第十一話『あり得ない神化と前例ない進化』
「よし、100匹狩り終えたぞ」
『狩ったというよりは一方的な攻撃だったな』
「う、うるせえ!」
木で出来たコロシアムで言葉を交わす一人と一匹。
そう、俺はゴブリン狩りを終えたのだ。
そして、肝心のステータスはというとーーー
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名前:エイジス=エルロンド
レベル:14
称号:異世界の訪問者
所属:ドーラ魔術師ギルド
種族:人族
職業:テイマー
ジョブレベル:17
加護:ーー
能力:【スライムテイマー】
スキル:【好感】、【鑑定】、【言語理解】、【エリート魔法】
ジョブスキル:【指揮LV1】
最大HP:200
最大MP:3300
攻撃力:162
防御力:114
魔法攻撃力:7600
魔法防御力:7600
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魔法系統があまり上がっていないが、これには理由がある。
どうやらステータス値は蓄積された自分の経験が、レベルアップによって身体に現れる物らしい。
だから、今回はあまり魔法を使わなかった俺は物理系統が多めに強くなったわけだ。
これからのレベル上げは考えながらにしないとな。
そして、【エリート魔法】。
本当に【固有魔法】を手に入れてしまった様だ。
レベルが1になった瞬間に手に入れた。
ちなみに効果は
【エリート魔法】:エリートが使う魔法。
LV1 ーーー 【職業変更】:自分の職業を変更する。[消費MP:300]
説明が大雑把だな。
そして俺ってやっぱエリートなんだな。
【職業変更】ってあるけど前に自分で職業を変えられた気がするんだが?
「なあ、ダーフ。
職業って普通誰にでも変えられる物なのか?」
『何を当たり前な事を。自分で職業を変えずに誰に変えてもらう?
まあ一部の職業は生まれつきの物もあるがな』
「それって勇者とかか?」
『そうだ。よく分かったな』
「物知りだからな」
となるとこの魔法の使い道はなんだろう。
ハズレ魔法か?
いや、勇者とかになれる魔法なのかもしれない。
勇者があるなら魔王もあるのだろうか。
どうせなるなら魔王でもいいかもしれない。
魔王ってやっぱり男の浪漫【固有魔法【エリート魔法(【職業選択】)】により、職業を【魔王】へと変更しました】
…………………。
か、神様とかってあるのかな?
【固有魔王【エリート魔法(【職業選択】)】により、「神」と名の付く職業を検索。
現在、【神】以外は席が埋まっています。
自動的に【神】へと職業を変更しました】
「ぬわああああああああああ!!!」
『ど、どうしたマスター!?』
本当に神様になってしまったああ!!
とんでもないチート魔法じゃねえかこれ!
さすがエリートだな!?
そ、そうだ!ステータスは!?
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名前:エイジス=エルロンド
レベル:14
称号:異世界の訪問者
所属:ドーラ魔術師ギルド
種族:人族
職業:神
ジョブレベル:0
加護:ーー
能力:【スライムテイマー】
スキル:【好感】、【鑑定】、【言語理解】、【エリート魔法】
ジョブスキル:【創造】、【進化】
最大HP:67000
最大MP:180000
攻撃力:90700
防御力:84000
魔法攻撃力:260100
魔法防御力:260100
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【創造】:世界に存在するあらゆる物質|(生物・魔道具を除く)を作成することができる。[消費MP:対象による]
【進化】:対象の魔物を進化させる。[消費MP:対象による]
うおおおおおおおおお!?
なんかもうスキルが哲学的な名前!?
そして効果も強すぎる!?
ステータス値がすごいことに!?
『おい、マスター。大丈夫か?しんどいなら回復魔法でもーーー』
「だ、大丈夫。ちょっと神になっただけだから」
『は?』
ダーフに冷たい視線|(目は無いが)を向けられながらも俺は一つの事を決めた。
「ダーフ、進化してみないか?」
『だからそれは前に話したであろう?
レベルが「もし今すぐ出来るって言ったらどうする?」
『………出来るのか?』
「任せろ!!」
『では頼む。』
こんな軽いノリでダーフの進化が始まった。
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「始めていいか?」
『大丈夫だ』
とうとうダーフの進化が始まる。
スライムからの進化。
魔物の個体によって進化先は違うらしいが、果たしてどんな進化を遂げるのだろうか。
「【進化】!」
スキルを発動したが何かが起きる気配が無い。
しばらく沈黙が続いた。
そしてその沈黙が破られた。
【対象の設定を完了。【スライム】から【スライム・エクスプレッション・ケテル】へと進化。消費MPが使用者の最大MPを大幅に上回ったため、対象から魔力を補充。
進化完了。お疲れ様です】
最後に労いの言葉が聞こえた気がしたんだが!?
あ、やばい、意識…が………
日ももうすぐで暮れようかという中、森で俺は意識を手放した。
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「ん………?」
頭が痛い。此処はどこだ?
………森?ああ、そうだ。
確かダーフを進化させたんだ。
そうだ、ダーフは!?
『起きたか』
「あ、良かっーーー」
俺は思わず言葉を止めた。
そこには、いつもと変わらない黒い軟体ーーーその頭の上に、白い輪っかが浮いていた。
『ん、これか?我も驚いたぞ。
感覚も繋がっておらんし、何の意味があるのだろうな?』
な、何の意味……ファッションかな?
というか進化先の名前なんだっけ?
スライム・エクスプレッション・ケテルだったっけ?
長いよ!どんな進化したんだよ!
てかそういえばケテルって確か俺の前世での無駄知識にあった気が………。
まあいいや。
それよりもステータスだ!
「【鑑定】!」
しかし、俺はまた驚かされた。
「………【鑑定】が、出来ない!?」
『ほう。我が強くなりすぎたのかもな』
ダーフさん、それ冗談になってないよ!
序盤からこんな規格外な仲間手に入れて良いのかよ!
俺は俺で神様に………ん?神様?
確か進化先は個体によって違うと言っていた。
ということはスキルで強制的に進化させることで進化先が変わったりするのか?
もしかしてスキルで進化させ続ければ最強の存在に【ダーフ様は進化の限界に達したのでこれ以上の進化は出来ません。】
……………。
まあ、こんだけ強ければ充分か。
そうだ、俺も神様なんてやめて、テイマーに戻そう。
「………帰るか」
『ああ』
【エリート魔法】、ちょっと先が楽しみだな。
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その頃、俗世間で言われる魔王城では、九人の人物が一つの机を前に座していた。
「おい!魔王さんはまだか!?早く来ないとデコピンの刑だぞコラァ!」
一番に口を開いたのは魔王軍九英傑の一人、ラグル=ハールエルである。
紅い髪は焔が燃えているのかと錯覚するほどに澄んでいて、小さめな身長で腕を組み、足を机に乗せる姿はどこか威張っているイメージを彷彿とさせる。
また、乱暴な口遣いとは裏腹に優しい性格は、意外と異性の心をキャッチしていたりする。
「うざい。暑苦しい。気持ち悪い。喋らないで」
それに対して毒を吐いたのは同じく九英傑の一人、サーナリーク=マンスだ。
実力だけで言えば魔王軍ナンバー2に入るレベルだが、性格もまたトップレベルで悪く、またその青く透き通った髪に、煌のラグルに碧のサーナとはよく言ったものだ。
その二人が凶悪な視線を向けあっていると、突如門が開いた。
そしてそこから出てきたのは、月と劣らずとも勝る金髪に、その光を反射する為に作られたのではと思える程に透き通った銀眼を持った少女だった。
「遅れてすまなかったな。
早速だが、会議を始めて良いか?」
「あ、ああ、すいません…」
「私としたことが、取り乱してしまいましたわ」
「うむ。それではーーー」
少女はニコリと笑うと、その場を仕切りだした。
彼女こそが、現魔王リーナ=バルザック、その人である。
そして今、九英傑全員が揃った魔王城にて、世界の命運すら決めかねない会議が始まろうとしていたーーー