の光ですが、暗闇ではもっと青く光るのです。それがあなたを見つけ出した」

 ファハルがレイフェリアの手元にその石を近づける。それに反応して紫の花が蛍光色に光った。そういう仕組みになっていたのだ。

 ──つまり最初からこの目的のためだったのだ。

 そう思ったレイフェリアは邪険にファハルの腕を押しやった。

「うっ!」

 ファハルがレイフェリアの触れた右腕を押さえて顔をしかめる。大の男がたじろぐほどの力はない。なんだろう、と不審に思った時「失礼いたします」という控えめな声とともに、召使いが盆を持って入ってきた。

 盆の上には大きな水差しと硝子の杯、それに深鉢に入った粥も置かれている。ファハルがいたことに驚いた召使いは、お辞儀をすると急いで出て行った。

「……」

 レイフェリアはファハルに構わず水を一気に飲み干した。

「どうぞお粥も召し上がってください。心配しなくてもこれには何も薬は入っておりませんよ」

 ファハルが微笑を含んだ声で言ったが、この男の前で食事をする気にはなれない。

「後でいただきます」

 しかし、食べ物の匂いを嗅ぐと確かに空腹を覚えた。昼に軽い食事をしたきりだったのである。

「それにしても眠り薬などを私に施すなんて……あなたの目的はなんなのです?」

 レイフェリアは改めてファハルに向き直った。精神的には気分は悪かったが、身体の不調は幾分治まりかけていた。

「さっきも申し上げたでしょう? あなたの御婚約者の正体を暴くためですよ。察するに、あなたはもう、あの家の秘密を知っているのでしょう?」

「……なんのことでしょう?」

 ファハルはいったいどこまで認識しているのだろうか? レイフェリアは用心深く言葉を選ぶ。

「あの家は代々、体の中に獣を飼う家なのですよ。恐ろしくはないのですか?」

「……特には」

「これはこれは気丈な姫君だ」

「わざわざそんなことを言うために、私をここへ連れてきたのではありませんね? 目的はなんです?」

「また直球な質問ですね」

「あなたはどうも、はぐらかす人のようだから」

 レイフェリアはファハルをまっすぐに見据えた。

「……」

「もう一度伺うわ。目的はなんなの?」

「あなた」

「え?」

「私の目的は最初からあなたですよ。レイフェリア姫、あなたただ一人だ」

 ──私が目的だって?

 今度はレイフェリアが黙る番だった。男の言葉が全く理解できない。レイフェリアは質問の矛先を変えた。

「ティガール様はどこです?」

「ああ、彼ならさっきと同じ、庭にいますよ。檻の中には入っていますが、凶暴で暴れるのでひっぱり出せない。見てください。引っかかれたのですよ」

 ファハルは忌々しそうに袖をまくって腕の包帯を見せたが、レイフェリアは一顧だにしなかった。

「突然上から檻が降ってきたら誰でも暴れるでしょう。彼に何をしたのです?」

「いいえ、なにも。ただ笛を吹いただけ。全く獰猛なケダモノだ。そのうち見世物にしてやる」

「笛……獣を呼び覚ます曲を、あなたが!」

 レイフェリアは思わず叫んだ。

「やっぱり、あなたがあの芸人達に知恵を与えていたんだ!」

「ええ、そうです。でも、不協和音を交えた音響が、どれだけ人の気持ちを不快にするのかを研究していたのは私の父でした。それを完成させたのは私です」

 ファハルは誇らしそうに言い放った。

「卑劣だ! そんなもので人の心を操るなんて!」

「私は薬学や医術など色々な研究をしておりますが、音のことについても興味があってね。一見普通の曲に、ある音を紛れ込ませるだけで、人の心に潜む不安を引っ張り出すことができるのです」

 レイフェリアの罵倒を楽しそうに受け止め、ファハルは話し続ける。

「そして、動物には人間には聞こえない音も聞き分けられる。あの若い獣もそうだったという訳でね。私の笛で彼の内なる獣を呼び覚まして差し上げたのですよ」

 言いながらファハルは襟元から細い笛を取り出した。それは紐で首に吊るされた細い棒のようなものだったが、芸人達のものとは違い、美しい細工が施されている。

「……どうして、そんなことを」

「領主、それも四方侯の一人が化け物だいうことが(おおやけ)になれば、いくらあのゼントルムでも、領主の首をすげ替えなくてはならないでしょう?」

「あの獣……虎こそ、南方領主だってことの証だわ! それに人に害など与えない!」

「さぁそれはどうでしょう? 現に私は傷を負わされた、これです」

 ファハルは腕の包帯をこれ見よがしに見せつけた。さっき彼が痛がったのはこの傷が原因のようだ。

「全く危険な獣です。それに今夜目撃者になってくださった高位の貴族や、商人達はどう思いますかねぇ。彼らはまだこの館にいますが、今頃恐怖に打ち震えているでしょうよ。なんと言っても、人が獣に変わっていく有様を目の当たりにしたのですから。今彼らにその事を記憶に深く刻みつけている最中です」

「どうして……なんでこんなことをするの? 私が目的ならばそんな必要はないはず!」

 レイフェリアは必死で崩れそうになる自分と戦っていた。ここで泣き騒いで、この男に弱みを見せてはならない。

「あなたが目的だから、彼を失墜させないとね」

「なっ……、それはなにを……」

「前にも言ったでしょう? 私は昔からあなたを知っていると」

「……私には覚えがない」

「それには少し事情があるのですが、とにかく私はあなたがまだ幼い頃からずっと、一途に想っていたのです」

「なにを言って……」

「本当ですよ。あなたは十才にもならない少女の頃から気高く美しく、一目で私の心を虜にしてしまった……でも残念ながら、それは、あの化け物も一緒だったようですが」

 もはやレイフェリアに差し挟める言葉はなかった。彼の発する言葉が理解できない。

「私はねぇ、王都でずっとあなたを見ていたのですよ。あなたを初めて見た時から私の妻にすると決めていて、父を通じてあなたの父君にも内々で申し込んだのです。十八の時だった……」

「……そんなこと知らない」

「あなたはまだ幼かったし、父君のエイフリーク殿は娘の気持ちを尊重したいからと、婚約者と認めてはくださらなかった。私は一旦引き下がって時を持つことにしたのです。あなたが美しく成長するのを……」

 ファハルはひたすら嬉しそうに、今まで凝り固めていた思いを吐露し続ける。

「私は何年も大人しく待った。しかし、その内どうも雲行きが怪しくなってきた。あなたの父上は南方領主と親しくなって、屋敷に頻繁に通っていると言う。そして南方領主家にも息子が一人いました」

 ファハルの表情は急に剣呑なものになった。

「私は非常に不愉快だった。ちょうどその頃、先王の側室に子供が生まれて、王宮がお祝いの雰囲気になってしまいました。貴族たちの婚約が次々に発表されたりね。で、エイフリーク殿と南方領主、リューコの間にもそんな動きがあると報告を受けまして……私も若かったし、少々焦りまして」

 そこでファハルは意味ありげに言葉を切った。僅かな沈黙は、レイフェリアの気持ちをかき乱すに十分な時間だった。

「あ、あなたは……いったいなにをしたの⁉︎ まさか!」

「ええ、あなたも、もうわかったでしょう? そうです。お父上の祝いの品をすり替えたのですよ。毒の染料を使ったそっくりな品にね」

「……」

「祝いの品の中に白貂の敷物があると教えてくれたのは、あなたの叔父上です。一応、彼の名誉のために申し上げておきますが、イェーツ殿は私の企みについては一切知らなかった。だから、後で彼はものすごく震えていましたけれども」

「お前……お前が父上を……!」

 掴んだ掛け布を破れんばかりに握り込んでいる。

「とても簡単でした。運搬係の男一人買収するだけでよかったのです。私は側室か赤子が亡くなればいいと思っていたのですが、死んだのが偶々(たまたま)召使い女一人だったし、確固たる証拠もなかったので、お父上は公式には罪には問われることはなかった。しかし、名誉は踏みにじられ、信用を失い、遂には自死されてしまった……お気の毒なことでしたが、これで目的は果たされた。ああ、そんなに指を握りしめると、その美しい指に傷がついてしまいます」

「触るな!」

 レイフェリアは自分に伸ばされた手を払いのける。ねっとりとした皮膚の感触は不愉快極まりないものだった。

「お前……お前が、父上にありもしない罪を……」

「ええ。でも、北方領主家は残されてしまった。取り潰してしまえば、あなたはすぐ私の手に入ったのですが。物事は早々計画通りにはいかないということを学びましたね。おかげで大きな回り道をしてしまった」

 ファハルは真摯な顔で頷いた。

「あなたは北の奥地に幽閉され、近づけないでいる間に私も立場上、妻を娶らねばならなくなってしまって……父上は死ぬし、東方もややごたつきました。そうしている内に王家も代替わりし、皇太子で北方領主家の存続に一番発言をしていたゼントルム王が立たれた」

「……」

「東方は祖父の代に領地を失って衰えていましたから、私が立て直さねばならなかった。そうして僅か数年もたもたしている間に、ゼントルムに気に入られているあのケダモノが強引にあなたを迎えに行ってしまうし、いくつかの妨害も失敗してしまって……本当にあの獣には苦労させられましたよ」

「言うな!」

 レイフェリアは寝台からファハルに向かって飛びかかった。しかし、その跳躍には力は入らず、寝台から落ちただけでぐにゃりと床に崩れ落ちてしまう。

「姫、まだ動いてはいけませぬ」

「姫などと呼ぶな! 離せ!」

 レイフェリアは支えようとする腕から身をよじって逃れた。しかし、しつこく絡む腕は彼女を再び寝台の上に引っ張り上げてしまう。

「おお、怒りに染まって紫の瞳が燃えている……なんと美しい、この美を(もたら)したのが私なのだ」

 ファハルが恍惚として呟く。

「私が敷物に仕込んだあの毒はね、空気に触れると気化して、触れたり吸い込んだものに害をなすんですよ。ある鉱物から取れるのですが、我が国独自の製法で抽出します。我が東方領主家は昔から毒使いの家系なのですよ」

「……この毒蛇!」

「ふふふ。言ったでしょう? 私の研究は多岐にわたる。そして、人の心を操るのは音だけとは限らないのですよ。でも私があの時、あなたに施した薬は少し量を誤ってしまいましたね。私もまだ若かったものですから。全くしくじりましたよ」

「なに? お前は……私になにをした? あ、あの時とはいつなの⁉︎」

 怒りで声が掠れた。

「レイフェリア姫、姫にはお父上の亡くなられた前後の記憶が、非常に不鮮明なのではありませんか? 特にその前の記憶が欠落しているのでは?」

「……」

 その通りだった。あの時の混乱と恐れで、記憶が飛んでいると無理やり思い込もうとしていたが、どこか納得できないでいたのだ。

「私はね、父上と一緒にあなたの屋敷に弔問に行った折に、あなたに記憶を曖昧にする薬を吹きかけたのです。あなたがあんまり泣いておられたので、心安らかになるように」

「な……なんですって?」

「ほらこの薬です。紅色で綺麗でしょう?」

 ファハルは懐から優美な形の瓶を取り出して見せた。

「これは原液なのですが、これを希釈(きしゃく)し霧状にしてあなたに吸わせたのです。ですがちょっと濃度を間違えて、あなたはその前の数ヶ月間の記憶が飛んでしまったようだった。あの獣のことも忘れてしまったようで、それは喜ばしいことだったのですが。今思えば、あの時にあなたを連れ出してしまえば、こんな回り道をしないで済んだのです」

 ファハルは悔しそうに言った。

「まぁ、今それを言っても仕方がない。ともかく私は、幼い頃のあなたとお会いしているのですよ。私たちは濃密な時間を過ごしたのです」

「……信じない」

「大丈夫です。私と過ごしているうちに少しずつ思い出させてあげますよ。でもまずはその衣装を着替えていただきましょう。その下品な赤はあなたには似合わない。北の地に生まれたあなたには、もっと高貴な青、紫……そして黒が似合う」

「服なんかどうだっていい。ティガール様に会わせて」

「実はもう、仕立てさせてあるんですよ。隣の部屋に飾ってあるのです。持ってこさせましょう。私が自ら着付けて差し上げます。少しお待ちを。動けないことはもうわかったでしょうから、大人しくしていてくださいね」

 レイフェリアを全く無視してそう言うと、ファハルはいそいそと出て行った。

 ──完全に頭がおかしいわ。

 けれども、この間一人にされたことは残されたチャンスだ。ファハルが戻ってくるまでにできることをして置かなければ。

 気持ちの定まったレイフェリアは、すっかり冷めた粥に猛然と手を付け始めた。




ああ、遂にヘンタイさんを書いてしまった。

わかりにくい部分はありませんか?


ネタバレ:ファハルが敷物にしみこませた緑の毒物は、パリグリーンとかシェーレグリーンと言われる、ヒ素系の毒物だったと思われます。

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