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第五話『魑魅魍魎の巣』

ブックマーク有難うございます!

これからも誤字脱字・評価・感想などお待ちしております。

「いや、あの、これは、その」


「ああ、気にせんでも大丈夫じゃよ。

きさ…お主の様な人間を一度だけみたことがある。」


あ、マジか。

異世界召喚者他にもいたのか。

あれ?それってもしかして…


「ドリールさん。これ見ていただけますか?」


差し出したのは、田中君カードだ。


「ん?タナカ?誰じゃ、こいつは?」


「あ、いや、なんでもないです。」


取り敢えず田中君は帰ってから一発殴ろう。


「それで、なんで異世界の人間と分かった途端に襲って来たんですか?」


「魔王も異世界の人だからじゃ。」


「え?」


「まあ、お主と一緒かは分からんがな。」


魔王が異世界訪問者ってチートじゃね?いや、チートだから魔王になったのか?

ていうかこのおっさんは俺のことを魔王だと思ってた訳か。

常識的に考えようぜ?

常識が通じないのが魔王なのだが。


「じゃあ俺はこれからすれ違う人みんなに魔王と勘違いされなきゃいけないと?」


「いや、ステータスカードは見せる項目を選べるから称号を見せん様にすれば大丈夫じゃろう。

【鑑定】持ちなら他の人間の【鑑定】に対して抵抗(レジスト)を設定したりも出来る。」


「なるほど。」


良かった。まあよく考えてみればレベル0の魔王なんて考えてみればありえないよな。

あ、でも常識が通じないのが(ry


「いきなり襲ってすまなかった。

お詫びに騎士団に入る権利をやるぞ?」


「いや、遠慮しときます。」


「なに?騎士団に入るという事は即ち国を守るということじゃ。つまり「遠慮しておきます。」


「む、しかし「遠慮しておきます」


「いや、だがな…」


このおじさんしつこすぎだろ!

てか肋骨折れてるけどそんなに粘って大丈夫ですか!?


「分かった。ところでお主。ギルドに入る予定はあるか?」


「ああ、魔術師ギルドには行ってみようかと。」


「おお、そうか!ではギルドに手配してSSSランクの魔術師に「遠慮しておきます」


「フッ。お主、無欲すぎて気持ち悪いぐらいじゃ。

こんなのが魔王とは到底思えんな。」


「そりゃどうも。


じゃあそんな無欲な俺からお願いなんだけど……………職業の一覧みたいなのってある?」




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜





ファンタジーあるあるで紙は貴重品なのかと思ってたら全然だった。

地図は1銀貨だし、職業一覧も特別に4銀貨で売ってもらえた。

まあ元の世界に比べれば十分高いのだが。

ちなみにこの世界の通貨は少しテンプレとは違う。

10銅貨で1大銅貨、10大銅貨で1銀貨と増えて行き、大銀貨、金貨、大金貨、白金貨。ここまではまだ聞き覚えがあるのだが、それに加え、その上に龍金貨、神金貨、神龍金貨とある。

1銅貨が100円くらいの価値なので、1神龍金貨は1000億円の価値だ。

そんなのを持ち運ぶ奴の気が知れない。


あと、常時発動(パッシブ)スキルは変化する値を使った行動をすることでジョブレベルが上がるらしい。

毒無効のスキルとかだと毒を飲まないといけないのかな…?


そ・し・て!!何より異世界転移と言えば「奴隷」でしょ!

こう、ひどい扱いを受けていた奴隷を買い取って服とかを買ってあげて、その内に愛情が芽生えるみたいな………キャー恥ずかしいっ!


『マスター。今、とてつもなく気持ち悪いぞ。』


『そうか。ダーフにはロリ猫耳の良さが分からないか。』


『???……今のは聞かなかった事にしておこう。

訂正する。ここらへんに黒い空気が流れていて気持ち悪い。』


すごい、今俺「墓穴を掘る」っていうのを体で味わった。


しかし、マスターとは別れたし、黒い空気って一体どういうことだろうか。


『………分かったぞ!』


『む、黒い空気の正体か!?』


『ああ!


………ダーフ、お前多分人混みに酔ったんだ。

あーあるある。今まで森で過ごして来たもんな?

しょうがないしょうがぶべっ!?』


『マスター、本気でやばいぞ。

どんどん近付いて来て……………遠ざかっていく…?

いや、どうやらすれ違った様だぞ。』


『まあこんな街中に魔王が歩いてるわけ……多分無いだろ。

多分風呂にしばらく入ってない冒険者とかじゃね?』


『そうか。まあ過ぎたことだ。

我には関係無いがな!』


ダーフさんが持ち前の明るさ(?)を取り戻したところで俺は奴隷商の所へ向かった。


「いらっしゃいませ!本日はどのような品をお望みで?」


店に入ると意外と豪華めな装飾がされた店内に禿げた、小さい(物理的に)店主がすり寄ってきた。

下手に出られ過ぎて小物臭がすごい。


「じゃあ獣人ロリを頼む。」


「はい?」


「だから獣人ロリだ。

幼女の獣人。」


「よ、幼女ですか?

それに獣人はかなり高くつきますが…」


「ん?獣人は安いのではないのか?」


テンプレだと獣人が迫害されてたりするんだが…

それに折角ダーフの喋り方を真似したのに結局金が無いと思われてるよ。


「まさか!

獣人は戦闘能力も高いですし、何より、その………『可愛い』ですから。」


「お前とはいい友達になれそうだ。」


握手を求めると無視された。


「値段はどれくらいの範囲で?」


「金貨2枚以内で頼む。」


「申し訳ありませんが、お客様。……………奴隷商を舐めていらっしゃいますか?」


店主から急に殺気が放たれる。

この世界の人危な過ぎね?

あ、ダーフが威嚇してる。こらこら。


「………成る程。すまなかった。

では下見だけでもさせてもらえないだろうか。

値段を見て、買えそうなら金を貯めてまた来る。

そうだな…一週間で稼ぐとして金貨70枚くらいまでなら我慢しよう。」


「………分かりました。

しかしお客様。一週間で金貨70枚とは、Sランク冒険者の方とかですかな?」


「うん?ま、まあそんなところだ。」


危ない危ない。異世界転移あるあるで自分の持つ力のあまり、不審に思われて殺される、なんてのもある。

そういえば役所のマスターに殺されかけたな。

ダメじゃん、俺。


「それではご案内致します。

こちらへどうぞ。」


店主に案内され、店の奥に進んでいく。

郊外にある店なのでかなり大きい。

牢屋に囲まれた道を歩く。

牢屋には色んな奴が入っていた。

片目が無い奴、一人で笑ってる奴、壁に頭を打ち付けてる奴、etc…

もちろんそんな奴らは目当てでは無い。

俺の良心が痛んだがさすがにあれ全部は救えない。

取り敢えずダーフをなでなでして気を紛らわせながら歩いていると、店主がとある扉の前で立ち止まった。


「ここから先は獣人の牢です。

金貨70枚以内に収まる範囲で連れてきますので、こちらの待合室でーーー」


「お前まさかこの待合室で待てって言うんじゃ無いだろうな?」


「はい?」


「俺が獣人を大好きであのチャームポイントを見るだけで思考の悦楽に浸れる人間だと知ってて、獣人のいる牢を見せないとは?」


こいつ、いい友達になれると思ってたのになー。

獣人の可愛さを理解出来る奴は……あれ?

この店主、獣人って聞いただけで可愛いってワードが出てくるってことは………いや、これ以上考えるのはやめておこう。


「………分かりました。

では、ついてきてください。」


「分かってくれればいいんだ。」


うん、やっぱりこいつとは良い友達になれそうだ。


よし、それでは開けるとしよう。

希望の扉を。

俺の趣向を満たす奇跡のその姿をーーー




「ガオー!」

「グルル…」

「パオーン!」




………これは、獣人というより獣獣人…いや、獣:人=9:1だな。


「店主、これは?」


「?………獣人ですが?」


「なに言ってんだこいつ」みたいな顔で見てくる。

いやそれこっちのセリフ。


「んー………それはゾウに見える…いや、ゾウにしか見えないんだけど?」


「いえ、人語も喋れます。ほら、パオ子。」


「よろじぐパオオオオオオ!!」


「うわぁあぁあぁあぁあぁ?!」


悪夢だ。そうだ、夢だよな。

あり得ない。獣人ってのは本来猫耳と尻尾がチャームポイントで喜んだりすると猫耳がちょこんってなる筈なんだ。

これは獣人とは言わない。

ゾウだ。ただの賢いゾウだ。

百歩譲って犬と狼までは許そう。

人の姿をしているなら獣人として名乗るのも納得がいく。

でもこんなゾウが獣人な訳ないよな?

うん、よく見れば確かに人間の要素は入ってなくもない。

加筆するならば、人の要素は顔にしか入っていないということだろうか。

うわー!ほんとだ!人の顔だ!可愛い!

()()()にはいいかも!

だが断るッッ!!!!!

ハハッ。多分猫耳を前に心踊り過ぎて気絶してしまったんだ。そうに違いない。

だからこれは夢だ。夢だから……………


「店主。さようなら。出来れば、いや、二度と会いたくないな。」


「え!?」


俺はその地獄絵図から逃げ出した。




『なあ、ダーフ。』


『む、なんだ?』



『……………人間の思い込みって怖いな。』



『ん?そうか。敢えて何も言わないでおこう。』




寧ろ奴隷商店を破壊しなかっただけ褒めて欲しい。

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